自民党の沖縄県連が夏の参議院選の地域公約に「普天間飛行場の県外移設」を明記する方針だという。これは県内の辺野古移設を進める党本部の意向に反するもので、中央と地方のねじれの最たるものである。しかし自分には「県外」は現実的とはいえず、どうも沖縄県連の決定には首を傾げる。
県連は沖縄の「世論」に神経を使いすぎているように見える。確かに前政権の鳩山元首相が「県外移設」を打ち出して、沖縄県内がそれを受けて沸騰した。しかし、鳩山氏のドタバタの方針転換でその熱風も行き場を失い、複雑な県民感情が交錯している。
ただ、県内の主力メディアの新聞が依然「県外移設」に固執しており、それが沖縄の世論を鬱陶しくさせている。また一部特定の反基地市民団体の声が誇張して伝えられ、まるでこれが沖縄の民意のごとく報道される。
しかし、自分にはとてもそれが「沖縄の声」には思えないのである。彼らが主催するデモや集会が、組合などの既存組織によって意図的に動員されている印象がある。実際は県内移設を支持する集会がそれ以上に集まっている話もよく聞く。
にもかかわらず、自民党の沖縄県連はどうもメディアに気兼ねして「県内」へと転換しようとしない。ただこれは、必ずしも県連全体の意見ではないようだ。「浪魔人日記」というブログ(5月30日)によれば、今回の方針も代表者の裁決では8対6の僅差であったようだ。また沖縄選出の国会議員のうち2名はすでに「県内移設」を明らかにしている。
沖縄県では「県外移設」を公約としなければこの夏の参議院選挙に勝てないと思っているようだが決してそんなことはない。「県外移設」を選挙の最重要課題と考えているガチガチの有権者はほんのわずかだと思う。多くは心情的には県外移設が望ましいが、もっとそれ以上に取り組んでほしい政策があると思っているのではないか。景気回復、雇用の推進、福祉の充実といった身近な政策だ。
昨年の衆議院選挙で福島県では「反原発」の候補者が当選しただろうか。「反原発」を全面に打ち出す候補者、政党は惨敗したではないか。メディアが盛んに原発問題に焦点を当てて福島を報道したにもかかわらず、福島県民は原発政策はともかく、自民党の現実政策を支持した。
沖縄県連は「県外移設を求めて固定化阻止に取り組む」と表明しているが、どうにも県外移設に固執することが基地固定化につながるのが現実といえる。本当に固定化に反対ならば堂々「県内移設」を打ち出すべきだ。それは沖縄県民を裏切ることではならないし、おそらく選挙でも支持されるだろう。