ふくろう日記・別室

日々の備忘録です。

「父と暮せば」&「黒い雨」  

2015-08-07 21:47:58 | Movie
父と暮せば



『黒い雨』 予告編



TとKの会話から。

被爆者の語り部が、ある中学校での講演中
生徒の一人から「死に損ない!」と罵られた、と語っていました。

それについて、Tはこう言った。
「父と暮らせば」は多くの人々を感動させる力を持っていた。
それは脚本家の筆力によるものだ。
しかし語り部は、熱心に事実を語るが、
人々の心に浸透してゆく伝達の言葉を知らない。
その落差への苛立ちが、生徒の心によぎったのではないか。

Kはそれに応じて言う。
たどたどしさはいけないことか。
言葉の稚拙さは罪か。
被爆を知らない者は被爆経験者に謙虚であるべきだろう。

しかし「死に損ない!」と罵られた語り部は
その言葉を謙虚に受け止めた。

しかし、Kは決して生徒の言葉も、Tの言葉も許さない。

ある歌人は言う。
「私」と「公」が一首のなかでせめぎあっていないと
尖った歌にはなりにくい。
そのジレンマを抱きこんでいる歌を。

名作が残り
語り部の言葉は根付かないのか。

その後「黒い雨」を観ることになった。
「父と暮らせば」のファンタジー性は全く排除された映画であって、
目を覆いたくなるようなシーンが続出する映画であった。

Tは「原作と大分違う。」と一言言っただけだった。

原爆によって、いかに人々が深い苦しみと悲しみにのなかに
生きなければならなかったかがわかる。
観る方も痛いのだ。辛いのだ。激しい怒りもあるのだ。

しかし、KはTに対して語ることをやめた。


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