《りゅうりぇんれんの物語》 茨木のり子 朗読 沢 知恵
戦中戦後についてぼんやりと考えている時には、いつでも「鶴見俊輔さんは、○○についてどう考えていらっしゃるのかしら?」と思うのです。たくさん拝読してはいませんが、読むと必ず納得できる答えを出して下さいます。こうして私が実態を知らない戦時期から終戦期を正しく理解するための大切な道案内人となって下さいました。
亡き父母の思い出話だけでは分からなかったことや、その時代を動かしていた様々な逃れ難い力、異なる民族への残忍な行為の数々、原子爆弾の投下はなぜ行われたか?戦時下における思想の弾圧(拷問、留置)などなど、わかりやすく教えて下さる貴重なご本でした。
これによって、石原吉郎の「サンチョ・パンサの帰郷」、茨木のり子の「りゅうりぇんれんの物語」の再読をしました。「りゅうりぇんれんの物語」は、現代詩文庫の17ページ分、2段組に及ぶ長編詩です。
「サンチョ・パンサの帰郷」はシベリア抑留者の深い悲しみと苦しみ、帰国後には、祖国における深い孤独との闘いが書かれています。「りゅうりぇんれんの物語」は、日本人によって拉致された中国人が北海道で重労働に従事させられ、そこを逃走したものの、海に阻まれて国へ帰れない。終戦後村人に見つかるまで、山中で冬眠する獣のような暮らしをしていた。その拉致の方法は、アレックス・ヘイリーの「ルーツ」にそっくりだ。
この本は、1979年9月~80年4月、カナダのケベック州モントリオール市のマッギル大学における13回の講義録であるが、英文で書かれたものですので、鶴見氏が日本語に戻し、テープに吹き込まれたものを、稲垣すみ子さんがおこして下さって本になりました。
講義録の内容は以下の通り。
1 1931年から45年にかけての日本への接近
2 転向について
3 鎖国
4 国体について
5 大アジア
6 非転向の形
7 日本の中の朝鮮
8 非スターリン化をめざして
9 玉砕の思想
10 戦時下の日常生活
11 原爆の犠牲者として
12 戦争の終り
13 ふりかえって
「鎖国」というテーマが何故あるのか?1931年が満州事変ですから、大分以前の日本について書かれることの意味は、読めば理解できました。国境線を持たない島国日本の体質がいつまでも尾を引いている民族なのでしょう。その日本人の戦争の始め方と終り方があまりにも稚拙ではなかったか?
それでも、今日もまた戦争を始めたがる御仁は後を絶たない。70年前に終わったはずの戦争は、実はいつまでも尾を引いています。その尾を絶ち切るためには日本人は永い歳月と人間としての努力が必要ではないでしょうか?
(1982年第一刷 1985年第十一刷 岩波書店刊)
戦中戦後についてぼんやりと考えている時には、いつでも「鶴見俊輔さんは、○○についてどう考えていらっしゃるのかしら?」と思うのです。たくさん拝読してはいませんが、読むと必ず納得できる答えを出して下さいます。こうして私が実態を知らない戦時期から終戦期を正しく理解するための大切な道案内人となって下さいました。
亡き父母の思い出話だけでは分からなかったことや、その時代を動かしていた様々な逃れ難い力、異なる民族への残忍な行為の数々、原子爆弾の投下はなぜ行われたか?戦時下における思想の弾圧(拷問、留置)などなど、わかりやすく教えて下さる貴重なご本でした。
これによって、石原吉郎の「サンチョ・パンサの帰郷」、茨木のり子の「りゅうりぇんれんの物語」の再読をしました。「りゅうりぇんれんの物語」は、現代詩文庫の17ページ分、2段組に及ぶ長編詩です。
「サンチョ・パンサの帰郷」はシベリア抑留者の深い悲しみと苦しみ、帰国後には、祖国における深い孤独との闘いが書かれています。「りゅうりぇんれんの物語」は、日本人によって拉致された中国人が北海道で重労働に従事させられ、そこを逃走したものの、海に阻まれて国へ帰れない。終戦後村人に見つかるまで、山中で冬眠する獣のような暮らしをしていた。その拉致の方法は、アレックス・ヘイリーの「ルーツ」にそっくりだ。
この本は、1979年9月~80年4月、カナダのケベック州モントリオール市のマッギル大学における13回の講義録であるが、英文で書かれたものですので、鶴見氏が日本語に戻し、テープに吹き込まれたものを、稲垣すみ子さんがおこして下さって本になりました。
講義録の内容は以下の通り。
1 1931年から45年にかけての日本への接近
2 転向について
3 鎖国
4 国体について
5 大アジア
6 非転向の形
7 日本の中の朝鮮
8 非スターリン化をめざして
9 玉砕の思想
10 戦時下の日常生活
11 原爆の犠牲者として
12 戦争の終り
13 ふりかえって
「鎖国」というテーマが何故あるのか?1931年が満州事変ですから、大分以前の日本について書かれることの意味は、読めば理解できました。国境線を持たない島国日本の体質がいつまでも尾を引いている民族なのでしょう。その日本人の戦争の始め方と終り方があまりにも稚拙ではなかったか?
それでも、今日もまた戦争を始めたがる御仁は後を絶たない。70年前に終わったはずの戦争は、実はいつまでも尾を引いています。その尾を絶ち切るためには日本人は永い歳月と人間としての努力が必要ではないでしょうか?
(1982年第一刷 1985年第十一刷 岩波書店刊)