黒猫 とのべい の冒険

身近な出来事や感じたことを登載してみました。

退屈なので 龍②

2020年11月04日 20時30分41秒 | ファンタジー
② この辺までなら、漢字は、動物の姿かたちを表した象形文字と言えるのだが、文字の形から実在の動物モデルを推定できないものがある。熊の初出の字である能字は三足の動物とする説があるが、そんな動物を見た者はいない。能字を構成する要素は、横棒のようなものの上に載った「ム」、横棒の下の「肉月」と「ヒ(卜)」である。これを象形だと考えると、「ム」は魂が宿る心臓あるいは頭蓋、「肉月」は文字どおり肉、「ヒ(卜)」の形はまさしく骨だ。熊字はこれに火を加えた字で、基本構造は能と同じ。横棒と言えば、鳥字は横棒の上で羽ばたく鳥を描いたようにも見える。これらをどう解釈するか。動物文字とは、彼らの生き生きと跳ね回る姿を写し取ったのでなく、それぞれの対象物の使用目的に応じた表し方をしたのではないか。
 では、龍(竜)とは何か。殷の時代、すでに丸っこい竜と四角い龍の二文字が存在した。竜字は尻尾のようなものがあって蛇形の動物を表すとされる。ところが角張った龍字は、どんな動物の姿を表したかぜんぜんわからない。不思議なことに、龍字の基本構造は、能(熊)とまったく同じなのだ。能字よりバラエティーに富んでいて、横棒や頭蓋・心臓、肉や骨のほかに、皮のような線を描いたものや、中にはシャーマンらしきシルエット(兄)を描いた字もある。つまり、龍字は構造上、我々のイメージする超自然の動物ではなく、熊(能)や慶字と同様、解体した動物のパーツを並べた文字であることに疑いはない。
 これらのことから、狩猟民によって多くの地域で行われた動物の魂送りが想起される。黄河中流域に居住し始めた殷人たちは、すでに狩猟採集を主な生業にしていなかったはずだが、このような動物文字を作れたのは、狩猟民の動物祭祀の鮮明な記憶を持ち続けていたからではないかと思う。(2020.11.4)


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