黒猫 とのべい の冒険

身近な出来事や感じたことを登載してみました。

氷点下26.6℃

2023年01月30日 22時26分02秒 | ファンタジー
 今日、この町は、観測史上、最も低い気温を記録した。この列島で、最低気温を競っている陸別や朱鞠内には到底及ばないと思っていたが、なかなかどうして、一冬に一度くらい最低を取れるのでは。(2023.1.30)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

はなが写真立ての前に

2023年01月28日 15時03分23秒 | ファンタジー
〈2022.11体調急変直前のはな〉
 はなは、自分の感情を素直に表現できるネコだったと、以前書いたことがある。
 12月、はなは、父さんの介護を受けるようになって、夜中、父さんの枕に頭を載せて寝るようになった。ときには、父さんの頭や顔に、自分の耳や鼻を擦りつけた。認知機能の低下が始まってから半年あまりになるのに、はなは、豊かな感情を失ってはいなかった。
 はなは、この家に来て一度もトイレの粗相なんてなかったが、去年の夏ごろ、トイレのまわりにおしっこをまき散らす事態が起きた。何かの間違いかと思っているうちに、粗相は確実に範囲を拡げ、2階の書庫の暗がりへと拡大していった。
 食べ物を請求する回数が多くなり、食べてすぐ、食器の傍でご飯ちょうだいと大きな声で鳴くことすらあった。鳴きわめきながら、家中をくまなく歩き回るといった意味のわからない徘徊も。
 しかし、日によっては、落ち着いた表情をして甘えたり、膝に上がってのんびりくつろいだり、以前と変わらない日常を送る日もあった。
 急変したのは、やはり12月5日だった。認知機能の低下だけでなく、身体の機能もみるみるうちに衰えた。
 母さんは何かと忙しかったので、介護の8割から9割を父さんが受け持つことになった。おしめを取り替えたあと、はなが目をつぶり、うっとりしていることがあった。父さんは、そんな、はなを見るのはつらかったが、介護している時間が何にも代えがたい大切なものだと感じた。親にも感じなかったこんな経験をするとは思いもしなかった。
 ところで、はなは、あれ以来姿を現さないが、ときどきそこにいるような気配を感じることがある。昨日、外出先から戻ったら、はなの写真立ての前に、はながちょこんと座っているのが見えたような気がした。隠れ損なったのだろう、たぶん。(2023.1.28)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

あなたが噛んだ親指が痛い

2023年01月21日 22時54分44秒 | ファンタジー
 はなが一時的に食欲を回復した12月20日のこと、はなは、食べられなかった分を取り返す勢いで猫缶に襲いかかった。そのとき父さんは、はなが食べやすいように食器を手に持っていたのだが、みごとに右手の親指の先を噛まれた。はなの前歯は年齢の割に丈夫で鋭く、傷は深かった。
 ずっと昔の歌では、あなたが噛んだ小指が痛むのは翌日だったが、父さんの親指は噛まれてから一月にもなるのに、シャツのボタンを掛けそこねたとき、まだ痛む。なので、心の痛みが癒えるのは当分先になるのだろう。
(2023.1.21)


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

昨日も今日も花束が

2023年01月20日 17時14分59秒 | ファンタジー
 思い返せば、はなは、5日に再び食欲をなくし、その翌日6日、左後ろ足の肉球が上を向いて、うまく歩けなくなり、さらに亡くなる2日前の10日ころには両足とも麻痺状態になって立てなくなった。
 次の日には尿が出なくなり、水を飲むのもつらそうだった。そして12日夜、父さんの胸に抱かれて静かに息を引き取った。
 12月初めに食べられなくなってから、持ち前の負けん気を発揮して、何度も復活を遂げながらの40日間の闘病だった。
 15日、火葬場の狭い収骨室で、はなの白い華奢な骨を拾っていると、砕けた背骨の中に黒い筋を見つけた。脊髄なのだろうと思うが、その筋は頭骨の付け根から腰のあたりまで続いていた。両足の麻痺は脊髄の炎症が原因だったのか。しかし、その炎症を事前に発見したとしても、治療できたわけではない。
 はなは、自覚症状があったのだろうか。昨年の半ばころから、たまに右前足を痛そうにすることがあったので痛み止めを飲ませたが、それ以外、痛む素振りを見せなかった。痛みを悟られないようにしていたのかもしれないと思うと心が痛い。
 ドジな父さんは、はなが息を引き取る瞬間を見逃した。はなの突っ張った両手足をさすりながら、ふと見ると、瞳孔はすでに開いていた。はなは、まったく声も出さず、頭を動かすこともなく静かに健気に逝った。(2023.1.20)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

はなのルーティン

2023年01月18日 23時04分20秒 | ファンタジー
 母さんによれば、今朝5時、布団の上でゴロンと横になった物体があった。
 昨日、父さんが外出先から戻り玄関ドアのカギを開けようとしたとき、はなが待っている、という感触が伝わってきた。その直後、洗面台でうがいしていたら、急に、はなのおしっこの臭いがした。はなの姿が消えてからこの数日、こんな思いわずらいを繰り返している。
 仏教では、四十九日が来れば、次の世の行き先へ出立するとされる。それまでの間、七日ごとに裁判官ネコの審判を受け、生前の罪状を白状させられるという。でも、はなは、いったいどんな悪行を働いたのか。せいぜい、美味しい食べ物ちょうだい、抱っこして、とうるさく鳴いたりしたくらいだ。
 四十九日になれば、はなは、晴れて明るい未来に向かって旅立ち、残された年寄りたちも悲しみが薄らぎ、肩の荷を下ろすことになると考えると心が安らぐ。
 確かにそうかもしれないが、はなのいない空虚と苦しみに、果たして耐えられるだろうか、父さんは。いつまでもここにいていいんだよ、はな。(2023.1.18)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

いっぱいのお花

2023年01月18日 16時17分20秒 | ファンタジー
 今日18日は、はなの初七日。午前中、大きなお花がはるばる群馬県から届いた。はなは、5つもお花をいただいた。19年間お世話になった動物病院の先生からも。お花をいただくたびに、はなと父さん母さんは、うれしくて悲しくてウルウルした。(2023.1.18)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

はなは心配性

2023年01月16日 21時32分06秒 | ファンタジー
〈1月10日 はなの写真〉
 父さんが寝るときはいつも、はなといっしょだ。今晩、数千回目の階段登りは、これまでになく足どりが重かった。ようやく寝室にたどり着きベッドに横になろうとして、父さんは思わず叫び声を上げそうになった。サイドテーブルに、はなの顔が浮かんで見えたのだ。
 すると、母さんはこう言った。「父さんがあんまり悲しむから、はなの骨つぼを運んできたよ」
 昨日は椅子に座っていて、右ひじがコツンと硬いものに当たった。ぶつかるようなものは何もなかったのに。
 今朝目覚めたときは、左肩の内側をちょこんと突付かれた。もちろんそこには誰もいなかった。
 はなは、泣きムシ父さんが心配で、おちおち休んでいられない。(2023.1.16)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

掃除機の記憶

2023年01月15日 22時33分00秒 | ファンタジー
 父さんはこの数日、はなの冷たくなった身体を見て落ち込み、はなの思い出を引きずり出しては、悲しみにどっぷり浸っていた。そして今日、はなの身体は物理的に消滅した。
 19年に渡る、はなとの生活の記憶を消し去る方法は恐らくないだろう。なので、深い喪失感や悲しみから逃れようとするのは、永遠に無駄な抵抗のような気がする。年寄りらしくすっかり忘れてしまえば、平穏な生を送ることができるのに。
 起きている間だけでも、感傷的にならないためには、せいぜい忙しく動き回るしかない。父さんは、珍しくも1時間半かけて掃除機を引っ張り、家中掃除して回った。こんなに時間がかかったのはていねいに作業したからではない。父さんは掃除しながら、はなとの記憶に浸っていた。
 実は、はなは、掃除機追っかけ遊びが大好きだった。掃除を終えて、はなの姿を見失った父さんは、掃除前より大きな悲嘆に襲われた。(2023.1.15)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

はなはここだよ

2023年01月13日 22時31分56秒 | ファンタジー
 当家の主ネコ、黒猫とのべいの冒険の語り部ネコそしてユメミテ書房の看板ネコ はなは、12日夜9時過ぎ、両手足をうんと伸ばして、別の世界に遊びに行くことにした。
 19年のネコ生は、はなにとって十分な長さだったけれど、父さん母さんには短かったのかな。
 はなは、ぜんぜん悲しくない。今は若いころの元気を取り戻して、ドローンみたいにビュンビュン飛びまわっている。父さん母さんがいる世界に突入して、びっくりさせることがあるかもね。ほんとうに楽しいネコ生だったよ。(2023.1.13)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

友達がお見舞いに

2023年01月10日 11時35分24秒 | ファンタジー
 一昨日、姪から見舞いの品が届いた。何かとおもったら縫いぐるみ。はなの目に似ているとのこと。若かりしころ、はなは、確かにこんな勝ち気で元気な目をしていた。
 はなは足腰が麻痺したように弱り、昨日から自力で立ち上がれなくなった。先月病院で点滴したとき、1週間で改善しなければ厳しいという診断だったので、これ以上手を尽くしても効果がないのか。
 今日、外せない用件があって大雪警報発令中の札幌へ。ザクザクの雪の歩道を歩いていると、前方から小学校へ上がる前くらいの女の子がしっかりした足どりでやってきた。ふいに、はなが小さかった頃を思い出し、不覚にも涙が。(2023.1.10)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする