帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの枕草子〔九十三〕あさましきもの

2011-06-15 00:14:57 | 古典

 



                      帯とけの枕草子〔九十三〕あさましきもの

 

 言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。



 清少納言 枕草子〔九十三〕あさましきもの

 
あさましきもの(あきれること…なさけないこと)

さしぐしすりてみかく程に、物につきさへておりたる心ち(差し櫛擦り磨く程に、物に突き障りて折れた心地…挿し具肢、擦り、身搔くほどに、ものに尽き、障りて折れ逝く心地)。

くるまのうち返りたる(車がひっくり返っている…ものが色褪せている)。そのような大きな物は、ところ狭しと(堂々としていると)、思っていたのに、ただ、夢のような心地して、あさましうあへなし(あきれるほど頼りない…情けなくあっけない)。

人のためには恥ずかしく悪いことを、包むことなく言っている。

必ず来るだろうと思う男を夜一夜起き明かして待って、明け方にふと忘れて寝入ったところ、からすがたいそう近くで「かゝ(かあかあ…そうかそうかそういうことか)」と鳴くので見上げると、昼になっていたのだった。いみじうあさまし(まったくなさけない)。

見せてはならない人に他へ持って行く文を見せている・(おどろきあきれる)

むやみに、知りもせず見もしない事を、他の人がさし向かいで、あらがはす(反論し合う)こともせず言っている。

食べ物をふとこぼした心地、いとあさまし(ほんとうになさけない)。



 言の戯れを知り、紀貫之のいう「言の心」を心得ましょう

「くし…櫛…具肢…おとこ」「みかく…磨く…身搔く…見かく…覯の途中」「おり…折り…逝き」「車…しゃ…者…もの…おとこ…くる間」「うち返る…ひっくり返る(これは、つわものどもの闘争の跡)…染め色が褪せる…色情が衰える」「ところせしや…堂々としているのでは…窮屈なのでは」「ゆめの…夢のような…実が無いような」「かか…かあかあ…彼か…あれか…まちぼうけのふて寝か」「あらがはす…抗弁しあう…反論しあう」。



 うそぶきである。人の悪しきことを、あらぬ方に向かって言い立てている。それに清げな姿や心におかしきところで包んである。


 伊周、隆家と、叔父の道長との権力闘争のはて、伊周、隆家は、長徳二年四月、左遷の憂き目会った。中宮の受けられた衝撃と心労は如何ばかりであられたか。


 

 伝授 清原のおうな

 聞書 かき人知らず  (2015・9月、改定しました)

 

 原文は「枕草子 新日本古典文学大系 岩波書店」による