個人的に小さな研究を一つ進めています。
「脳科学」に関する学習指導です。
言うまでもなく,人間の命の営みは脳のはたらきに大きく左右されており,学習に関してもその通りです。
子どもが学ぶとき,子どもの脳が学んでいるわけです。
この脳はとても高度な能力をもちながら,複雑にはたらいていて,それ次第で学習はうまく進んだり,進まなかったりします。
誰しも経験があることですが,例えば試験勉強で必死に勉強したのち…
→「よっしゃ!勉強したところバッチリできた!」
→「あれ?あんなにやったはずなのにできない…」
と結果が分かれることがあります。
あれは偶然ではなく,「脳の学習の仕方に違いがあった」という言い方をすることができるでしょう。
これって重要ですね。
しかし,一般の教員で,子どもの脳のはたらきを理解し,それをイメージしながら学習指導を進めているという人は,きっと少ないでしょう。
教員になるまでの過程,もしくはなったあとの研修等で,脳のことを学ぶ機会はほとんどないはずです。
この脳科学に関して,医学や生理学の面では研究が進んでおり,今までは不明であったことが明らかになってきたりもしています。
また,こういった研究を教育に生かそうとする動きも進んでいます。
私は今回,ある本を参考に研究を進めています。
「子どもの脳を育てる教育~家庭と学校の脳科学~」(永江誠司著,河出書房新社)
という本です。
名著です。
全部読んでみて,教育における脳科学の大切さが分かりました。
分かっただけでは物足りず,今回クラスの子たちを使って(というと言い方が悪いですが)実際に脳のはたらきを捉えてみようと思った次第です。
この本では多くの理論が述べられていますが,注目した三つの理論があります。
【理論1】
どのようにしたら,これは重要な情報だと海馬に思わせることができるでしょう。一番よいのは,同じ情報を何度も繰り返し海馬に送る方法です。そうして,これは重要な情報なのだと海馬に思わせるのです。そのために,学習した翌日に1回目,その一週間とに2回目,二週間後に3回目,一ヶ月後に4回目の復習をするのがのぞましいと思われます。
【理論2】
記憶と感情は相互に影響し合う形で働いていると考えられます。感情の働きに関係している組織である扁桃体が刺激されると,記憶に関わる海馬の神経細胞に働き始めるのです。
【理論3】
言語と論理的思考を司る左脳の使用には,本来的に時間をかけることが必要です。紙に文字を手書きする作業では,明らかに左脳が刺激されるのです。文章を考え,それを書くことで,左脳が刺激され,注意力と集中力を強めることができるのです,結果として,記憶をより確かなものにしています。
という3つの理論です。(番号は任意につけさせてもらいました)
これらに基づいて,漢字の指導の仕方を変えてみて,子どもたちが漢字を身につけていくのにどれくらい違いがあるのかを,検証してみることにしました。
具体的には
理論1から,復習するとしないとでは具体的にどれくらい定着に差が出るのか
理論2から,感情にはたらきかける指導でどれくらい定着がよくなるのか
理論3から,漢字を文章で書かせることでどれくらい定着がよくなるのか
これらを具体的なデータで示してみたいと思いました。
受け持つクラスは5年生です。
この子たちに6年生の漢字のいくつかを覚えさせてみます。
そのときの指導の仕方に3通りの違いをつけました。
漢字の勉強,しかも6年生の漢字ということで,子どもたちは少し大変そうにしていましたが,指導の仕方に違いをつけるので,それが興味を引いているようでもありました。
記憶の違いや時間による変容を見ていく検証活動なので,一か月ほどのスパンが必要になります。
そのうち,「指導の翌日」ということで,昨日教えた漢字を,さっそく次の日にテストしてみました。
すると,結果に早くも大きな違いが見られました。
どんな結果だったかというと… それは次回に示すとして,とりあえず
脳科学って,本当に学習では重要!
ということだけうたっておきたいと思います。
リアルに実感できました。