湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

高度経済成長期の逗子葉山が出てくるミステリー

2020-08-20 15:40:15 | 文学
桐野夏生「水の眠り灰の夢」を読んでいたら、次のような昭和38年頃の葉山の描写が。
 潮の匂いがきつくなり、葉山町に入った。村野は道の左側に車を停めて、坂出家の場所を尋ねようとした。しかし、それは尋ねるまでもなくすぐにわかった。海岸通りに、延々とフォードやビュイックなど外車ばかりが駐車している場所があった。その中心が坂出家なのだった。
 御用邸のそばの一等地にあり、高い塀が外界と屋敷とを厳しく分けている。庭はそのまま海岸に達している様子で、たぶん専用の海水浴場のようになっているのだろう。

そして太陽族映画のシーンみたいな展開が続きます。

↑2013年「世界の厳選ビーチ100」に選ばれた一色海岸。通称ロイヤルビーチ。塀の向こうは御用邸。
葉山御用邸に近い大作家の邸宅の隣に高名な日本画家の家があるのは物語上の設定。逗子海岸は死体発見場所になってるけれど、これもフィクション。
主人公の村野が属していたトップ屋集団「遠山軍団」は、後に流行作家になった梶山季之率いる梶山軍団をモデルにしたのが歴然。
ということは、作中の出版社系週刊誌「週刊ダンロン」のモデルは、今も文春砲でかっ飛ばしてる週刊文春。
エピローグに出てくる新雑誌「週刊ヤングメン」は、今はなき平凡パンチですね。今のマガジンハウスの雑誌とは違う感じだけれど、画期的な雑誌という点では通底しています。
先の東京オリンピック前夜の時代に湘南と東京に蠢いていた人々、実際に起こった草加次郎事件と当時のジャーナリズムをからませた虚実綾なすストーリーで、村野ミロはこうして誕生したのかというのも分かる、ミロシリーズファンにとっても興味深いミステリーです。
コメント
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