「Jerry's Mash」のアナログ人で悪いか! ~夕刊 ハード・パンチBLUES~

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「マッシュルームハイ」広報部長「スターマンアルチ」が放つ!「爆音レコード、45回転!」〜今夜この曲をあなたに〜(第六回は「ベンチャーズ」)

2019-06-20 14:54:21 | 編集長「MASH」のレコード&CDラック(音楽紹介)

若者のギター離れが叫ばれて久しい…

そんな今日この頃です。

確かに、ひと昔前には良く見かけた
エレキギターを担いだ「バンド少年」的な
高校生って最近あんまり見かけないなー
 
それが日本だけならまだしも、
本国アメリカでもそう!
だと言うのですから、いよいよ
「ロックミュージックは無くなってしまうのでは?」
と、危機感を感じている僕です。
 
そんな矢先にMASH氏から送られてきた盤が、
こちらのシングルなのです。
 
ベンチャーズ!
1965年のシングル盤です。
A面は、ベンチャーズと言えばこれ!
という程の代表曲「ダイアモンド・ヘッド」
 
B面は、ボブ・ディランやアニマルズを始め、
多くのミュージシャンにカバーされた、
アメリカのトラディショナルソング
「朝日のあたる家」
 
この2曲について、詳しいデータに基づいてレビューを書く、
ということを本来するべきなのかもしれませんが、
その前に、まずはベンチャーズを知らない方々のために、
「彼らがどんなバンドなのか?」
ということを書きたいと思います。
 
ベンチャーズ!
1959年に結成され、
1960年に「Walk don't run」でデビューした
アメリカのロックバンドです。
 
当時の音楽業界の主流は、
一人の歌手+バックバンドという図式で、、
実は純粋な「ロックバンド」はそれ程多くなく
ビーチ・ボーイズのデビューが1961年、
ビートルズのデビューが1962年なので、
ベンチャーズは、所謂
「ロックバンドの先駆け」的な存在なのです。
 
ただ、ビートルズやビーチ・ボーイズと
決定的に違うところ、それは
メンバー全員が歌を歌う彼らとは異なり、
ベンチャーズは全く歌を歌わない!

楽器の演奏だけで勝負する
「インストゥルメンタル・バンド」
なのです。
 
ビートルズによって
ロックの扉が開かれた僕としては、
全く歌を歌わないベンチャーズは、
何となく物足りない感じで、
もちろんベスト盤のLPを持ってはいたものの、
深く聴き込むことはなく、
「まあベンチャーズはね~」と、
何処か冷めたスタンスを取っていたものです。
 
そんな僕がベンチャーズでまず思い浮かべるのが、
「転校生」をはじめとする「広島三部作」
でお馴染み。
広島出身の僕が敬愛する大林亘彦監督の映画、
「青春デンデケデケデケ」なのです。
(観たことの無い人はぜひ観てください!)
 
四国のド田舎の高校生が、
ベンチャーズに憧れ、
ロックバンドを結成するストーリーなのですが、
オープニングから、高校生バンドが、
ベンチャーズを演奏するシーンから始まり、
思春期の少年の恋愛沙汰も絡めながら、
最終的に高校の文化祭で演奏する。

これこそ、
1960年代当時の日本における
ベンチャーズの存在の大きさを
ダイレクトに感じることができるストーリー
と思って間違い無いでしょう。

「エレキギター」
という未知の楽器の音色を最初から最後まで、
たっぷり堪能する最適な存在が、
このベンチャーズだったわけです。
 
特に主人公が、
町唯一の楽器屋のショーウィンドウに飾られたエレキギターに、
主人公がかじりつくように見つめるシーンなんてたまりません!
 
そこに飾られていたのは、
フェンダーでもギブソンでもなく、
「わけわからんブランド」なのです。
分かる人はわかりますよね?

1960年代当時の日本では、
テレキャスターやギブソンなんては
「超」が付くほどの高級品だったのです。

そんな物も情報も無い中、
音の悪いクソギター
にあこがれるシーンなんて、
「くぅ~」
と拳を握りしめてしまいます。
 
今と違い、物も情報も無い時代でしたが、
だからこそ、純粋に、真剣に音楽と向き合う人が
多かったのだと思います。
 
さて、少し話がそれましたが、
本国アメリカ以上に、
日本における「ベンチャーズ人気」は凄まじく、
我が国の音楽の発展にも大いに貢献したことは
間違いありません。
 
来日回数は70回を超えており、
ほぼ毎年夏の時期に来日する彼らの存在は、
町内で開かれる「盆踊り」と並び
夏の風物詩と言っても過言ではないでしょう。
 
「どうせお金儲けでしょ!」
という声も聞こえてきそうですが、
結成当初のオリジナルメンバーは、
皆死去、もしくは引退しており、
現在残ってるメンバーも、
60-70歳前後という状況!
 
多くのロックレジェンド達は年々死んでいき、
ヒットチャートを賑わす新しいロックバンドも
なかなか出てこない昨今…
歌を歌わず演奏だけで勝負する彼らは、
もはや絶滅危惧種のような存在であり、
「ロックミュージック」
を「後世に引き継ぐための団体」
のようにすら思えるのです。
 
さて、
ベンチャーズについて知って頂いたところで、
今回の盤を紹介したいと思います。
 
前回のヒットメイカーズもそうでしたが、
なんともレトロな60年代特有のデザインが
まず良いですね。当時の定価は370円!
ジャケット裏のライナーノーツには、
「人気ギターデュエットコンビ」
と紹介されており、
「しっかりと写真に居る
ドラムとベースはメンバーじゃないのか?」
とツッコミたくもなります。

この辺りも、まだまだ定着していなかった当時の状況が分かって面白い。
 
A面の「ダイアモンド・ヘッド」は、
彼らの象徴とも言うべき
「テケテケ奏法」
(本当は「クロマチックラン」と言うらしいです。)
が取り入れられており、
これぞベンチャーズ!というサウンド。
 
演奏自体はいたってシンプルなのですが、
実際にこれを演奏しようとするととても難しい!
 
音数が少ない分、
少しでもズレてしまうと良い演奏に聴こえないし、
ドラムなんて、派手なドラムソロもないですが、
しっかりと抑えた落ち着いた音を出す。

ドカドカとラウドに叩くよりも
こっちの方が断然難しいんですよ。
 
楽しいイメージのベンチャーズサウンドですが、
今改めて聴くと
「随分と緊張感があるんだなー」
と再認識します。
 
とは言え、僕はどちらかと言うとB面の
「朝日のあたる家」
スポットライトを当てたいのです!
 
アメリカで古くから歌い継がれてきた
トラディショナルフォークソングで、
ボブ・ディランを始め多くのミュージシャンが
こちらを歌っておりますよね?

「誰のバージョンが好き?」
なんて話で盛り上がれるほどです。
そんな話したことないですが・・・・・
 
ちなみに僕が最初に聴いたのは、
ジョーン・バエズのバージョンなのですが、
最初の衝撃と言うのは後々まで残るようで、
今でも「朝日のあたる家」と言えば
彼女の高らかな物寂しい歌声を思い出すのです。
 
一番有名なのは、アニマルズによるカバーで、
「朝日のあたる家」
と言えばアニマルズ!
を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
 
ベンチャーズが参考にしたのも、
明らかにアニマルズの演奏なのですが、
今回、この盤に針を落とすまで、
僕はちゃんと聴いたことがありませんでした。
 
ニューオーリンズの娼婦の人生を歌ったこの曲は、
歌詞があってこそ意味があるのに、
「歌なし、演奏だけってどうなの?」
と聴く前は思っていましたが、
これが中々衝撃的なサウンドだったのです。
 
イントロから、べったり引きずるような…
そんなブルース感満載の雰囲気。

ベンチャーズのギターイメージは、
リバーブがかかっているぐらいの
クリーントーンのイメージが強かったのですが、
この曲における
ノーキーエドワーズのリードギターの音は、
「本当にベンチャーズ?」
と思ってしまう程ひずんでいる。

それにより、
この曲の持つ「重さ」
がしっかりと表現されているのです。
 
今までベンチャーズと言えば、
白人の代表格で、まったく「黒さ」を感じ無い…
そんなグループだったのですが、
この曲における演奏は、
オーティスレディングなどスタックスソウル、
それこそ「ブッカー・T&ザ・MG's」
のような黒さがあり、
ベンチャーズの「演奏力と音楽の土壌の深さ」
を十分に感じるものです。
 
そこにハモンドオルガンが絡む!
このハモンドも、
「ブッカーTジョーンズ」か!
と思うような黒い演奏で、
クレジットも無く、誰が弾いているのか結構調べたのですがわかりませんでしたが、
これが本当にカッコイイ。
 
限られた演奏時間の中で、
少ない音数でブルージーでジャジーで、
「引きずるような重たさ」と「熱さ」
を表現するのが、どれだけ難しいことか!
 
演奏終盤には、
オルガンとリードギターが絡み合うように
豪快にソロを繰り広げる!

ノーキーエドワーズも、
神様「エリッククラプトン」
顔負けのブルージーで激しい演奏を見せ
「ベンチャーズにこんな演奏が出来るのか!」
と、改めて衝撃を受けた僕。

正直、個人的には
「朝日のあたる家」がA面でも良い!
ぐらいの感動です。
今回も45回転のパンチを
真正面から食らってしまいました・・・・・
 
さて、そんなベンチャーズ。
「今でもメンバーを代えながら活動中」
とお話しましたが、
今年も日本にやってきます!

結成60周年記念で、
7月27日~9月11日まで、
一か月以上かけて全国30公演!
を行う壮大ツアー。

公演日は多すぎて、すべてを書ききれませんので、
ぜひ公式ホームページをご覧くださいませ。
 
http://www.mandicompany.co.jp/TheVentures.html
 
大都市だけでなく
栃木、群馬、福井、岡山、和歌山、佐賀、大分
なども回ってくれており、
地方に住んでいる人にはありがたい!
 
そのほか、
現在のメンバーの詳しい解説
なども写真付きで紹介されています!
 
若い子には、
「いきなりライブを観に行く」
と言うのは中々敷居が高いかもしれませんが、
このブログや、映像などで、
まず「ベンチャーズってバンドがいるんだー」
と知ってもらえたら嬉しい。
 
今の時代だからこそ、
若い子達には逆に「新鮮な音」として
聴こえるんじゃないでしょうか?
 
そこから少しでもギターに興味を持って、
「私も始めてみようかなー」
と思ってくれれば、
それこそベンチャーズのメンバーたちも
嬉しいことでしょう!
 
もちろん、いきなり「シングル盤」
そしてご紹介した「夏の日本ツアー」
から始める!
ってのも良いに決まってますよね!
 
さあ、まずは盤に針を落としましょう!
僕はもう一回「朝日」を浴びよう!
っと。
スターマンでした!
 

(企画・編集・校正・加筆リライト「Mash」)
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ゲストライター陣紹介
〈Starman☆アルチ

俺「Mash」のバンド
「マッシュルームハイ」の現メンバー
ドラム、キーボード、広報担当。

ジェリーズ軍団では
「ハウリンメガネ」
「ジョーカーウーマン」
と共に、音楽専門ライター陣
「ロック・マニアックス」
を2019年新規結成