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トランプ政権は「軍拡政権」
トランプ氏は、オバマ大統領と明らかに異なる点がある。それは、国防政策の強化だ。選挙中の主張を紹介すると、
- 約270隻ある主要な戦闘艦艇数を350隻に増強する。
- 49万人の陸軍兵力を54万人に増強する。
- 18万人の海兵隊兵力を20万人に増強する。
などがある。トランプ氏は、オバマ氏が進めた軍縮ではなく、軍拡に政策を転換させていく。これは、冷戦終結以来の政策を根本的に見直すことを意味する。
また、日米同盟に関係する国防長官には、ジェームズ・マティス元中央軍司令官を指名した。
マティス氏はイラク戦争を指揮した人物。いわば「軍人の中の軍人」だ。過去に中国を痛烈に批判し、日本などの同盟国との関係強化を訴えている。
トランプ氏は、こうした人物を政権に据えることで、「強いアメリカの復活」を目指す。
トランプ氏、タブーを犯す
さらにトランプ氏が世界を仰天させたのは、2016年12月に、国交がない台湾の蔡英文総統と電話会談を行ったことだ。
アメリカは1979年に、中国と国交を結ぶ代わりに台湾との国交を断絶。それ以来、台湾との交流を中断してきた。トランプ氏は約40年間守られてきた"禁断の掟"を破ったわけだ。
これには、安倍政権のブレーンとされる日本の専門家でさえ、「思わずテレビの前でのけ反り、思考が数分間停止した。何が起きたのか、にわかには理解できなかった」と述べたほど(注)。
専門家も理解できないトランプ氏の狙いについて、大川隆法・幸福の科学総裁は、16年12月に千葉・幕張メッセで行った講演会「真理への道」でこう述べている。
「『中国の覇権を止める』ということです。これが、『トランプ革命』の本当の意味なのです」
それは、トランプ氏がロシアのプーチン大統領を「強いリーダー」とほめたたえ、国務長官にはロシアとの関係が深いレックス・ティラーソン氏を就任させたことにも表れている。
この狙いは中国の暴走を食い止めること。中国を背後からけん制できるロシアを味方にすれば、中国は尖閣諸島や南シナ海などに戦力を集中させることが難しくなる。
プーチン氏も、「米国の新政権と協力する用意がある。対等な2国間関係づくりを始めるのが重要だ」と述べ、トランプ氏の大統領就任を歓迎している。
冷戦下では考えられなかった米ロの接近という「まさかの大転換」が起きつつある。
(注)2016年12月8日付産経新聞「宮家邦彦のWorld Watch」。
真珠湾の電撃訪問へ
そんな"地殻変動"が起きる中、日本の安倍晋三首相は、16年12月26・27日(現地時間)に米ハワイの真珠湾を訪れ、戦没者の慰霊を行う。
これは、オバマ大統領が5月に広島を訪れたことへの返礼の意味と見られる。これについて、保守もリベラルも、「未来志向の外交」と評価している。
真珠湾訪問に関して、大川総裁は先の講演で、次のように述べている。
「『トランプ革命』が起きたなら、そちらについていかなければなりません。あと一カ月ぐらいで任期を終えるオバマ大統領のご機嫌を取っているような日本の首相は駄目なのです」
世界の新しい流れについていけていないというのだ。
安倍首相の"猿芝居"
真珠湾の訪問には、戦争で戦った両国が歩み寄ることで、歴史問題を終わらせるというメッセージを送る意図もある。
だが少し待ってほしい。
では、アメリカの原爆投下は正しかったのか。日本は本当に侵略戦争をしたのか。
そんな肝心な問いに答えずに、両国の結束をアピールするのは、猿芝居と言えるのではないか。
本来、安倍首相が、戦死者のことを思うのなら、行くべきところは他にある。
首相官邸から約2キロ。英霊250万人が眠る靖国神社である。英霊の慰霊をしないで、真珠湾に行くべきではない。
ロシア外交も戦略性を欠く
さらに安倍首相は、2016年12月にプーチン大統領と会談する。だが、期待されていた北方領土の返還は難しい状況にある(14日時点)。
これについても、大川総裁は「(日本が欧米の)ロシア制裁に参加したために、北方領土問題の解決は遠のいたのです。これは、『政府の外交のミスだ』と判断してよいと思います」「この見通しのなさについては、十分に反省してもらいたいと思います。まさに、行き当たりばったりで、基本的な理念や方針がありません」などと指摘。日本がロシアに味方すれば、領土が返還された可能性があったとした。
哲学なき安倍外交とは裏腹に、トランプ氏は、タブーを恐れずに中国に対峙する哲学を持つ。日本は、トランプ氏が起こす「戦後政治のイノベーション」に対応する必要に迫られている。