永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(425)

2009年06月24日 | Weblog
 09.6/24   425回
 
三十四帖【若菜上(わかな上)の巻】 その(34)

源氏には紫の上のお計らいがうれしく、とにかくこの六条院の女方が穏やかに過ごしてくれればと思っていらっしゃる。紫の上は、女三宮とのご対面のご用意をあれこれなさりながら、お心の内では、

「われより上の人やはあるべき、身の程なるものはかなきさまを、見え置き奉りたるばかりこそあらめ」
――女の中で自分より上の人がいるのだろうか。そんなことがある筈がないと思うのに。自分はしっかりしない仕方で(略奪婚のような形・正式な婚儀も披露もしていない)引き取られたばかりに、このような情けない立場なのであろう――

 などと思い続けられて古歌なども心さびしいものばかり選んで書いていらっしゃる。手習いの歌

「身にちかく秋や来ぬらむ見るままに青葉の山もうつろひにけり」
――見ている内に秋(飽き)が来て、青葉の山も色が変わってきました。私の運命にも飽きられる時が来たのでしょう――

 こんな風にお書きになって耐えていらっしゃる紫の上をご覧になる源氏は、

「ことなく消ち給へるもあり難くあはれに思さる」
――(嫉妬をおもてに出さず)世に稀な殊勝な事とお感じになっていらっしゃる(二人の心の食い違い)――

「東宮の御方は、実の母君よりも、この御方をば睦まじきものに頼み聞こえ給へり。いとうつくしげにおとなびまさり給へるを、思ひ隔てず、かなしと見奉り給ふ。御物語など、いとなつかしく聞こえ交し給ひて、中の戸あけて、宮にも対面し給へり。」
――明石女御は、実の母君(明石の御方)よりも、紫の上を親しく信頼なさっていらっしゃいます。明石女御がたいそう愛らしく成人しておられるのを、紫の上はまことに可愛いとご覧になって、なつかしくお話しなさった後に、中の仕切り戸を開けて、女三宮にご対面になりました――

 女三宮はまだほんの童女のようにお見えになりますので、紫の上も気安くおもわれて、親のようなお気持ちで、昔の御血筋のことなどを辿ってお話になります。姫宮付きの中納言の乳母をお召しになって、

「同じかざしを尋ね聞ゆれば、かたじかなけれど、わかぬさまに聞こえさすれど、ついでなくて侍りつるを、(……)」
――同じ血筋を辿りますと、恐れながらひとつのようでございますが、お近づきの折もなく過しましたのに(今後はお親しく、私の所へもお出でくださいまして、私が御無沙汰しますような時、ご注意などくださいましたら嬉しゅうございます)――

 と、こちらにも、挨拶されます。

◆写真:女三宮と対面する紫の上  風俗博物館

ではまた。