永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(404)

2009年06月01日 | Weblog
09.6/1   404回

三十四帖【若菜上(わかな上)の巻】 その(13)

朱雀院の思いはあれこれと続きます。

「さらではよろしかるべき人、誰ばかりかはあらむ。兵部卿の宮、人柄は目やすしかし。(……)」
――源氏以外で適当な人として、誰がいるだろう。蛍兵部卿の宮(源氏の弟君で、今は独身)の人柄はこれといって難無くみえるが、(同じ桐壷帝の皇子で、源氏と比較して軽蔑すべきではないが、余りにもなよなよと気どり過ぎていて、重々しさに欠けていて、どうも頼りにならない気がする)――

さらに、

「大納言の朝臣の、家司望むなる、(……)さやうにおしなべたる際は、なほめざましくなむあるべき」
――(院の別当の)籐大納言が、女三宮のお世話役を望んでいるようだが、(まあ、実直にお世話しそうではあるが、それだけではどうだろうか)そんな普通の身分の者は、面白くなかろう――

「右衛門の督の下にわぶなるよし、尚侍のものせられし、その人ばかりなむ、位など今少しものめかしき程になりなば、(……)高き志深くて、やもめにて過ぐしつつ、いたくしづまり思ひあがれる気色、人には抜けて(……)なほまたこの為にと思ひはてむには、限りぞあるや」
――右衛門の督(柏木)が内々姫宮に焦がれているとか、尚侍の君(朧月夜)が言われたが、確かにその人が位などもう少し立派になったなら、(婿に悪くはないが、何分歳も若く、身分も軽い)それに、柏木は妻選びに望みが高くて、独身のまま、いかにもゆったりと構えている様子は格別だ。(学才なども欠点がなく、いつかは国家の柱石になるに違いないが、(それでも、まだ女三宮の夫にと定めてしまうには、身分に不足があるな――

 このように、朱雀院はお悩みに限りがありません。他の姫宮にはこれほどのお心づかいはなく、自然に女三宮の将来に思いを焦がす人が多くなるのでした。

 太政大臣も、尚侍の君(朧月夜)へ、その姉君に当たる四の君(太政大臣の正妻)の立場をとおして、お願い申されます。「柏木は、今まで独身でいて、内親王でなければ妻にはしまい、と固く思っています。どうぞお召しいただいたならば、どんなに私の為にも名誉で嬉しいでしょう」

 朧月夜は、甥の柏木の為に、八方言葉をつくして懇願し、朱雀院の御内意を伺われるのでした。

ではまた。