永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(356)

2009年04月14日 | Weblog
09.4/14   356回

三十一帖【真木柱(まきばしら)の巻】 その(27)

 内大臣は、急なことで儀式もなくてはどうかと思われましたが、それくらいの事で大将の気を悪くさせてもと思い、「とにかく始めから、私の自由にならない人だから」とおっしゃったとか。源氏としては、あまりに突然に大将の方に引き取られたことを不満にお思いになりますが、今さらどうしようもないのでした。

 玉鬘は思いがけぬ身の上になったことに、何とも浅ましくお思いになり、髭黒大将だけは、盗み取ってきた女のように思えて、一人嬉しく、やっと心も落ち着くのでした。
玉鬘は、帝が局にお見えになったことを、髭黒大将がひどく恨まれますのも、気に入らず、

「いよいよ気色あし。かの宮にも、さこそ猛う宣ひしか、いみじう思しわぶれど、絶えておとづれず。思ふ事かなひぬる御かしづきに、明け暮れ営みて過ぐし給ふ」
――(髭黒との夫婦仲も)前よりいっそう不機嫌です。かの蛍兵部卿の宮も、あれほど強い気持ちを言われましたが、内心はたいそう悩んでいらっしゃるようで、何とも言って来られません。髭黒大将は、念願が叶って玉鬘を北の方になさって、明けても暮れても大切にかしずいて、かかりっきりになっておられます――

 二月になりました。源氏は髭黒大将に、してやられた口惜しさと、外聞の悪さに、始終玉鬘のことが気にかかって、

「わがあまりなる心にて、かく人やりならぬものは思ふぞかし」
――自分があまり呑気すぎたために、このような自業自得の苦をみることになったのだ――
 
 と、こちらは寝ても覚めても、目の前に玉鬘がちらつくのでした。とても我慢のできそうもなく、玉鬘の侍女の右近に御文を御つかわしになります。源氏の歌、

「『かきたれてのどけきころの春雨にふるさと人をいかにしのぶや』つれづれに添へても、うらめしう思ひ出でらるること多う侍るを、いかでかは聞こゆべからむ」
――「春雨が降り続いてのどかなこの頃、あなたは昔の人をどうお思いですか」つれづれに恨めしく思いだすことばかり多いのを、どうお伝えしたらよいでしょう――

ではまた。