永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(353)

2009年04月11日 | Weblog
09.4/11   353回

三十一帖【真木柱(まきばしら)の巻】 その(24)

 冷泉帝のご容貌は、この上なくご立派で、まったく源氏とそっくりでいらっしゃる。こんなご立派な方が他にもいらっしゃったのかと、玉鬘は拝されます。

 帝は、ごく親しげに、玉鬘の宮仕えが予期に反したご不満をおっしゃいますので、玉鬘はお顔向けもお出来になれず扇で隠してお返事も申し上げられません。帝は、

「あやしうおぼつかなきわざかな。よろこびなども、思ひ知り給はんと思ふことあるを、聞きいれ給はぬさまにのみあるは、かかる御癖なりけり」
――どうしてそう黙ってばかりいらっしゃるのですか。叙位の慶びなどでも、わたしの心持は分かっておいでと思っていましたが、素知らぬ振りをなさるのは、そのような癖の方なのですね――

 と言われて、お歌、
「『などてかくはひあひがたき紫をこころにふかく思ひそめけむ』濃くなりはつまじきにや」
――「こうもなかなか逢い難いあなたを、なぜ深く愛しはじめたのでしょう」二人はこれ以上深くはならずに終わるのでしょうか――
(紫は、三位の服色で、これを染めるには灰を合わせるので、「這い合い」に「灰合い」をかけている)

 こう、おっしゃる帝は、初々しくご立派で、源氏と異なるとことのないと心を安めて、玉鬘はお返事をなさいます。宮仕えの功労もありませんのに、今年位階をつけられた感謝のきもちでしょう。

「『いかならむ色とも知らぬむらさきを心してこそ人はそめけれ』今よりはなむ思う給へ知るべき」
――「何ゆえの加階とも知らずにおりましたが、さては帝の思し召しに寄ることでございましたか」今後はそのつもりでお仕え申しましょう――

ではまた。