ふろむ播州山麓

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検証北朝鮮・延坪島ヨンピョンド事件 №8 <11月27日~29日>

2011-01-03 | Weblog
11月27日
<韓国>朝。砲撃で犠牲になった韓国軍兵士、ソジョンウ兵長22歳と文光旭2等兵20歳の葬儀がソウル近郊、京畿道城南市の国軍首都病院で行われた金滉植首相ら500人が参列。ユナクチュン海兵隊司令官は弔辞で「奇襲攻撃の対価がどれほど恐ろしいものかを思い知らせ、後悔させるため、100倍、1000倍で復讐をする」と語った。日本の武藤正敏駐韓大使らも参席した。
 韓国の聯合ニュースによると、韓国政府は北朝鮮を「主敵」とする概念を復活させることの検討をはじめた。しかしその後、「敵」との記載に落ち着く。
 李大統領は緊急安保点検会議を招集し、米韓「合同演習の期間に北朝鮮が突発行動を起こす可能性がある。連合戦力の協力を通じ、完璧に備えよ」と指示した。
 米韓合同参謀本部は軍事演習の緊張をあおるのを避けるため「防御的性格の演習であり、延坪島砲撃事件の発生以前から計画されていた」と強調した。
 韓国軍合同参謀本部は翌28日開始の米韓合同軍事演習について「北に対する抑止力強化などが目的だ」。演習中に北から攻撃を受けた場合の態勢についても「すべての可能性に備えて訓練する」と語った。
韓国国立海洋調査院は、韓国海軍からの演習通知を受け、付近の民間船舶に対し「航行警報」を出した。演習予定水域は、北緯34度30分~36度。東経124度~125度42分。韓国の北方限界線NLLから160~200キロ南方で、西は中国・山東半島から約170キロ付近まで。
 韓国外交通商省は27日の朝、本日午後に載秉国国務委員がソウルを訪れると中国側から知らされた。外交通商省幹部は「米韓軍事演習は戴氏の訪韓に、一切影響されない」と語った。
 中国の載秉国国務委員(副首相級)が午後、ソウルを訪れ、金星煥外交通商相と会談した。武大偉・朝鮮半島問題特別代表(6カ国協議議長役)も同行。当初は26日27日に楊潔箎外相が訪韓する予定だったが、砲撃戦後に中国側が突然に延期した。韓国では中国の対応に批判が出ていた。戴は、半島情勢についての意見を交換し、軍事演習などを巡り、抑制的な対応を強く求めた。

<北朝鮮>国営朝鮮中央通信は「敵の砲弾はわれわれの砲陣地から遠く離れた民家周辺にまで無差別に落ちた」。また遺憾の意をはじめて表明。「民間人死傷者が発生したのが事実なら、極めて遺憾だと言わざるを得ない」と、北朝鮮メディアとしてはじめて民間人の被害について触れた。しかしその責任は「軍事施設内に民間人を配置して『人間の盾』を作った敵の非人間的行為にある」と韓国側を非難した。砲撃で死亡した民間人2名は、確かに軍施設内で官舎の新築工事に当たっていた。
 米韓合同軍事演習が明日11月28日から12月1日まで黄海で実施されるが、北朝鮮の朝鮮中央通信は「米国が空母を黄海に進入させる場合、その後の悪い結末は誰も予測することができない」と警告した。

<日本>午後。前原外相は中国の楊外相と、砲撃事件をめぐり電話で協議した。楊は明日から実施の合同軍事演習について「中国のEEZ内での演習に反対する」。前原は、事態の拡大防止に向け、北朝鮮への中国の影響力行使を要請。砲撃事件後、日中外相の協議ははじめて。
 菅内閣は米韓合同軍事演習開始を明日に控え、全閣僚に対し都内での待機態勢を指示した。閣僚らは緊急事態が発生した場合、仙谷官房長官の指示から、1時間以内に担当省庁に駆けつける態勢を取る。やむを得ず都内から離れる場合は、代理の副大臣か政務官が都内に残ることとした。

<米国>ニューヨークタイムズは、中国に期待した北朝鮮への圧力が裏切られたと指摘。そのうえで、米韓の演習は北朝鮮の新たな攻撃を阻止する目的だけでなく、「北朝鮮を牽制しなければ周辺海域で米軍の存在感が増すことになるという中国に対する警告」との見方を示した。


11月28日
<韓国>朝6時過ぎ。米韓合同軍事演習はじまる。参加人員は米軍6400人、韓国軍900人、合計7300人。
米海軍横須賀基地配備の原子力空母ジョージ・ワシントンは、全長約333メートル、幅約77メートル、約9万7千トン。航空機70機余を通常は搭載し、乗員は航空要員を含め約5800人。
 米空軍からはFA18戦闘攻撃機など。米イージス艦カウペンス、イージス駆逐艦フィッツジェラルドなど5隻。
 韓国軍はF16、F15K戦闘機、対潜哨戒機P3C。イージス艦の世宗大王、駆逐艦KDX-Ⅱなど計6隻。
 韓国のテレビ局は北朝鮮の攻撃があった場合に備え、ソウル市内には緊急避難設備が約3900カ所あると紹介した。
 韓国メディアは一斉に「全軍が準戦時体制だ」と報じた。FA18が出撃すれば、演習海上から10分以内に平壌に到着する。

 10時ころ。中国の安保外交戦略を事実上動かすといわれている戴秉国・国務委員(副首相級)が、ソウルで李大統領と2時間会合。李大統領は6カ国協議再開について「論議する時期ではない」。また「中国は国際的地位にふさわしい役割を果たし、公正な責任ある姿勢で寄与してほしい」と述べた。会談は12時15分に終了。載は胡国家主席の事実上の特使として訪韓したが、「朝鮮半島の平和と安定を損なういかなる行為にも反対する」「状況が悪化しないよう韓国と一緒に努力する」。「6カ国協議首席代表による砲撃問題の討議」提案を発表するにとどまった。
 13時32分。韓国青瓦台・大統領府報道官が、中韓会談に関しての記者会見。6カ国協議再開について「非常に慎重に検討しなければならない」「南北対話をはじめ6カ国協議の枠内の2国間、多国間で話しあうべきだ」などと否定的な見解を示した。
 15時5分。韓国軍が南北軍事境界線付近の非武装地帯DMZの韓国側に野砲一発を誤って発射。
 16時40分。韓国軍が野砲の誤発射を北朝鮮に通報。
○ソウル滞在中の川瀬俊治(ジャーナリストネット)はわたし片瀬あてのメールで「日本では騒いでいるかもしれませんが、韓国民はいたって冷静です。戦争を北が起こせば、北はもう滅びるしかないからです。金正日から正恩への代替わりにあたって、金日成以来の『恒例の爆弾』だそうです。しかし困った政権ですね」

<北朝鮮>15時40分。北朝鮮中央通信が、合同演習を非難する朝鮮平和擁護全国民族委員会の声明を報道。「無謀な戦争演習だ」と非難した。

<中国>現地13時(日本14時)、中国外務省は重要情報を発表する記者会見を、16時30分から開くと急きょ通知した。同省が緊急記者会見を開くのは極めて異例である。
 記者会見直前の16時15分。武大偉・朝鮮半島問題特別代表は、中国外務省に丹羽宇一郎・駐中国大使を呼んだ。発表前に、日本に内容を説明するためである。武は韓国での李大統領と戴国務委員との会談を終えて、韓国から北京に戻ったばかりだった。丹羽は武に「何を話したのですか」と質問したが、武は「いずれきちんと発表すると思います」と、そっけなかった。
 16時40分(日本17時40分)。武大偉は外務省記者会見場で、北朝鮮問題をめぐる6カ国協議の首席代表による緊急会合の12月上旬に北京での開催を呼びかけた。韓国人記者は、今年3月の「韓国哨戒艦沈没に続く、延坪島への砲撃。韓国国民が提案を受け入れられるわけがない」。日本の外交筋は、中国が「何かしないといけないという苦境に追い込まれる中で、苦しまぎれの切り札では。突然6カ国の会合といわれても何を話すのか」。中国外交官は「大きな期待はしていないが、取りあえず6カ国が集まり、事態のエスカレートという最悪の事態を回避することに意味がある」。ロシアは中国の取り組みに、基本的に賛成している。なお首席代表会合は、2008年12月以降、開かれていない。
 中国は王家瑞・共産党対外連絡部長を近く北朝鮮に派遣する。ウラン濃縮施設の表面化や、韓国延坪島砲撃に関する中国政府の立場を伝え、6カ国会合参加を説得する役回りといわれている。
 夜。外交政策を統括する戴秉国国務委員は、米クリントン国務長官と電話で協議。戴は「6カ国協議を通じて問題解決すべきだ」「中米が建設的な役割を積極的に発揮していくべきだ」とも提唱。クリントンは、米中は共通利益を有しており、相互協力は極めて重要としたうえで、密接な話し合いを続けることも互いに確認した。
<香港>英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」電子版は、「合同軍事演習は、北京に対する明確なメッセージ」と報じた。中国が「排他的経済水域EEZ内の軍事行動に反対する」としたことを挙げ、米韓が「今後も黄海への海軍のアクセスを確保する決意」の表れなどと指摘した。

<日本>韓国在住の日本人は約3万人。政府筋は、数万人の旅行者と合わせ、邦人退避の場合、基本的に民間航空機や船舶を利用するが、状況次第で自衛隊の活用も検討するとする。朝鮮半島危機が拡大すれば「過去最大の邦人救出劇」になると言っている。

<ウィキリークス>ウィキリークスによる米外交公電の流出がはじまる。


11月29日
<ウィキリークス>NYタイムズ紙に公開されたウィキリークスの文書・公電によると、ソウル駐在のアメリカ大使が今年2月、北朝鮮が内部崩壊し、南北が統一した際の対応について韓国と協議した。統一後の朝鮮半島がアメリカと同盟関係になった場合、中国が持つ懸念に対しては、経済的な側面で対応すればよいと韓国政府高官は考えている。ホワイトハウスは、外交政策に甚大な影響を及ぼす可能性があるなどと、警戒している。
 この情報と関連して。韓国の李大統領は北朝鮮が崩壊した際の有事計画を、中国の胡国家主席に尋ねた。李の質問に対して、胡は「聞こえないふりをしていた」
 ウィキリークス情報によると、数年前のことだが、アメリカの外交官が中国側に「北朝鮮は弾道ミサイルの部品を民間航空機に積み、中国経由でイランに輸出している」と通報していた。それでも中国側は「何も対応しなかった」
 別のウィキリークス情報。ロシアの安全保障会議のメンバーは、ワシントンで米国務省高官に、イランの中距離弾道ミサイル「シャハブ3」について、最新の分析を伝えている。ロシア連邦保安局FSBの高官は、イランと北朝鮮が軍事用の「計測装置、高精度増幅器、圧力計、複合材料、新しいミサイルのエンジンを作る技術」などを購入する隠れ蓑のしている企業を突き止めたと報告した。米ロ関係は、一般に思われている以上に、はるかにリセットしている。
 ウィキリークス情報。中国の何亜非外務次官(当時)は、北朝鮮は米政府の関心を引きたがる「駄々っ子」のようなもので、「好きとは言えないかもしれないが…隣人だ」と述べた。韓国哨戒艦沈没事件以前、2009年の発言か。
 シンガポールのリー・クワンユー顧問相は2009年5月、スタインバーグ米国務副長官との会談で、「中国は北朝鮮が崩壊するより、核兵器を保有したまま、存続している方がましと考えている」と述べた。緩衝国として北が存続することを中国は望んでいるとした。
 韓国の玄仁沢統一相は2009年7月、キャンベル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)との会談で、金総書記が2015年を超えて生存できないとの見方を示した。
○「中国は長年にわたり、北朝鮮を強力に支援してきたが、その絶大な影響力を行使することには慎重な姿勢を見せてきた。しかし中国側にも北朝鮮を『駄々っ子』と呼ぶ人がいて、北朝鮮を世界平和への脅威と感じている人もいるらしい」リチャード・ハース米外交評議会会長<ニューズウィーク2010年12月15日付>

<北朝鮮>労働党機関紙「労働新聞」は米韓合同軍事演習について、「全面戦争勃発へと導くための意図的で計画的な策動だ」と警告。「わが方は戦争を望みはしないが、決して恐れない」と警告。「挑発を仕掛けてくるなら躊躇なく迎え撃つ」。中国が提案した6カ国の緊急会合の開催について、北朝鮮メディアはこれまで一切、報じていない。

<中国>米ボズワース北朝鮮政策特別代表が北京に到着。

<国連>国連安全保障理事会が、北朝鮮による韓国・延坪島砲撃に絡んで、初の非公式会合を開催。米英などが北朝鮮を非難。米韓は砲撃を非難する議長声明の採択などを探るが、拒否権を持つ中国は依然、北朝鮮への強い措置には慎重である。中国は6カ国の対話を盾に、安保理で強硬論が広がることに歯止めをかける戦術も視野に入れている。
 韓国は哨戒艦沈没事件で、中国の慎重姿勢から北朝鮮への非難を打ち出せなかった安保理協議への反省から、韓国は安保理への問題提起に慎重である。

<韓国>午前10時。李大統領は砲撃に関する国民向け特別談話を発表。「武力挑発には応分の対価を支払わせる。北朝鮮が軍事的な冒険主義や核の放棄を行うことに期待するのは難しい」。大統領の演説要旨は以下の通り。
 ①国民の生命と財産を守れなかった責任を痛感し、国民の失望の大きさを理解する。
 ②北朝鮮の今回の武力挑発は今までと次元が違う。
 ③北朝鮮が軍事的冒険主義と核を放棄することは期待できない。
 ④北朝鮮の挑発には必ず応分の代価を払ってもらう。
 ⑤国際社会は韓国を支持している。
 ⑥軍強化の国防改革を強力に推進する。
 ⑦(南北境界水域の)西島五島はいかなる挑発からも堅持する。

 韓国外交通商省の閔東石第2次官は国会答弁で、6カ国高官会合について「いま開く条件は全くない」。対話の前提条件について、北朝鮮の「明確な謝罪と再発防止の約束が先で、非核化の真実味を見せなければならない」

 済州島南方沖で中国漁船が棒で殴るなどの暴力をふるい、韓国海洋警察官6人が負傷した。漁船は逃走。同様の事件が発生するたびに、韓国側は中国政府に漁船の取り締まり対策を要請している。

 韓国中東部の慶尚北道・安東アンドンで今秋はじめて口蹄疫の豚が確認された。その後、12月15日には200キロほども離れたソウルの北、京畿道楊州で。22日には韓国北東部の江原道平昌。28日には同国中央部の忠清北道忠州などに拡散。徹底した防疫対策のなか、このように広範囲に広がるのは異常である。12月28日現在、発生場所は計60カ所、殺処分された牛豚は計47万頭以上に上る。私見だが、この伝染拡大には、人為的な原因を感じる。

<米国>ライス国連大使は記者団に「米国は北朝鮮による非道な行為を強く非難する」。国連での会合は、北朝鮮に核・弾道ミサイル開発を禁じた制裁決議の履行状況を討議するのが主目的であったが、ライスは安保理メンバー国と調整を続ける構えをみせた。
 ギブス米大統領報道官は記者会見で、中国が提案した6カ国協議首席代表による緊急会合について、北朝鮮が挑発的行動をやめ、非核化に真剣な態度を示すことが先決だと強調。現時点での開催は、北朝鮮による「PR活動」に過ぎず、「米国も他国も関心がない」。別の米政府高官は、北朝鮮が外交力を利用しようとしているとの認識を示した。

<日米韓>日米韓3カ国外相会談をワシントンで12月7日に開く方向で、最終調整に入った。

<日韓>12月中旬の李明博大統領来日を調整中と、菅首相はいう。私見だが、この非常事態に隣国の大統領を文化的目的で招くことは、当然困難であり非常識であろう。その後に、大統領の訪日が無期延期になったのは当たり前のこと。

<ロシア>外務省のボロダフキン外務次官は、駐ロ韓国大使と会談し「韓国に対する砲撃は非難される」と、初めて北朝鮮を名指しで批判した。ロシア外務省が声明で発表。

<2011年1月3日 まだ続けますが、少しバテ気味です>
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