ふろむ播州山麓

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検証北朝鮮・延坪島ヨンピョンド事件 №10 <2010年12月2日~12月3日>

2011-01-06 | Weblog
12月2日
<中国>中国を訪問中の北朝鮮・崔泰福労働党書記・最高人民会議議長は、中国東北部の吉林省長春市を訪問し、同省トップの孫政才・共産党委員会書記と会談。経済協力の強化方針を確認。
 姜瑜中国外務省副報道局長は、6カ国協議の首席代表による緊急会合について「協議し始めてこそ、問題解決が可能になる」。また翌日から開始される日米共同統合演習(実働演習)と、米韓が検討している追加の合同軍事演習について、「国際社会は情勢をエスカレートさせるいかなる行為も支持しない」と述べた。

<日本>朝。日米韓外相会談を7日(現地6日)にワシントンで開くと、外務省が発表。前原外相は12月6日~8日の日程で、訪米する。
 日本経済新聞朝刊2日付「私の履歴書」で、元米国防長官のウィリアムJペリーは、第2次朝鮮戦争が勃発した場合、最大で40万人の米軍が必要になる。総理大臣が内定していた羽田孜にペリーは「日本全国すべての米軍基地をフルに活用しなければならない。大量の航空機、軍事物質、そして新たな追加兵力。それらを順次、日本を経由して戦地である朝鮮半島に送り込む」。半島で有事が起きた場合、米軍が自由に在日の基地を使用する必要がある。94年4月、ペリー国防長官「私が来日した目的はその確証を得ることだった」

<米国>国連安保理事会の12月の議長国をつとめる米国のライス国連大使は、北朝鮮の新たなウラン濃縮施設を批難する報道向け声明を、安保理で合意できなかったことを明らかにした。「安保理は声明について議論し、大多数の賛成はあったものの、全会一致による合意ができなかった」。北朝鮮に対する「決議違反」や「非難」といった文言を入れることに、中国が反対したため。
 ライス国連大使は、2006年と2009年に安保理が採択した対北朝鮮制裁決議に基づき、国際社会からの制裁の徹底や強化に軸足を移す考えを示した。

<韓国>東亜日報2日付が発表した世論調査では、過半数の国民が、李大統領の対応に、厳しい評価を下した。
 ①国民の57%が、「制裁・圧迫」を通じて北朝鮮の根本的な変化を促すように求めた。
 ②南北首脳会談や特使派遣を通じて、関係改善の突破口を探るべきだとの回答は38.7%にとどまった。

<ウィキリ-クス>在モンゴル米国大使館の機密公電。2009年8月にモンゴルを訪れた北朝鮮外務次官(当時)の金永日は、2回目の核実験を受けた国連安全保障理事会の制裁決議に、中国とロシアも同調したと繰り返し非難した。中ロが日米韓に歩調を合わせているため、6カ国は「5対1」の構図になったと指摘。「協議はわれわれ(北朝鮮)の体制を崩壊させることに真の目的があるので、米国との対話だけを望んでいる」と述べた。

<ロシア>外務省は中国が提案した6カ国協議の首席代表会議について、「ロシアは参加の用意がある」と述べた。


12月3日
<北朝鮮>11月22日から26日まで、定期対話のために平壌を訪れていた欧州連合EUの実務代表団(局長級)が、現地で砲撃事件について北朝鮮側に24日、砲撃の翌日、北朝鮮外務省などに直接抗議文書を提出。公式行事への参加や市内見学などを取りやめていた。3日になってはじめて、この事実が発表された。北朝鮮側の24日の反応について代表団の一員は、「はっきりとした説明はなく、全体状況をまだ把握しきれていない印象だった」。ウラン濃縮についての北朝鮮側は「わが国はエネルギーが不足しており、ウラン濃縮は平和利用が目的だ」
 米国の自由アジア放送は、砲撃事件などで北朝鮮の情勢が不安定化している。米などの物価が高騰しており、後継者の金正恩に対する不満が庶民(両江道の消息筋情報)の間で高まっていると報じた。住民は金正恩の責任だとして、露骨に不満を漏らしているという。

<韓国>新国防相に内定の金寛鎮は、「交戦規則」の見直しに着手。敵の攻撃に「同種同量」の兵器で反撃する従来の考えから、「民間被害が出た場合は、相応以上の反撃に出る」とする方向で調整中。「敵の挑発への対応は自衛権レベルで、国連軍司令官の同意なく、韓国の独断で十分に戦闘機を動かすことができる。また可能なすべての戦闘力を投入し、足りない場合は合同支援戦力まで投じて、追加で打撃できる」と述べた。23日に韓国空軍戦闘機F-15Kが出撃しながら攻撃しなかったことについて「合同参謀議長が攻撃命令を出すべきだった」と批判。金は、明日4日に新国防相に就任。
 米韓両国が、自由貿易協定FTA交渉で合意。米通商代表部USTRのカーク代表は「大きな進展があった。両国の大統領が進展を検証する時だ」。韓国外務省の金宗壎・通商交渉本部長は「実質的に事実上妥結」。両者は11月30日から、閣僚級の交渉を行っていた。
 サムスン電子は、李健煕会長の長男・李在鎔を社長に昇格する人事を発表。大企業グループでは異例の3代世襲。

<中国>中国共産党は金融緩和路線を転換し、引き締めに軸足を置くことを決定。10月の消費者物価指数は前年同月比 4.4%の上昇。

<日本>午前。日米共同統合演習(実働演習)が、日本周辺の海空域や自衛隊基地などではじまった。10日までの8日間の日程。日米あわせて4万4500人。前回の3万1000人を大きく上回った。
 自衛隊3万4100人、艦艇約40隻、航空機約250機。米陸海空軍と海兵隊から1万400人、艦艇約20隻、航空機約150機。60隻の艦艇の参加は過去最大の規模。空母ジョージ・ワシントンも参加。航空機400機は過去2番目の規模に達する。先日の米韓合同軍事演習の6倍の規模である。
「日米の安全保障で今後、強化が必要なのは弾道ミサイルと島嶼防衛」と自衛隊幹部。北沢俊美防衛相は「日米間の共同統合運用の能力維持や向上のためにやるという基本的な考え方で実施している」と、通常訓練であることを強調した。
 韓国軍幹部もオブザーバーとして初参加したが、米側からの働きかけがあったため。数人程度が米艦艇に乗船し、東シナ海は避け、日本海洋上から視察する。
 第176臨時国会は衆参とも閉幕した。

<世界>ウィキリークスがサイバー攻撃を受け、一時閲覧不能になった。日本時間12時~19時ころ。

<FTA>「世界最多の45カ国と 自由貿易協定 FTAを締結しているのはわが国だけだ」。12月3日に最終合意した米国とのFTAを受けて、李明博大統領は胸を張った。韓国は、東南アジア諸国連合ASEAN、インド、欧州連合EU、米国のすべてとFTAを締結した最初の国となる。世界貿易機関WTOの多国間貿易自由化交渉が行き詰まるなかで、2003年にFTAを通商政策の柱に据えた。既にASEANやインドなどとはFTAを発効させている。EUとのFTAは2011年7月に発効する予定だ。米国とのFTAも、批准は難航が予想されるものの、早ければ2011年半ばごろに発効する見込みである。
向こう5年内に米韓は、自動車など95%の工業製品と消費財の関税を引き下げることになる。超大国、米国とのFTA締結は、韓国に輸出の大幅な拡大と、再度の飛躍的成長をもたらすと期待されている。対して日本企業には大きな打撃となる。経済産業省の試算では、韓国製品の対米輸出の増加により、2020年までに日本企業の自動車、エレクトロニクス製品、機械の対米輸出は1兆5000億円、GDPは3兆7000億円減少する見込みとする。
 また米韓のFTAが発効すれば、韓国の「環太平洋戦略的経済連携協定」TPP参加への可能性も出てくる。現在はTPPに消極的な韓国も、多くの国と個別協定を結んでいる実態から障壁は少ない。加えてカナダ、メキシコ、タイなどもTPPへ関心を示している。そうなると、APEC加盟国の中でTPPに参加しないのは日本と中国だけという可能性もある。
 韓国が自由貿易の先頭に立ち、グローバル市場へ邁進するのは、輸出が成長のいちばんのエンジンであると政府はもちろん、国民も認識しているからだ。09年のGDPに占める輸出比率は43.4%とG20加盟国のなかで最も高い(2位はドイツの33.6%、日本は11.4%)。10年上半期には史上初めて「輸出7強国」に入った。2010年1月~6月の韓国の輸出額は2215億ドルとなり、輸出順位は世界7位で前年の9位から2つ順位を上げた。また2010年7月末の外貨準備高は2860億ドルとなり、過去最高を更新した。これは中国、日本、ロシア、台湾、インドに続く世界6位の水準である。
 また中国との貿易が輸出入の26%を占める韓国経済の現状がある。朝鮮半島で有事が起きれば中国依存はリスクになりかねない。韓国メディアには、FTAは経済面だけではなく、アメリカとの安全保障上の関係強化になると歓迎する論調もある。

<2011年1月6日>

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