ふろむ播州山麓

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検証北朝鮮・延坪島ヨンピョンド事件 №7 <2010年11月25日~26日>

2011-01-01 | Weblog
 元旦通信です。本年がすばらしい、平和な年になりますよう、祈念しつつの続編です。11月25日と26日の記録を綴ります。

11月25日
<北朝鮮>韓国聯合ニュースによると、北朝鮮の砲撃について「朝鮮西海が紛争水域となったのは、米国がわが領海に勝手に設けた北方限界線NLLのせいだ」。軍事的挑発をすれば、ためらわず2次3次の物理的報復打撃を加えると警告。
 朝鮮中央通信によると、朝鮮人民軍板門店代表部は、国連軍司令部の将官級会談開催の提案(24日に国連軍司令部が提案)を拒否する通知文で、延坪島砲撃の「事態は休戦協定の違反者が韓国であり、黄海紛争の火種をつけたのは米国だという事実を示している」。米軍が朝鮮半島の緊張緩和を望むならば、韓国がNLL固守のため海上侵犯や砲撃など、軍事的挑発を行えないようにしなければならないと強調した。また延坪島砲撃の当日、韓国軍が黄海で実施した射撃訓練は「事前に計画された軍事的挑発で、事実上の戦争行為だ。わが軍隊の自衛的措置に従い、懲罰を受けることになったものだ」と主張した。
 平壌放送は米韓合同軍事演習について「交戦狂の無謀な行為によって朝鮮半島情勢は戦争の瀬戸際へと突き進んでいる」と非難した。
 韓国のラジオ自由アジアは「北朝鮮は23日、全軍に非常警戒態勢2号を発令していた」と報じた。別の情報でも北朝鮮は23日に、非常警戒態勢をとるよう命じる「総参謀部電信指示文」を全軍に下達し、全部隊に陣地の死守と全軍人の帰隊を指示していた。
 「労働新聞」によると、金総書記が中国の無償援助で建設された平安南道のガラス工場を25日に視察し、中朝の友好を力説した。三男の金正恩も同行。

<韓国>李明博大統領は、今年3月の哨戒艦沈没事件の責任を取って提出されていた金泰栄国防相の辞表を受理した。哨戒艇沈没、そして今回の砲撃事件。一連の事態の責任を取った形だが、砲撃事件に対する対応のあまさを批判されての、実質的更迭である。
 韓国軍の軍装備が貧弱であると報道されたが、黄海沿岸で北朝鮮を直接攻撃できるのは、K9自走砲(射程40キロ)と155ミリ牽引砲(同30キロ)ぐらいで、延坪島と白翎島に計20門ほどが配備されている。
 一方、北朝鮮は130ミリ野砲(射程27キロ)や152ミリ多連装砲(同27キロ)、170ミリ曲射砲(同27キロ)、170キロ曲射砲(同54キロ)など千門余を黄海沿岸に配備している。その差はあまりにも大きい。
 李大統領は、最前線への兵力増強を指示。北の武力挑発への抑止力を強める方向での「交戦規則」(戦況ごとに軍事力使用の具体的な制約を定めている規則)の変更などを決定した。緊急関係閣僚会議では「再度の挑発に備え、緊張を緩めるな」と指示した。
 李大統領は関係閣僚を集めた緊急の「安保・経済点検会議」を開き、延坪島周辺の島嶼の兵器配備や再攻撃対策の強化を決めた。
 韓国軍合同参謀本部は、黄海基地に精密誘導武器などを導入するために560億ウォン(約41億円)の予算が必要だとした。2006年に決まった同島などを含む周辺地域の兵力縮小計画を撤回し、逆に増強する方針を決定した。
 韓国国会は北朝鮮が加えた砲弾攻撃を糾弾し、韓国政府に断固たる対応を促す決議を賛成多数で可決。北に謝罪と再発防止を強く求めた。なお出席議員271人のうち反対は進歩新党の趙承洙議員ひとり。棄権は9人。趙議員は「決議は軍事的対応だけを強調しており、戦争拡大防止のために声を出す必要がある」としたが、集中砲火を浴びた。
 金外交通商相はクリントン米国務長官と電話会談し、韓国西方の黄海で28日から予定されている米韓同盟の堅固さを示すものだとし、北朝鮮に対する明確なメッセージになるとの認識で一致した。
 外交通商省報道官は、砲撃への外交的対応措置として「国連だけを対象に考える必要はない」と述べ、安保理すなわち拒否権を発動する中国に対する警戒感から「国連安全保障理事会に問題提起するかどうかは慎重に検討していく」という考えを示した。
 韓国外交通商省によると、26日27日に予定されていた中国の楊潔箎外相の訪韓は、中国側の日程上の理由で延期になった。
 午後、延坪島で犠牲になった民間人作業員、ふたりの遺体が同国北西部の仁川市に移送された。同市内の病院に安置される。

○ソウルで開催された対北政策セミナーで「北の指導部は、飢えた国民を食べさせるようにしろと我々に要求し、その一方で武器で我々を脅迫する。いつまで我々はやられ続けなければならないのか」
○「中国嫌い」とも言われながら、今年2度も訪中した金総書記について趙明哲は「いまは中国けん制より、協力の方が得と考えている」。趙は元金日成総合大学教授。現在は韓国の対外経済研究院研究員である。

<中国>外務省の洪磊副報道官は、28日からの米韓合同軍事演習に米軍空母が派遣されることに対し懸念を表明。「関係各国が地域の平和と安定のために努めることを望む。関連の報道に注意しており、関心を払っている」と述べるにとどめた。かつて7月の日米合同軍事演習での空母派遣に対し「断固として反対」と強く反対したことと比較して、非難の表現は大幅に後退している。中国は黄海での外国軍の演習には以前から、断固反対の立場だが、明言すれば、演習に対する報復を警告する北朝鮮に支持を与え、事態をさらにエスカレートさせかねないという判断が働いたとみられる。
 中国の外交専門家は今回の中国の対応は「北朝鮮非難を避け続けた、韓国哨戒艦沈没の安保理と同様の結論になるであろう」と指摘した。緊迫化の回避には「中国がアクションを起こさないのが賢明である」とした。


<米国>オバマ大統領は「北朝鮮がウラン濃縮や韓国砲撃といった行動に出るなら、中国の権益を損ねる方法で対抗することになる。演習にはそうした意味合いも込められている」。政府高官は米韓演習の隠れた狙いを明かした。
 NYタイムズE版は、オバマ大統領が、中国の胡国家主席との電話会見の準備に入ったと報じた。
 クリントン国務長官も、中国の柳外相と電話会見する見通し。
 クリントン元大統領政権の国務副次官補をつとめた中国専門家のスーザン・シャークは「中国は部外者が軍事介入してくるかもしれないと恐れた時にはじめて、北朝鮮に本気で介入する」。黄海への空母派遣はその意味で、中国に行動を促す決定といえるとする。
 国防総省のラパン副報道官は、米海軍原子力空母ジョージ・ワシントンを投入して、黄海で28日から実施する米韓合同軍事演習について、中国政府に通告したことを明らかにした。

<日本>朝。前原外相が、クリントン米国務長官と約15分間の電話協議。12月上旬に米ワシントンで日米韓3カ国の外相会談を開くことで調整が始まった。
 菅首相は衆院予算委員会で、政府見解の公表が砲撃事件発生から約7時間後と遅かったことを問われて、一連の対応を「迅速」と自己評価した。彼は23日の行動を振り返って首相公邸にいた15時半に秘書官から一報を受け、「すぐにテレビをつけた。韓国の正式な発表は18時ころだったが、我が国はいろいろな情報網を持っており、そうした情報網から入ってきたことが私に伝わった」。その後の夜の動きも適切で迅速であったと語った。

○コリア・レポート編集長の辺真一は京都で「金正恩への後継体制を盤石にするには、米国との関係正常化による経済の立て直しが必要で、米国中心の経済制裁を脱しないと、北朝鮮は復興しない。3枚の切り札を切った上に衝突を起こすことで、北朝鮮が求める平和協定の必要性を示したのでないか」と語った。
○元外務次官(元6カ国協議日本首席代表)の薮中三十二は立命館大学で講演し、「北朝鮮は体制が崩壊すると難民などの問題が生じるので、無茶をしても中国は守ってくれると見切っている。日本は外交努力で、中国に北朝鮮に本気に向き合うようにさせなければならない」。講演会は、薮中が同大国際関係学部の特別招聘教授就任を記念して開かれた。


11月26日
<韓国>東亜日報は、韓国政府が北朝鮮の砲撃への対応策に、南北非武装地帯近くから大型拡声器で北朝鮮の体制を批判する宣伝放送などの本格的な心理戦の再開を含めない方針だとの政府関係者の話を伝えた。
 聯合ニュースによると、北朝鮮が韓国軍海兵隊砲兵部隊を精密照準し、正確な砲撃・着弾を加えたことを、韓国軍がはじめて認めた。
 同島砲撃に北朝鮮が多連装ロケットを使用したことで、韓国世論が激高している。同ロケットは、多数の弾が一度に広範囲な地域に着弾し、大きな被害を与える。また攻撃を受けた側に反撃の余裕を与えない効果がある。韓国政府も「大量殺傷用兵器による無差別攻撃」と非難。
 在韓米軍のウォルター・シャープ司令官が午前、延坪島を視察した。その直後、12時20分から15時ころにかけ、北朝鮮側から6回ほどに分けて砲声が聞こえた。島に向けた砲撃ではなく、北朝鮮内部での通常訓練とみられる。ケモリ基地方向から聞こえた。北朝鮮は、約20発を発射したと推定されている。
 韓国の大統領府は、新国防相に金寛栄・元軍参謀本部議長(2006年~08年)が内定したと発表。
 韓国進歩連帯などの市民団体は、「朝鮮半島の危機に、米国が介入することを望まない。演習は平和に逆行する」と主張した。
 韓国国会では来年度の国防予算を6%増やすことを審議中。北の砲撃に対して反撃が不十分だったとの批判を受け、予算増の声が高まっている。国防省は日本円で150億円ほどの予算を追加要求。
 ソウルの米韓連合軍司令部前で演習反対の集会を開いた市民団体は「事態を悪化させる演習は中止すべきだ」と主張した。
 北朝鮮が砲撃で、殺傷能力の強い多連装ロケット砲や、特殊な砲弾を使用したとして、韓国社会を驚かせた。韓国軍は自国の優位を宣伝するビラを気球で散布する「心理戦」を再開。
 李大統領は砲撃で死亡した二兵士の遺体が安置されているソウル市内の病院を訪れ「尊い犠牲を強い安保の礎にしたい」
 民間調査機関の世論調査では、政府が取るべき対北朝鮮政策に関して「強硬策」が 57.5%と、「包容政策」の 29.5%を引き離した。

<北朝鮮>「祖国平和統一委員会」ホームページは、延坪島への砲撃は「正当な自衛的措置」だとあらためて強調。砲撃の根源は「無分別な挑発策動」と主張。挑発者には「断固たる征伐あるのみ」と警告した。
 北の対韓国機関「祖国平和統一委員会」は報道官声明を発表。「われわれの領海に直接発砲した傀儡軍の砲台を正確に命中打破し、当然の懲罰を加えた」。対決には対決で、戦争には戦争で対抗するのが北朝鮮だとし、みずからの尊厳と自主権を侵害する挑発者は誰であれ、容赦なく無慈悲にこらしめると威嚇した。
 「祖国平和統一委員会」報道官声明で、国連軍司令部が制定した交戦規則を韓国政府が改定する方針をたてたことと、米原子力空母「ジョージ・ワシントン」が参加する韓米合同軍事演習の計画について「傀儡の輩の無分別な騒ぎで、北南関係は戦争前夜の険悪な状況になった」。北朝鮮の尊厳と主権を少しでも脅かせば、軍隊と人民が「より恐ろしい雷で敵の牙城を、根こそぎ吹き飛ばす準備を整えている」。「対決を強要するなら、わが方も避ける考えはない」

<日本>日本原燃(六ヶ所村)の川井吉彦社長は定例会見で、北朝鮮がウラン濃縮施設を米国の専門家に公開した際「六ヶ所村などの遠心分離機をモデルにした」と発言したことについて、「極めて迷惑な話だ」と不快感を示した。濃縮技術は核拡散に結びつく重要な機密であり、川井社長は「極めて迷惑千万。わたしどもから情報の漏洩は一切ありえないと確信している」
 午前。菅首相は砲撃事件を受け、関係閣僚会議と閣僚懇談会で、27日から米韓合同軍事演習が終了する12月1日までの間、全閣僚に原則都内に待機し、緊急事態発生時は官房長官指示から1時間以内に所管省庁に登庁、などを指示した。関係閣僚会議は23日以来、2回目の開催。
 菅首相は参院予算員会で「韓国の立場を強く支持する。中国にも北朝鮮の抑制を強く求めていく」。拉致問題解決に向けても「できることは何でもやる姿勢でのぞむ」としたが、具体策は示せなかった。
 23日に仙谷官房長官が言及した「独自の追加制裁」についても、検討は一切進んでいない。外務省幹部は「これまでの経済制裁で北朝鮮との貿易はほとんどなくなった」。外交カードはすでに失われており、追加制裁は困難な状態である。
 夜。衆参両院は本会議で、北朝鮮を強く非難する決議を、全会一致で採択した。砲撃について「無差別とも呼べる砲撃は言語道断の暴挙。一般住民を巻き込む武力による挑発は決して許されない」。北朝鮮は「あらゆる軍事的な挑発行為を放棄し、日本人拉致問題の早期全面解決を求める」
 前原外相は、近く中国の楊外相、ロシアのラブロフ外相と、それぞれ電話協議する方向で調整していることを明らかにした。「朝鮮半島非核化と平和が戦略的互恵関係のバックボーンになるとの認識は、日中間で一致している」と述べた。
 政府・民主党は朝鮮王朝時代の国家行事を記した「朝鮮王室儀軌」(宮内庁所蔵)など1205冊の図書を、韓国に引き渡す日韓図書協定の今国会での承認を見送る方針を固めた。官房長官らの問責決議可決で、自民党などが会期内処理に難色を示し、公明党も全会一致が条件と主張している。政府・民主党は、来年1月召集の通常国会での承認を目指す。菅首相が希望した超多忙な李大統領の12月訪日も断られた。


<中国>米韓合同軍事演習に、中国は昨日まで慎重な言い回しで懸念表明に留めていたが、米空母が黄海に入ることに反発し、これまでの慎重な姿勢とは打ってかわり、明確な実施反対表明に踏み込んだ。一方で北朝鮮に対しても、はっきりと自制を求めた。洪副報道局長は、中国の排他的経済水域EEZ内での軍事行動と条件を付けながらも、明確に合同軍事演習実施に反対を声明した。「中国の排他的経済水域内で、許可なく軍事行動を行うことに反対する」。合同演習に対して、中国の「反対の立場は一貫している」。演習海域が中国の主張するEEZに入らなければ、猛反発しない可能性がある。
 黄海のEEZについては、韓国は中国との中間線を主張している。しかし中国は異議を唱え、両国間に合意はない。
 楊潔箎外相は北朝鮮の池在竜駐中国大使に対して直接、「憂慮」を表明し自制を求めた。「砲撃戦の事態の発展を深く憂慮する。当面の急務は事態を制御し、類似事件の再発を防止することだ」。砲撃後、中国外相が北朝鮮当局者と会談したのははじめて。
 楊外相は、米国のクリントン国務長官と電話会談し、深い憂慮を伝えた。
 楊外相は、韓国の金星煥外交通商相と電話会談。深い憂慮を表明。「南北朝鮮の双方は、冷静と自制を保持し、できるだけ早く、南北双方が接触して関係を改善し、対話により問題を解決すべきだ」
 中国の環球時報は米韓演習を受けた地域情勢に関する有識者の見方を紹介した。
 ①北朝鮮が手出ししない。
 ②北朝鮮が砲撃し、小規模な砲撃戦が再発する。
 ③米韓が北朝鮮沿岸部の基地を徹底的にたたき、北朝鮮は38度線で軍事行動に出る。
 この3つのシナリオを取り上げたが、第1の可能性は極めて低いとし,第2の展開に警戒感を示した。上海東アジア研究所の張祖謙は、有事対応として、中国軍が北朝鮮に入り、20~30キロの場所に、北朝鮮難民を収容する区域を設定するよう提唱した。
 中国にとって、米韓演習が北朝鮮の挑発行為を誘発するだけでなく、中国の基地から発する電波情報を、米軍が傍受することなども、警戒の対象となる。

<米国>国防総省は今回の演習を「公の海、公海上で行うもので、北朝鮮への抑止が目的であり、中国に向けたものではない」
 マレン統合参謀本部議長は、北朝鮮の金正日総書記について「信用できる人物ではない」「好戦的で危険で、常に不安要因で、予測不可能なことだけが予測できることだ」と述べ、中国に対し北朝鮮の挑発行動抑止のため影響力を行使することを求めた。中国が金総書記を「制御しようとしているようだが、私には制御可能なのかどうか、分からない」

<ロシア>モスクワの極東研究所、アレクサンドル・ジェビン朝鮮調査センター長は「朝鮮半島の緊張のために、アジア太平洋地域のロシアの経済発展計画に支障が出ている。砲撃事件をめぐるロシアの立場は単純だ。地域の安定を求め、緊張の度を増すあらゆる動きに反対することだ」

<インドネシア>南アジア諸国連合ASEANのスリン事務局長は「韓国・延坪島の砲撃に関する声明」を発表。「不必要な人的被害は起こされるべきではなかった」と、北朝鮮の名前は出さず、間接的に砲撃を批判した。また「関係各国に、朝鮮半島の緊張と相互不信を助長する軍事行動を避けるよう求める」と強調。同日にバリ島で開いた日本とASEANの次官級協議「日本ASEANフォーラム」で日本は「北朝鮮の攻撃は国際法上、許されない」と主張した。

<フィリピン>アキノ大統領は南北の緊張がさらに高まった場合、韓国に滞在するフィリピン人5万人規模を日本に退避させることを、日本政府に打診していることを明らかにした。非難時に備えて、フィリピン政府が航空会社や船会社と交渉をはじめたと、大統領は語った。

<世界>ウィキリークスから機密文書・公電の流出がはじまる。
<2011年1月1日元旦。今年もまだ続きそうです>
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