ふろむ播州山麓

旧住居の京都山麓から、新居の播州山麓に、ブログ名を変更しました。タイトルだけはたびたび変化しています……

「島おこし」 犬猫と宝くじ <ワンコの物語9話>

2011-11-09 | Weblog
 佐賀県の唐津湾に小島「高島」があります。この島のことはずいぶん前、NHKラジオビタミンで知ったのですが人口わずか400人。観光客も訪れない過疎の島でした。ところがこの数年、来島客年20万人の名所島に変身してしまいました。
 訪問客の目指すのは「宝当神社」です。戦国時代の武将、野崎隠岐守綱吉が海賊からこの島の住民を守ったという伝承に由来する高島の神社が、忘れられた小島を救いました。綱吉権現の社が明治34年(1901)に「寶當神社」と名づけられました。それが現代語表記に改められ「宝当神社」になったのです。島民は宝に当たる、宝くじに当たると語呂をあわせてPRを開始。実際に高額クジに当選した島民の実話もあり、全国から宝くじファンが押し寄せることになりました。宝くじ神話の誕生です。
 観光客は10年ほどにして、かつてはほとんどゼロだったのがいまでは20万人をこえる。佐賀県でも有数の観光スポットに成りあがってしまいました。宝当神社では宝当お札、必当お守り、宝当当たり矢、くじを入れておけば当たるという神袋…。さまざまのグッズを来島者は競って求めるそうです。高島は宝くじに便乗して、大成功をおさめました。
 わたしはこの話しを聞いて、「地元京都に当馬神社を、淀競馬場近くにつくろう」と提唱しました。競馬の馬券が当たるという神社です。いや、祠でいいのです。みな面白いと賛同者は多いのですが、残念ながらこの企画はいまだ実現しません。わたしのささやかな夢は老後、当馬神社の神主をつとめることなのですが。

 猫で島おこしに成功した島があります。仙台湾、別名石巻湾の田代島です。3月11日の津波で島の漁業は壊滅的打撃を受けてしまいました。田代島は、ひょっこりひょうたん島のモデルだそうです。近年はネコの島として脚光を浴びはじめていました。島には猫神社があり、猫神様がまつられており、猫の敵である犬は持ちこみ禁止だそうです。警察犬や災害救助犬などは例外ですが、ふつうの犬は入島禁止です。島民数は100人足らずで、自然のなかで自由に生きる猫の住民票の方が多い。
 田代島の漁民が受けた大津波の被害は甚大でした。損害額はおおよそ1.5億円にのぼるといいます。特に主力産業であるカキ養殖施設、そして漁船や漁具が流されてしまいました。
 6年前、当時36歳だった中小路昇さんが島に移住しました。漁師になりたく神奈川県でのサラリーマン生活をやめ定住したのですが、彼が提唱しました。「このままでは島は終わってしまう。行政はあてにできない。自分たちで何かやるしかない」
 田代島では60歳以下の住民はわずかに10人。高齢化の見本のような島です。中小路さんの呼びかけに、若者?たち計7人が立ちあがりました。「津波の損害は1.5億円にのぼるが、8千万円もあれば再起できる」。彼らが計画したのは、カキ養殖復興オーナー制度です。1口1万円で1万5千口、1.5億円を集める。その半額は、数年後に獲れるカキ送付での還元、そして猫の飼育費、猫グッズをプレゼントすることに当てるという企画です。これで手元に残金、復興資金として7千5百万円が残る。それに島の仲間の自己資金を足せば、カキ養殖復興はやれる。
 しかしカキ養殖で有名なのは東北で田代島だけではない。この企画が全国で注目され、たくさんの賛同者を得ることは困難であろう。そこで彼らが注目したのが猫でした。この島には人間より猫住民の方が数多い。島には猫神様をまつる猫神社がある。自由にのびのびと生活する猫を目当てに、昨年はなんと1万2千人もの観光客が訪れたのです。
 若手7人組は名づけました。「にゃんこ・ザ・プロジェクト」。目標の1.5億円は、わずか3カ月で目標額を達成してしまいました。全国のたくさんの猫好きが協力したのです。猫さま様です。いや7人の視点が見事だったのでしょう。
 プロジェクトチームのホームページには「津波に飲まれ人生を島に賭けた者。愛する子猫を失った者。愛する家族を無くした者。これからの将来を失った者…。今回の被災で失ったモノは大きいですが、このプロジェクトを立ち上げたおかげで、得たものの方が大きいような気がします」

 瀬戸内海、岡山市の沖に「犬島」があります。別に犬がたくさん住んでいるわけではありません。古代から犬島とよばれています。島人口はわずか50人ほど。島に暮らす犬が何匹かは統計がありません。
 この島はアートイベントで島おこしが知られていますが、3月11日以前から猫の田代島と提携して、犬猫の姉妹島としていろいろな企画をやっていこうと合意していたそうです。
 犬島のすぐ西に「犬ノ島」という小さな島があります。私有地なので立ち入りは禁止ですが、毎年5月3日は島神「犬石様」の祭日で、自由に祠を参拝できます。犬の神の島と猫の神の島、これらの島が連携して犬猫の平安と、犬猫好きの人間が平和に貢献することには大きな意義があると、わたしは考えます。
 「わんこ&にゃんこ ザ・プロジェクト」が結成されるのであれば、微力ながらわたしも尽力いたそうと思います。寄付金はタバコ代の節約で捻出いたしましょう。
<2011年11月9日>
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