ふろむ播州山麓

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< 3・11 日本 > №6 想定外

2011-04-09 | Weblog
 「想定外」という言葉が、ひとり歩きをしているように感じます。想定内なら事故の責任を追及されますが、「外」と認められれば、「仕方がない」と放免される。
 福島第1原発でいえば、地震によるダメージはなかったとされ、冷却装置機能の喪失は、大津波が原因とされているようです。果たしてそうでしょうか?
 東日本大震災による大津波の高さは、東大の都司嘉宣准教授らの調査で、37.9メートルが確認されたそうです。宮古市田老地区です。これは観測史上最も高いとされる明治29年(1896)の38.2メートルとほぼ同じです。
 ところで福島第1に押し寄せた津波は、14メートル高ほどとされています。しかし東電は同原発建設に当たって、5.7メートルまでの津波を想定していたとされます。わずか6メートル弱を前提に、危険極まりない設備を構えていたわけです。
 炉の位置は海面から10メートルほど。そこに14メートルの津波が襲い、今回の大災を招いてしまった。6メートルまでの津波を想定し、念のために10メートルの高さに発電所を建て、14メートルの海進によって破壊された。
 この事実からみて、一体どこが「想定外」なのでしょうか。想定していた5.7メートルを倍以上も超えた津波だから「想定外」なのでしょうか? 
 明治29年(1896)の大津波では、高さ38.2メートルという歴然たる記録が残っています。40メートルを超えてはじめて「観測史上にない想定外の大津波」ということができるのです。

 文系のわたしですが、科学者やエンジニアと称される皆さん方の発言や行動をみていると、想定外とは「思考停止」と同意語でないかしら、と思えてしまう。
 日本の地震津波史を見ますと、東北地方を襲った貞観11年(869)の大津波。今回の被害によく似ているようです。菅原道真が記録しています。
 また明和8年(1771)沖縄・八重山津波では、海進の高さは何と85メートルだったと記されています。死者12000人。
 高さ数10メートルの津波は、たびたび日本列島を襲っています。想定は歴史から容易に学べるはずです。
<2011年4月9日>

○追記1 4月10日各紙朝刊によると、1~3号機を襲った津波の高さは、14~15メートル。敷地南側の展望台で作業員が撮影した動画からは、押し寄せた津波が高さ約30メートルの崖にぶつかり、50メートルもの高さまで波しぶきが上がった様子が分かる。<4月10日記>

○追記2 「朝日コム」3月31日付。「なぜ女川原発は無事だった 津波の高さは福島と同程度」によると、東北電力の女川原子力発電所を襲った津波は福島第1よりも高く、17メートルクラスという調査結果が出ている。福島第1よりも2メートル以上高い。女川では想定していた津波高は最大9.1メートルだった。女川の主要施設は海面から標高14.8メートルにあり、非常用電源が正常に稼働した。また外部電源も半分が助かった。福島第1では非常用電源が作動せず、外部電源も送電線が地震で倒れたために失われた。なお女川は福島第1の北約120キロに立地。原発施設の海面からの高さは、生死を左右するようだ。<4月10日記>

○追記3 新聞各紙4月16日付。東日本大震災で津波被害の大きかった岩手県宮古市姉吉地区で、陸地をさかのぼった津波の高さを表す遡上高が、38.9㍍に達していたことが分かった。東京海洋大の岡安彰夫教授(海岸工学)らの調査。明治に計測がはじまって以来、観測史上最大。<4月16日記>
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