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ネット通販で気づかぬまま「定期購入」、解約防ぐ様々な手口…身近に潜む「ダークパターン」 : 読売新聞オンライン 2024/03/27 05:00
[情報偏食 ゆがむ認知]第6部 求められる規範<3>
人々の認知領域の隙を突き、商品を購入させたり、契約の打ち切りを防いだりする。インターネットに仕掛けられたその手法は「ダークパターン」と呼ばれる。
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「解約したいのに、全然電話がつながらない」
2022年夏、山梨県南アルプス市に住むパート女性(48)は近くの実家で、父親(80)がそう漏らすのを耳にした。父は携帯電話を手に焦り、いら立っていた。
数日前、ネット通販で「シミが消える」「1980円」とPRする美容液を注文したという。1回のみの購入のつもりが、その後送られてきたメールでは定期購入契約が結ばれ、2回目以降は1回6000円近くかかると書かれていた。
女性は父親に代わって解約しようと、スマホでかけ直した。「電話が大変混み合っております……」。自動アナウンスが延々と流れた。LINEに切り替え、販売元とのトーク画面に「解約したい」とメッセージを送った。何回目かのやり取りの後、二つの選択肢が表れた。
<本当にやめますか?> <やっぱりやめない?>
女性は迷わず<やめる>を選択。だが、それは「解約手続きを取りやめる」という意味の<やめる>で、手続きは振り出しに戻った。
<やめるとポイントが失効します>。その後も解約を防ごうとする文言が続き、「心が折れそうになった」。契約を解除した後、通販サイトを確認すると「定期購入」を示す文言は確かにあった。ただ料金を宣伝する言葉に比べ、ごく小さな文字だった。「高齢者はよく読まずに契約してしまう。こんなずるいやり方はひどい」。女性はそう憤る。
読売新聞はこの業者側に取材を申し込んだが、回答はなかった。
全国の消費生活センターに寄せられた通信販売の「定期購入」に関する相談は22年、前年比47%増の約7万5000件で、過去最多となった。65歳以上の相談は全体の3割を占め、そのうち7割近くがネット通販によるものだ。ダークパターンによるトラブルは身近に潜んでいる。