映画と本の『たんぽぽ館』

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「言霊」山岸凉子

2013年06月12日 | コミックス
何事もポジティブに

言霊
山岸 凉子
講談社


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山岸凉子さんは、やはりバレエもので本領を発揮しますね。
最新作の本作、バレリーナを目指す16歳澄(さやか)が主人公です。
彼女は自分が本番に弱いと思っているのですが、
なんとかこのメンタルを克服したい、と模索していくというストーリー。
テレプシコーラでもそうでしたが、
山岸作品の主人公の少女は
自分の非をまっすぐ見据える健気な子が多い。
だから本作でも澄は、友人には「頑張って」といいながら
実は「失敗すればいい」と思ってしまうことに、
罪悪感を抱いているのです。


しかし、それが良くないというのには、科学的根拠がある。
本作はすべてのアスリートに通じるアドバイスを送っています。
すなわち、練習中も本番も
決してネガティブな言葉を考えたり口にしたりしてはいけない。
なぜなら大脳は考えるすべての言葉に影響を受けるから。
自分のことだけではなく人を呪ったりすることも同じ。
これこそが「言霊」の意味だったのですね。
人を呪わば穴二つ。
自分にも必ず跳ね返ってくるということなのでしょう。
この考え方は、以前にも著者の短編の中にあったと思いますが、
確かに大事なことだと思えます。
全てはポジティブに。
きっとうまくいく。
あなたも。
私も。


この本にはもう一作「快談・怪談」という中編が収められています。
山岸凉子といえばバレエ物ではありますが、
そう、怪談ものでもあります!
でも本作は、『怖い』話ではなくて、
ちょっとフシギな幸運の出来事を集めた「快談」集。
前作からの流れで言えば、やっぱり良いのではないでしょうか。
何事もポジティブに、ということで・・・。
我が家にも白蛇が降ってこないかな・・・?

「言霊」山岸凉子 講談社
満足度★★★☆☆