映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

宮松と山下

2023年09月01日 | 映画(ま行)

宮松の秘密と真実

* * * * * * * * * * * *

エキストラ俳優の宮松(香川照之)は、いつもその他大勢、
斬られたり撃たれたりして死ぬ役ばかり。
それだけでは生活できないので、ロープウェイのメンテの仕事もしています。
そんなある日、宮松の前に現れた男が、彼に「山下」と呼びかけます・・・。

本作、宮松は分かったけれど、では山下は誰なんだろう、
なかなか登場しないなあ・・・などと思って見ていて、
いきなり宮松のはずの男が山下と呼ばれるのにビックリです。

さて、実は数年前、宮松は記憶を失っていて今の生活を始めました。
その彼を知る男が現れて、宮松の本当の名前、山下と呼びかけたのです。
それでようやく宮松は本当の自分の身元が分かり、
妹とその夫が暮らしている実家へと帰ります。

さて、本作に登場する人物たちは皆、言葉少な。
彼らは本当の自分の思いを決して口にしません。
だからわたし達は、せっせと想像力を働かせて
彼、彼女たちの本当の思いを推測しなければなりません。

すると疑問が湧いてくるのです。
本当に宮松は記憶を無くしているのか・・・?

宮松は以前、タクシー運転手をしていて妹と2人暮らし。
その妹への感情がどうも微妙なところ。
彼はその頃の生活から逃げ出したかったようではある。

何もかも捨てて忘れ去ってしまいたかった・・・?

最後のタバコのエピソードも謎が多いです。
私は過去も今も、宮松には喫煙習慣はなかったのでは?という気がしたのですが・・・。
見ようによってはどうとでも採れるシーンばかり。

エキストラの仕事は、ちょい役でも映画に出れば、
誰か自分を知っている人が気づいて現れるかも知れない、と思ったからかも知れないし、
もしくは、死人ばかりを演じることで、今までの自分を殺し、
これからも死んだように生きるという気持ちの表れなのかも知れない。

とても奥深い作品です。

監督・脚本は関友太郎、平瀬謙太朗、佐藤雅彦という
監督集団「5月」の初作品ということで、力の入り具合がよく分かります。
しかーし!!。
香川照之さんの不祥事が取り沙汰されるようになったのが2022年8月。
本作は2022年11月公開。
というかむしろよく公開中止にならなかったなあ・・・と思うくらい。

本来ならもっと評価されるべき作品なのではないかと思いました・・・。

 

<WOWOW視聴にて>

「宮松と山下」

2022年/日本/87分

監督・脚本:関友太郎、平瀬謙太朗、佐藤雅彦

出演:香川照之、津田寛治、尾美としのり、野波麻帆、中越典子

謎度★★★★☆

寡黙度★★★★★

満足度★★★★.5

 



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