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「天と地の守り人 3 新ヨゴ皇国編」上橋菜穂子

2020年10月17日 | 本(SF・ファンタジー)

怒濤のスペクタクル!!

 

 

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戦乱と、異界ナユグの変化にさらされる新ヨゴ皇国。
帰還したバルサ、そしてチャグムを待っていたものとは…。
壮大な物語の最終章『天と地の守り人』三部作、ここに完結。

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いよいよ最終巻。
タンダのいる新ヨゴ軍とタルシュ軍の戦闘の火蓋が切られます。
しかしこの筆力が半端ないですね。
今まで見た多くの歴史物やファンタジー映画の戦闘シーンを彷彿とさせます。
しかしこの場にはまだチャグムもバルサも間に合わない。
タンダの負う過酷な運命は・・・。

 

本巻では、チャグムはロタとカンバル共同軍を率いて新ヨゴ国へ。
そしてバルサは、大洪水のことを知らせに呪術師オロガイへの元へと向かい、別行動になります。

 

まもなく新ヨゴ国へ入ろうとするチャグムのシーン。

「そして、ロタとカンバルの騎馬兵をひきい、
磨き上げられたカンバル風の胴当てをまとっている戦闘の騎馬武者は、
なんと、ヨゴ人だった。
しかも、若い。
まだ二十歳にもなっていないように見える。
目のわきに刀傷があるその若者から見おろされたとき、
ガシェは、思わず背を伸ばした。
・・・そうせずにいられぬなにかが、その若者にはあった。」

これはあえて、チャグム側ではなく、
その騎馬隊と行き会った新ヨゴ国の避難民の立場からの目線となっているのです。
私たちの慣れ親しんだチャグムが、こんなにも立派になって威厳さえも身につけてここに登場する。
うわ~っ、カッコイイ!!

なんて効果的な描写なのでしょう。
参りました。
しかも実はこの難民たちの群れは、バルサの提案で町を抜け出してここに来ていたのです。
この絶妙な関係性のバトンリレーがまた、なんとも言えない。

 

本作中でいちばんの問題となっていたチャグムと父親の関係も、実にいい落としどころでした。
いくら何でもチャグムに親殺しはさせられない。
しかし、この父王が生きている限り、新ヨゴ国は破滅の道しかない、
というところだったのですが。

 

さて、巻末に著者のあとがきがありまして、
このシリーズはここまでのストーリーを見通して書かれたものではない、とのこと。
いやいや、実のところ本作を読むと、
これまでのストーリーこそまさにこの3部作のためにあった、
と、ほとんど確信してしまうくらいなのです。
すべてのエピソードや人物たちが本作につながっています。

けれど著者は、ストーリーはなぜか突然に降ってきた、という。
栗本薫さんがよく、グインサーガのストーリーについて、そのようにおっしゃっていましたね。
そういうことがあるもんだなあ・・・。

全く、怒濤の展開に一気読み必至であります。

 

<図書館蔵書にて>

「天と地の守り人 3 新ヨゴ皇国編」上橋菜穂子 軽装版偕成社ポッシュ

満足度★★★★★

 



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