映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

オッペンハイマー

2024年04月02日 | 映画(あ行)

原爆の父の真実

* * * * * * * * * * * *

アカデミー賞7部門受賞の注目作。
「原爆の父」と呼ばれるロバート・オッペンハイマーの物語です。

第二次世界大戦中、核開発を急ぐ米政府のマンハッタン計画において、
才能あふれる物理学者・オッペンハイマーが原爆開発プロジェクトの委員長に任命されます。

彼は実験で原爆の威力を目の当たりにし、そしてまた実戦で投下されると、
恐るべき大量破壊兵器を生み出してしまったことに愕然とし、衝撃を受けます。
そのため、戦後さらなる威力を持った水素爆弾の開発に反対するようになりますが・・・。

まずは本作、モノクロ映像とカラー映像が入り乱れて出てきます。
私は始め、過去のことがモノクロでカラーが実際に原爆のプロジェクトに取りかかった時のこと?
などとぼんやり思いながら見ていたのですが、
どう見てもそれは違う。
明らかに戦後のことがモノクロで表わされたりしています。

本作で重要なのは、原爆の製造に関わる部分ではありますが、
もう一つ、米国における「赤狩り」のことでもあるのですね。
オッペンハイマーは水爆推進という国の方針に異を唱えたことから
政府の反感を買います。
かつてオッペンハイマーの妻や兄弟が共産党員であった。
それでオッペンハイマー自身も共産党につながりがあるのでは?と疑念を抱かれ、
あろうことか元々ソ連のスパイとして原爆開発に関わっていたのでは・・・?
などと言われてしまう。
そんなバカな・・・?

何が何でもそういう事実をでっち上げてしまおう、という諮問会(?)のような
薄ら寒い会議の様子がかなり長く描写されます。

 

結局帰宅後に調べて初めて知ったのですが、
本作はつまり、オッペンハイマーの視点によるものがカラーで、
そして、オッペンハイマーの視点によらないものがモノクロで描かれているとのこと。

うーむ、だからか。
過去現在が入り乱れている上に、カラー・モノクロも入り乱れているものだから、
私はよくわからなかったというのが正直なところです。

しかも全180分。
もう、降参・・・。

そんなわけで、私には赤狩りの馬鹿馬鹿しさの部分よりも、
原爆製造から投下までにいたる道筋と、その都度のオッペンハイマーの意中部分の方が心に残りました。

ときおり鳴り響く耳障りな効果音が、こちらの感情まで破戒されるような気がします。

原爆の投下シーンは、実際にオッペンハイマーが目にしてはいないということなのでしょう、
映像はなくて、ラジオのニュースでそのことを知るのみ。

 

核分裂が強大な破壊力を持つ兵器になる。
理論的にはすでに広まっている話。
ではどの国がその実用化にこぎ着けるのか、というのが当時の緊急課題だったのでしょう。

ドイツ、ソ連・・・。
日本でもその研究が進められていたというのは映画「太陽の子」にもありましたっけ。

結局アメリカが一番乗りとなったのは、
砂漠の真ん中に町を作り上げ、すべてをそこに集中させて原爆の製作に当たったという
財力のなせる技なのでは、と納得しました。
ともあれ、ナチスが先でなくてよかった・・・。

<TOHOシネマズ札幌にて>

「オッペンハイマー」

2023年/アメリカ/180分

監督・脚本:クリストファー・ノーラン

出演:キリアン・マーフィー、エミリー・ブラント、マット・デイモン、
   ロバート・ダウニー・Jr、フローレンス・ビュー、ジョシュ・ハートネット

 

歴史発掘度★★★★☆

震撼度★★★☆☆

満足度★★★☆☆



最新の画像もっと見る

コメントを投稿