映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

風が強く吹いている

2009年11月18日 | 映画(か行)
走るのは1人だけれど、1人じゃない

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箱根駅伝に挑む、大学生たちの青春。
原作は三浦しをん。
私はこの本があまりにも面白くて、大好きで、
だからつい映画まで見てしまいました。
ストーリーはかなり原作に忠実なので、こちらをご覧くださいね・・・
                   →三浦しをん「風が強く吹いている」
この原作のイメージを損なわず、よいできの作品だと思います。
う~む、それで、いいたいことは全てそちらで言ってしまったような気もするし
どうしましょう、というところなのですが・・・。


ここの竹青荘のメンバーがいいですね。
特に、ハイジさんは、
みんなの面倒見が良く、管理人、兼監督、兼コーチ、兼選手
・・・確かに、これでは倒れるのも当たり前。
だから、皆はつい、ハイジさんが望むならかなえてあげよう・・・と、
走る決意をするのですから。

このよほどボロな学生寮は、
映画の中では、完璧にイメージを具現しているので、そこは儲けものです。
なるほど・・・この古くてぼろなイメージ。
でも、みんなでワイワイ、たのしそうだなー、と。
しかし、王子の部屋の下には絶対行きたくないです・・・!
あまりにも危険です。
あれだけ人手があるなら、
部屋の上下を入れ替えるべきではないでしょうか・・・?


そして言うまでもなく、カケルの林遣都は、はまり役。
もともと、あまり人とつるんだりしない一匹狼的性格。
「バッテリー」の「巧」の時のイメージに近いですね。
でもここでは、竹青荘にいるうちに、どんどん皆に馴染んでいく。
こういう変化も見逃せません。
留学生のムサも、つい言葉が丁寧になってしまうダンテ・カーヴァー。
笑ってしまうほどはまり役。


でも、総じて考えると、やはり私は映画よりは本のほうをオススメしたい。
映像を目の前で見るよりも、本のほうがなぜか印象がより鮮やかなんです。
例えば、葉菜子さんが、
「走る姿がこんなに美しいとは思わなかった・・・」
とつぶやくシーン。
ここでは思わずつられて感動のあまり涙がでました・・・。
また、走り出す前の極度の緊張感とか・・・、
びんびんに伝わるのは、本の方。
やっぱり、著者の筆力なんでしょうねえ。
本の読後は、この私でさえ風を感じて走ってみたくなりましたから・・・。
映画を見ても、そこまでは思わないです。

こんなこと言ったら、映画好きは何のため?と思えてしまいますが・・・。
本よりは映画の方がお手軽なのは確かですし、
こんなステキなストーリーをより多くの人に知ってもらうためなら、
映画も良しとしなければね・・・。

2009年/日本/133分
監督・脚本:大森寿美男
出演:小出恵介、林遣都、川村陽介、中村優一、津川雅彦



2009年10月31日全国ロードショー『風が強く吹いている』公式サイト