映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

幸せはシャンソニア劇場から

2009年11月03日 | 映画(さ行)
舞台への愛、友情、そして父子の絆
     
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1936年、パリ。
シャンソニア劇場が、不況のため閉館。
そのため、長年裏方を務めたピゴワルは職を失ってしまいました。
彼の息子ジョジョは別れた妻に引き取られてしまいましたが、
何とか彼の元に連れ戻したい。
しかし、きちんとした職についていないと、引き取ることができないのです。
劇場が好きなことにこんな事情も加わって、
彼はかつての仲間たちと劇場再建に乗り出すのです。

華やかなショーの舞台裏にある切ない事情。
二次大戦前、資本家と労働者の対立という時代背景も表わされていて、
興味深いですね。


歌手志望の娘ドゥースの舞台は、実に花があります。
いつの間にか私も映画中の観客と一緒になって舞台を楽しんでいる。
また、ひきこもりの“ラジオ男”。
彼の存在も面白いのです。
なぜ彼がひきこもるようになってしまったのか。
まさかこのドゥース嬢と関係があるとは・・・。
実は彼は何者だったのか。
これはなかなか大きなポイントです。

失業者たちのあふれるパリの下町で、
華やかな舞台は人々の失意を癒してくれたのでしょうね。
ピゴワルを取り巻く人々の舞台への愛。
友情。
そして、ピゴワル、ジョジョの父子の絆。
じんわりと温かみの広がる感動作です。


実はこの映画の冒頭、
ピゴワルが警察署で尋問を受けるところから始まるんですよ。
殺人罪で捕らえられたピゴワルの供述が、そのまま映画になっている。
でも、映画が進むうちに、そんなことは忘れてしまうのです。
紆余曲折あって、劇場が復興した最も輝かしいミュージカルのシーン。
思わず、私もリズムに乗って・・・。
しかし、そこから一転、
冒頭のシーンに戻り、
高揚した私たちに水を浴びせかけるあたりが、
実にうまいストーリー運びだと思いました。

一体全体、こんな人のよいピゴワルがなんだって殺人なんか・・・。
そのわけは、やはりぜひご自分で見ていただくのがいいでしょう。


2008年/フランス・チェコ・ドイツ/120分
監督・脚本:クリストフ・バラティエ
出演:ジェラール・ジョニョ、クロビス・コルニアック、カド・メラッド、ノラ・アルネゼデール、マクサンス・ペラン


幸せはシャンソニア劇場から予告編