狼魔人日記

沖縄在住の沖縄県民の視点で綴る政治、経済、歴史、文化、随想、提言、創作等。 何でも思いついた事を記録する。

朝日VS読売の原発論争

2007-07-26 12:30:28 | 県知事選

中越沖地震の直撃以来、柏崎刈羽原子力発電所の被害・対応について全国紙は読売、産経と朝日、毎日が対立する社説で争っていた。

今朝の社説も四社勢ぞろい。

夫々の意見を代表して朝日と読売の社説を引用する。

                    *

◆朝日社説:原発の損傷―調査に時間を惜しむな

 傷は、そこまで及んでいたのか。

 新潟県中越沖地震の直撃を受けた東京電力柏崎刈羽原子力発電所で、6号機の原子炉建屋の天井クレーンに破損が見つかった。

 6号機は定期点検中だったが、運転中なら核反応が進む炉の真上でトラブルが起こったことになる。そう考えると、改めてぞっとした。

 東京電力によると、壊れたのはクレーンを移動させる部分に限られ、この破損によって300トンを超えるクレーンそのものが下に落ちることはないという。

 だが、たとえそうであっても、軽く見てはいけない。

 この破損は、建屋の天井付近の揺れの激しさを物語っている。一見しただけではわからない傷やひずみが、クレーンの本体や周りに発生しているかもしれない。6号機だけでなく、別の原子炉のクレーンで似たようなことが起こっている恐れもある。

 原発にある構造物は耐震設計上、重要度ごとにA~Cクラスに区分されている。天井クレーンはBだった。

 しかし、原発のような巨大システムでは、周辺機器の損傷が回りまわって心臓部のトラブルにつながりかねない。

 重要度がそれほど高くないとされる個所の異状も、つぶさに調べ上げる必要がある。そのうえで、最悪の場合には、どんな連鎖的な被害が起こりえたかまで考えなければならない。

 今回、地震の発生直後にわかったのは、変圧器の火事だった。その後、放射能を含む水が外部に漏れるなど、60件を超える被害が次々に明らかになった。さみだれ式に見つかるには理由がある。

 原発は火力発電所や工場とは異なり、危険な放射性物質を扱っているので点検に手間がかかる。クレーンの破損も、周りの放射能汚染を除去した後に専門家らが近寄って気づいたという。

 今後、東電は原子炉の釜ともいえる圧力容器のふたを開けて、中の様子を調べる方針だ。圧力容器内の点検は、被曝(ひばく)の危険がきわめて高いので、カメラを遠隔操作するなどして進めることになる。

 だが、圧力容器の点検作業のためにも、まずはクレーンをきちんと調べ、破損個所を修理しなければならない。

 この原発の7基すべての点検と安全確認を終えるまでには、少なくとも数カ月はかかりそうだ。

 運転再開には、地元の了解も欠かせない。会田洋・柏崎市長は消防法に基づき、所内の燃料タンクなど危険物施設の緊急使用停止命令を出している。

 今回の地震被害は、たとえ原子炉本体の異常による大事故が起こらなくても、原発には長期に止まる危うさがあることを浮き彫りにした。

 だが、時間をかけて小さな傷を拾い上げることは、破局的な災害を防ぐことにつながる。そのための稼働停止は、安全の費用と考えるべきだ。

                     *

◆読売社説:7月26日付 原発と地震 原子炉の安全は確保されている 

 大々的に「放射能漏れ」と煽(あお)り立てるほど、ひどい漏れが起きているのだろうか。

 東京電力の柏崎刈羽原子力発電所が新潟県中越沖地震で被災した。その状況が連日、メディアを通じて伝えられる。

 ニュースを知ったイタリアの人気サッカーチームが、予定していた来日を直前になって中止した、という。

 夏のかき入れ時を期待していた新潟県内の旅館やホテルも、キャンセルが相次いでいる。県の試算によると、風評被害による損害額は1000~2000億円にのぼる見通しだ。

 もう少し冷静になってはどうか。

 「漏れた」とされる放射性物質はごく微量だ。政府と発電所が定めた排出基準の10億分の1から1000万分の1程度でしかない。経路や物質の種類から見て、原子炉本体からの漏れの可能性は極めて低い。無論、環境への影響はない。

 大気への放出は排気スイッチの切り忘れが原因で、今は止まっている。地震による機械的な損傷と言うより、人為的ミスだった。

 原子力安全委員会は19日に、鈴木篤之委員長の所感を公表している。

 最大のポイントは、緊急時に原子炉で最も重要とされる「止める」「閉じこめる」「冷やす」、という三つの機能が正常に働いて、今も安全性は確保されている、ということだ。

 原子力施設の耐震設計と建設、さらにその考え方を定めている政府の指針は基本的に有効だった、と言える。

 ただ、特別な耐震強化をしていない排気ダクトや消火栓などの付帯設備は、大きく損傷している。原子炉の建屋内にある、耐震性をある程度強化したクレーンも破損した。こうしたトラブルは60件以上にのぼる。

 しかし、いずれも原子炉の安全性とは峻別(しゅんべつ)して考えるべき問題だろう。

 重要なことは、今回の揺れがどんなものだったかを分析したうえで、炉にどう影響したか、詳しく調べることだ。付帯設備の耐震性をどこまで確保すべきかも課題となる。

 原子炉が襲われた史上最大の揺れかもしれない、と言われる。ならば貴重な知見が得られるはずだ。それを導き出し、すべての原子炉の安全性の向上に確実に反映させてゆかねばならない。

 国際原子力機関(IAEA)も調査に来る。日本は耐震設計などの技術で世界最高水準にある。それを生かした安全性確保の努力について、しっかりと見てもらい、海外での風評被害を、ぜひ解消してもらおう。

(2007年7月26日2時1分  読売新聞)

                     ◇ 

参考意見に北國新聞社説は・・・

 

◆◎IAEA原発調査 拒む理由などあるまいhttp://www.hokkoku.co.jp/_syasetu/syasetu.htm

 日本は国際原子力機関(IAEA)を上手に使っていないという指摘がある。IAEAの運営費の約20%を負担しているのに、正規の職員は1%足らずであり、国際的に活躍する日本人専門家があまりにも少ないことを指しての批判である。

 政府は、新潟県中越沖地震でトラブルが続発した東京電力柏崎刈羽原発に対する調査に関連して、そのIAEAの調査団を受け入れることを決めた。原発の地震被害は貴重で、国際的な情報共有が必要と判断したからだそうだが、原子力の平和利用促進のためにIAEAを使いこなすようにする好機にしたい。そう考えると調査団を拒む理由などあるまい。

 IAEAのエルバラダイ事務局長は同原発の地震によるトラブルが発生した直後、早々と記者会見して「地震の強さが設計(の想定)を超えた可能性があり、日本は原子炉の構造、システム、構成部品について透明な全面的調査を行う必要がある」と述べ、IAEAとして国際的なチームを通じて調査に参加する用意があることを明らかにした。

 政府の調査団受け入れ決定はこれを受けてなされたものだろう。日本の技術がみだりに漏れるのは好ましくないにしても、事故などの情報の共有を図ることが国連関連機関であるIAEAの目的の一つであることは無視できないのである。

 原発事故ではないが、IAEAは前に日本で調査した実績もある。一九九九年の茨城県東海村で起きたジェー・シー・オー(JCO)東海事業所の臨界事故のとき、三人の調査員を派遣し、原則や基準の重大な違反や設計上の弱点があったとの報告書を公表している。その前の一九八六年に起きた旧ソ連のチェルノブイリ原発事故の際もIAEAは専門家チームを送り込み、事故原因の解明に加えて放射能汚染地域の住民の健康調査なども行っている。

 被災地の新潟県などは、原発本体に影響はないといわれていることから、この際、いわば国際的な“プロ”による調査で安全のお墨付きをもらえば、風評被害の沈静化に役立つとの期待を抱いているともいわれる。が、それは本来の調査のおまけのようなものである。笑えないが、最初から期待するものではなかろう。

                    ◇

オーマイニュースはどう伝えたか。 

 

◆柏崎刈羽原発報道は適切かhttp://www.ohmynews.co.jp/news/20070721/13344

中枢部は想定以上の揺れに耐えた

岡田 克敏(2007-07-21 18:40)
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 新潟県中越沖地震によって、柏崎刈羽原子力発電所は50カ所を超える被害を受けた。しかし、想定の2.5倍の地震加速度にもかかわらず、運転中の3基、起動中の1基の原子炉は自動停止し、中枢部の安全性は確保された。

 格納容器など、主要機器の状態は今後の調査を待たなければならないが、ひとまず、安全が確保されたことは評価されてもよい。想定の2.5倍の揺れに耐えられたのは、安全率をみた設計のおかげであろう。

地震によって亀裂が入った柏崎刈羽原子力発電所周辺の道路=7月18日、ロイター

 この原発被害に関する報道で目立つのは、建設の事前調査で活断層を見落とし、想定加速度を低く見積もったこと、放射能漏れがあったこと、変圧器火災の消火に手間取ったことなどである。その原因である設計や管理上の問題を問う姿勢も共通していた。

 これらを繰返し聞かされれば、原発の安全性に対する不安が増幅されるのは自然なことである。原発反対運動は今後活発になるかもしれない。

 もちろん、メディアが指摘するような活断層の調査など、問題点を今後十分に検討し、解決すべきであることは言うまでもない。

 だが、これは原発が偶然、地震によって試されたケースである。50カ所以上の被害データと共に、原発としては過去最大の地震加速度680ガルに中枢部が耐え、安全が確保されたということであれば、それは世界の原発に貴重なデータを提供することになるだろう。

 中枢部の安全が確保され、重大な事態に至らなかったというポジティブな側面を評価したのは、私の知る限りでは読売と産経の社説、NHKビジネス展望での寺島実郎氏の談話だけである。朝日、毎日の社説は責任追及と改善策への言及が目立ったが、さすがに、廃止せよという無責任な態度はなかった。

 このような大きな地震に対して、原発といえども被害をゼロにすることは恐らく不可能だろう。原発のような複雑な装置に完全性を求めることは無理である。最重要なのは重大事故を起こさないことである。そのためには少しずつ改善を重ね、危険をゼロに近づけるだけだろう。

 メディアは怖さを強調し、糾弾することを仕事と心得ているような印象があるが、全体を冷静に評価できる見識を持っていただきたいと思う。
(オーマイニュース)

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◆読売: 7月19日付 原発の耐震性 最新の知見で安全を確認せよ 

◆産経: 【主張】IAEA原発調査 有益だが過大評価は禁物(07/24 0)

◆朝日:原発と地震―「想定外」では済まない

◆毎日:原発停止命令 徹底調査し説明責任果たせ

 


 ◆参考エントリー:福島瑞穂氏「柏崎刈羽原発の廃炉求める」 

 

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3 コメント

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市民の方がまとも (suzudaisuke)
2007-07-26 15:26:06
>メディアは怖さを強調し、糾弾することを仕事と心得ているような印象があるが、全体を冷静に評価できる見識を持っていただきたいと思う

ずいぶんまともな記事をオーマイニュース市民記者は書いておられますね。韓国資本のメディアですから日本嘲笑ネタにしているだろうと見てもいませんでした。
まともなので鳥越氏は編集長に居辛くなって辞任(?)されたのかも。
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プロ記者り市民記者の方が・・ (狼魔人)
2007-07-26 17:41:34
suzudaisukeさん

私もオーマイニュースには鳥越氏の絡みもあるので、ある種の偏見で見ていましたが、書き手によってこうも変るものと見直しました。

岡田克俊さんという市民ライター、朝日やNHKが無責任に垂れ流した風評の被害について、鋭く追及しています。

http://www.ohmynews.co.jp/news/20070725/13469

プロを自認する共同配信の地方紙の記事に比べて天地の差です。
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Unknown (まりも)
2011-04-12 20:17:19
2011年3月11日
どちらが正しい認識だったか決着がつきましたね
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