ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 野坂昭如著 「絶 筆」 (新潮社 2016年1月)

2016年04月12日 | 書評
焼跡闇市(無頼)派を自任する小説家・マルチタレントが、脳梗塞で倒れてから2015年に急逝するまでの12年間の日記 第11回

2013年

* 元旦、われに訪れる所なし、訪れる者もまたなし。老境の醍醐味。
* 安倍政権の経済政策が報じられている。景気のいい話をする奴は避けろ。子供の時、祖母に教わった。
* テレビが日本に生まれて60年たった。かって大宅壮一さんは、テレビの登場に、一億総白痴化が進むと言った。テレビのマンネリ化が言われて久しい。
* 2年前東電福島第1原発はメルトダウンを起し、放射性物質をまき散らした。固唾をのんで見守った原発事故。いつの間にか原発ありきに戻り、世間も政治家も考えることを、またやめた。
* 国会中継を見る。これは自虐的行為である。なぜなら自分たちが選んだ代表がバカなことを喋るのを苦痛に耐えながら眺めるからだ。
* 春一番が吹く。安倍首相はTPPへの参加を正式にっ表明した。廃業に追い込まれと反対するる農業関係者。日本の食料自給率は39%。
* 春の選抜高校野球の中継。福井の春江が初出場である。福井の春江は14歳のころ空襲で焼け出された神戸から逃げてたどり着いたところ。一緒に逃げた幼い妹が死んだ土地でもある。
* 日銀の政策発表。本来日銀とお上とは対等、通貨を仕切る役割は政府の政策に影響されてはいけないという趣旨で法に定められている。それが政府のお先棒担ぎと成り下がっている。
* 日本列島は地の底の動きが活発だ。地のプレートはいわゆる板バネで、押されて弾ければ地震だ。この列島は天災よりも人災によって滅びる確率が高い。
* 4月閣僚による靖国神社参拝がなされ、続いて議員諸氏がぞろぞろ後を追った。中韓はこれに反発して抗議、外交問題となった。お国のために死ぬことが崇高な行為だとのたまうのは、未来の若者を戦地に赴かしめるための下ごしらえであろう。
* 安倍自民党は憲法改正が当たり前のように言う。憲法はお上の暴走を抑えるための仕組み。かって国民より国家を重んじ、日本国民は戦争に巻き込まれた。
* 橋下知事の暴言問題。戦争の反省が、戦争を知らない世代に何一つ伝わっていない。慰安婦問題はその奥に深い根が横たわっている。
* 共通番号制度なるものが国会で成立。お上が情報管理などできたためしがない。国民側の利便性などなく、お上の都合だけが先行する。実に危なっかしい制度だ。
* インフレ、株価のアベノ官製バブル崩壊が取りざたされる。復興予算流用問題、かたやアフリカ諸国や中東諸国にODA 大盤振る舞い。狂った経済政策で国民の財産苧の掠奪をはかるアベノミクス。
* 経済第1を掲げる安倍さんの本当の狙いは、参議院選挙後の安定自民党政権確立後あたりから、政治の反動化という本性が発揮される。
* 7月参議院選挙で自民党圧勝。それにしても野党のだらしなさはどうだ。自民がその気になれば何でもできる。日本終りが始まった。
* 福島第1原発の汚染水漏れ。オリンピック立候補の時安倍さんは、福島原発はアンダーーコントロールで心配ないとおっしゃったが、真っ赤なウソ。これほど平気な顔をして嘘がつける人は珍しい。倫理のかけらもない御仁である。数十年以上かかる事故対策(結局チェルブイリのような埋め殺し法になるか)、誰も責任を負わない仕組み。
* シリア情勢緊迫化。世界の警察国家アメリカのお出ましとなるが。オバマ大統領は少し慎重。イラクの時ブッシュは大量破壊兵器があると言って戦争になった。シリアには化学兵器があるという。だからと言って空爆で人を殺していいのか。安倍さんはすでに戦争狂で前のめり。
* 2020年東京オリンピックが決まる。大本営並みの報道体制、オリンピックはノーと言えば非国民扱い。東京は復興予算を流用し、さらにオリンピックインフラ特需に沸いているが、被災地はさらに置いてけぼりにされるだろう。
* JR東海がリニア新幹線計画を発表。東京―名古屋40分、弾丸列車のため地下深くを直線で走る。さてリニアが完成するまで生きていられないだろうが、こんなものを作る価値はあるのだろうか。
* 秘密保護法案。国の秘密をばらしたら罰則。日本は戦前に帰ろうとしている。多分この直感は正しいと思う。12月法案成立。審議など無いに等しい。国民は馬鹿にされている。もはや民主主義国家とは言えない。
* 与党の暴走、野党は無力。今のお上を選んだのも国民。危ないと自覚した時はすでに手遅れ。明かせない秘密だらけで言論抑圧が当たり前となる。世の中は再び戦前に戻ろうとしている。

(つづく)