大災害の被災対応と復旧・復興に法の課題とはなにか 第8回
第3部 「法の課題」 (1)
法の課題というよりは、これまでの議論で落としてきた話題を集めたものである。避難者の支援問題、原子力災害、個人情報保護問題を論じる。終章で災害対応の当事者としてボランティア、女性、自治体の問題を取り上げる。東日本大震災では被災後1年が経過した時点で、避難者の数は34万4290人に及び、県外避難者は7万2892人であるという。原発避難者は長期間にわたって帰還が困難であると予想される。福島県では被災後1年で被災関連死は764人に及び、殆どが避難生活中のことであった。被災者の住まいは「避難所」から「仮設住宅」そして「公営住宅」をたどるが、それ以外の人々(自主避難者、県外避難者など)は法的支援の埒外に置かれる。避難者の数さえ把握していない。原発災害避難者に対して「避難住民に係る事務処理特例および住所移転者に係る措置に関する法律」(2011年)が成立した。これは行政の事務処理に過ぎず、避難者の便宜を図ったものではない。多くの自治体では入居対象者を原発避難者に限定しているが、松本市などは子ども女性の自主避難者にも門戸を広げている。自治体の対応に格差が見られるは災害救助法の運用の仕方にある。その根拠は厚生労働省が積極的な避難者の保護指針を出していないことである。第2に災害救助法の求償の仕組みがうまくいっていないためである。避難地でかかる費用の請求先が被災自治体に振り替える手続きに齟齬をきたしていることと、被災自治体が救助費の上限を抑えていることであるという。多くの避難者を受け入れている新潟市、山形市、米沢市が災害救助法の基準外になっている避難者支援費用の助成を国に要望している。また現物支給制度も大きな阻害要因である。避難者に居住移転の自由は無いのだろうか。施策の客体として選択の自由が奪われていいものだろうか。お世話になって居るのだから文句はいうなということではストレスも貯まるのである。国際基準では避難者の保護は国家の責任であり、避難者の消息を探ること、帰還や再定住を図ることも行政の責任だということが国際的合意である。
(つづく)
第3部 「法の課題」 (1)
法の課題というよりは、これまでの議論で落としてきた話題を集めたものである。避難者の支援問題、原子力災害、個人情報保護問題を論じる。終章で災害対応の当事者としてボランティア、女性、自治体の問題を取り上げる。東日本大震災では被災後1年が経過した時点で、避難者の数は34万4290人に及び、県外避難者は7万2892人であるという。原発避難者は長期間にわたって帰還が困難であると予想される。福島県では被災後1年で被災関連死は764人に及び、殆どが避難生活中のことであった。被災者の住まいは「避難所」から「仮設住宅」そして「公営住宅」をたどるが、それ以外の人々(自主避難者、県外避難者など)は法的支援の埒外に置かれる。避難者の数さえ把握していない。原発災害避難者に対して「避難住民に係る事務処理特例および住所移転者に係る措置に関する法律」(2011年)が成立した。これは行政の事務処理に過ぎず、避難者の便宜を図ったものではない。多くの自治体では入居対象者を原発避難者に限定しているが、松本市などは子ども女性の自主避難者にも門戸を広げている。自治体の対応に格差が見られるは災害救助法の運用の仕方にある。その根拠は厚生労働省が積極的な避難者の保護指針を出していないことである。第2に災害救助法の求償の仕組みがうまくいっていないためである。避難地でかかる費用の請求先が被災自治体に振り替える手続きに齟齬をきたしていることと、被災自治体が救助費の上限を抑えていることであるという。多くの避難者を受け入れている新潟市、山形市、米沢市が災害救助法の基準外になっている避難者支援費用の助成を国に要望している。また現物支給制度も大きな阻害要因である。避難者に居住移転の自由は無いのだろうか。施策の客体として選択の自由が奪われていいものだろうか。お世話になって居るのだから文句はいうなということではストレスも貯まるのである。国際基準では避難者の保護は国家の責任であり、避難者の消息を探ること、帰還や再定住を図ることも行政の責任だということが国際的合意である。
(つづく)