ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート マックス・ヴェーバー著 「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」 岩波文庫

2012年11月17日 | 書評
営利の追求という近代資本主義の誕生とピューリタニズムの宗教倫理との結合 第3回

序(3)
 宗教特にキリスト教の宗派については、よく分からないが本書を読む上で最小限必要な教科書的なレベルだけは確認しておこう。下の図にみるように、1517年以降、マルティン・ルターらによりカトリック教会の改革を求める宗教改革運動が起こされた。プロテスタント(Protestant)は、宗教改革運動を始めとして、カトリック教会(または西方教会)から分離し、特に(広義の)福音主義を理念とするキリスト教諸派の総称である。日本ではローマ・カトリック(旧教)に対し、「新教」(しんきょう)ともいう。、「プロテスタント」は、特定の教派・教団を指す名称ではなく、神学や教理解釈がそれぞれ異なる多数の教派の総称であって、プロテスタント全体の代表者や最高指導者のような存在(たとえばカトリック教会の教皇)や、プロテスタント全体を統括するような統一教団組織はない。(蛇足) 最初期のプロテスタントであるアナバプテスト、ルター派、カルヴァン派、ツヴィングリ派、聖公会などは互いの影響は受けつつも、それぞれ全く別個に成立したもので、最初から統一されたプロテスタントは存在しなかった。ルターらは洗礼と聖餐以外の教会の諸秘跡を排し、聖書に立ち返る福音主義を唱え始め、また西方教会では、それまでほとんどラテン語でのみ行われていた典礼や聖書をドイツ語化するなど、著しい改革を行った。このため次第にルター派は北ドイツからドイツ全体へ広まり、その信者は増加していった。ルターは信仰義認という教理を提唱した者としてよく知られている。ルター派の特に信仰義認は、カトリック教会のトリエント公会議などにより排斥された。これ以上のルター派の内部分派については深入りしないことにし、本書第2章のⅠ「世俗内的禁欲の宗教的基盤」で再度分派の教義に立ち入ることにする。
(つづく)

読書ノート 宮崎勇・田谷禎三著 「世界経済図説」 第3版 岩波新書

2012年11月17日 | 書評
世界金融危機・ユーロ危機を経た現在の経済状況を図説から読む 第4回

1)世界経済の輪郭 (2)
⑥技術
 財やサービスの生産は、原材料、労働力、資本が揃って行なわれるが、その効率を決めるのは技術である。ただし経済学的に技術水準を評価することは難しい。またキャッチアップ国にとって技術を真似することは日本、中国の例を見るまでもなく極めて効率がいい。2008年度の国の研究開発費のGDPに占める比率は日本が一番高く3.8%、韓国が3.2%、アメリカが2.8%、ドイツが2.5%であった。中国は1.4%である。特許出願数は日本が多くて1位であるが、研究成果の発表ではアメリカのシェアーが半分以上でその他の国は10%以下である。
⑦交通・情報通信
 飛行機による旅客輸送が激化する安値競争で伸び悩むなか、船舶による貨物輸送が1990年以降急速に増加した。携帯電話とインターナット利用者の急速な増大は経済的社会的に大きなインパクトを与えた。中国、アメリカ、インド、日本などでは人口に比例して利用者数は増え続けている。中でもインターネットの普及は革命的なもので、産業構造、物流構造、金融構造などを一新しつつある。眠らない世界では24時間体制で証券取引、金融決済、商品取引が行なわれている。
⑧社会資本・国民生活
 社会資本とはインフラのことで、鉄道、道路のキロ数、空港数、発電量、病床数や医師数、携帯・インターネット利用者数で見ると公的資金を投入した公共事業が必要であった。戦後日本は多額の投資を行なってきたが、国土が狭い点を差し引いても欧米先進国に比べると整備水準はまだ低い。社会保障や国民生活の点では日本は欧米の水準に追いついており、平均寿命や発電量では勝っているが、労働・生活の安定性などで不足していることはいなめない。国民生活指数などは急速にアメリカ化してきた。
⑨政治と経済
 もともと政治と経済は不可分で「衣食足りて礼節を知る」「貧すれば鈍する」のとおり、経済的発展のためには政治的安定が不可欠である。その成功例が中国であったといえよう。中国の今後の課題はこれまでおろそかにしてきた社会保障と環境保護問題の解決であろう。家計の貯蓄率という点では、高貯蓄率・高生産性を誇ってきた日本は2000年以降急速に貯蓄率が減少した。家計に占める貯蓄率はフランス・ドイツが10%以上であるが、日本はこの10年で4%以下となりアメリカ並みとなった。2000年以降の構造改革によって、賃金が下がり、消費が減退し、労働環境の劇的悪化により労働生産性も減少した。
⑩国際化の進展
 冷戦が終って国際化と共生の時代に入った。人、物、金、技術、情報は国境を越えて移動する「国境なき市場経済」の時代となった。政治的対立に替わって経済の時代が到来した。経済が世界的規模で一体化する一方、国家民族の対立が先鋭化してきたことも、政治と経済の矛盾をはらんだ展開となっている。
(つづく)

筑波子 月次絶句集 「高雄神護寺」

2012年11月17日 | 漢詩・自由詩
高雄仙境又登臨     高雄の仙境 又登臨す

神護城鐘物外心     神護城の鐘 物外の心

石磴蒼谿高岸錦     石磴蒼谿 高岸の錦
 
院前黄菊一籬金     院前黄菊 一籬の金


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(韻:十二侵 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)