ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 真野俊樹著 「入門 医療経済学」 中公新書

2008年08月22日 | 書評
医療制度を考える上で、医療経済学的視点は欠かせない 第7回
序(1)

 経済とはサミュエルソンがいうように「希少な資源が、ある目的のために、どのように配分されるか追求する学問」であるだろう。したがって医療経済学は人間を対象とした医療と云う行為を経済行為(経済財)とみなし、それを学問として分析してゆこうと云う立場である。医療を支える基礎には医学、薬学、看護学がある事は誰しも理解できる。医学のなかに臨床医学と社会医学(衛生・予防・法医学)があるが、社会医学は主流ではないし、医療経済と云う分野も存在しない。経済学は合理的経済人(経済的な目的によってのみ行動する)を仮定するが、医療関係者のなかでは「医は仁術である」とか「命と合理性は無関係である」と云う観念が支配的である。といいながら「医は算術である」と云う風に儲けている人も多い。

読書ノート ポール・ポースト著 山形浩生訳 「戦争の経済学」 バジリコ

2008年08月22日 | 書評
戦争のケインズ型公共投資説を検証する 第23回
第7章 テロリズム (1)

テロの定義は難しい。アメリカ国防省の定義は「計画され、政治的に動機付けられ、非戦闘員を標的し、小さい集団によって実施され、直接的被害者を越えた影響を与える、2カ国以上にまたがる暴力行為」である。米軍の東京・大阪空襲や広島・長崎原爆、NATO軍のコソボ空爆は非戦闘員殺害を目的にしたテロかもしれないし、戦争継続意志を奪うテロといえる。北朝鮮の謀略部隊が他国で起した爆破事件がテロなら、アメリカのCIAも中南米や中東で結構テロをやっているではないか。米軍や自衛隊施設を狙った自爆テロやロケット砲はテロではないようだ。戦争は政治の延長だとすれば全てテロになる。すべての条件を同時に満たす暴力行為てなんだろう。ベトコンゲリラは戦闘員を狙っているのでテロではない。と云うことでアメリカ人が定義するテロとは9.11同時多発テロを云うようだ。しかしアメリカは報復として国家アフガニスタンを攻撃した。これは国家間の戦争ではないか。

文藝散歩 「御伽草子」 市古貞次[校註] 岩波文庫

2008年08月22日 | 書評
室町時代以降の庶民文学の始まり  第23回
浦島太郎


余りに有名な御伽話であるが、亀が女になって浦島太郎を竜宮城に案内して夫婦として楽しく過すのである。竜宮城は海の中ではない。鯛やひらめの舞い踊りもない。乙姫様もいない。三日ではなく三年過して帰ってみると七百年経っていた。煙をあびて浦島太郎は鶴になり、亀の姫と長寿の神となった。箱に隠したのは七百年と云う寿命であった。童話の方はたわいもない話だが、この話はいやに教訓じみている。「鶴は千年、亀は万年」


自作漢詩 「訪香山」

2008年08月22日 | 漢詩・自由詩


青嶂香城紫翠     青嶂香城 紫翠重なり

白雲繞塔少人     白雲塔を繞りて 人蹤少なり

空山竹雨時聴滴     空山竹雨 時に滴るを聴き 
   
出壑松風別起     壑を出て松風 別に峰を起す
 

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(赤い字は韻:二冬 七言絶句仄起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)