17世紀オランダの風俗画家フェルメールの全作品 第10回
フェルメール絵画7: 「小路」(推定1650年) (53.5×43.5cm) オランダ アムステルダム国立美術館
フェルメールの絵には風景画といえるのは生まれ故郷を描いた「小路」と「デルフト展望」の2枚しかない。2枚とも大変な名作である。小さな画面に大きな世界を表現するのがうまい。つまり極めて精緻な絵である。そこには穏かなオランダの小都市デルフトの日常世界が描きだれている。小さな絵の中にも、少女、働く女性があかいれんが壁と白い漆喰の色のコントラストの中で往来するのである。壁から暗い屋根を経て自然と空へ向かう遠近法は見事である。風俗画の延長からこのような均整の取れた風景画を描けるフェルメールの腕は確かである。さまざまな素材感が描き分けられている。レンガ、金属の取手、漆喰、木製の雨戸などの質感が一目でわかるのである。人物に用いられた色彩の配置も見事である。少女のくすんだ黄色と縫い物をする女の袖口の黄色と赤、掃除をしている女の赤茶色。「小路」がデルフトの何処を描いたのかについては諸説紛々で、とにかくフェルメールの生まれた家の近くであろうか。フェルメールの生家とされるところは宿屋「飛ぶ狐亭」といわれる。