ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

硬直した拉致問題は、圧力では解決しない 総合外交の中での解決を

2007年09月28日 | 時事問題
asahi.com 2007年09月28日06時27分
日朝関係改善「工夫が必要」 佐々江外務省局長 佐々江賢一郎・外務省アジア大洋州局長は27日、「(核問題で)6者協議が進展する中で、日本としての大きな目標を具体的な形で進展させるためにどう工夫していくかが求められている」と述べ、福田政権への交代を受け、日朝関係改善のための打開策を模索する考えを示唆した。6者協議全体会合の開始前、記者団に語った。

安倍政権の「対話と圧力」外交では、拉致問題は暗礁に乗り上げたまま 頭を使え
自尊心と自立心の高い北朝鮮をあいてに圧力を繰り返すだけの安倍外交は既に破綻している。拉致被害者家族会の焦燥と無念さは察するに余りある。政府はもう少し頭と金を使うべきだ。アメリカの圧力に他愛も無く屈するのは日本政府ぐらいでしょうね。福田首相に期待するのは、日朝国交正常化交渉を開始し、戦争賠償問題の過程で、朝鮮人強制連行について謝罪をしてから拉致問題を討議すべきである。

労働統計  格差拡大 

2007年09月28日 | 時事問題
asahi.com 2007年09月28日08時00分
年収200万円以下、1千万人超える 民間給与統計
 民間企業で働く会社員やパート労働者の昨年1年間の平均給与は435万円で、前年に比べて2万円少なく、9年連続で減少したことが国税庁の民間給与実態統計調査で分かった。年収別でみると、200万円以下の人は前年に比べて42万人増え、1023万人と21年ぶりに1000万人を超えた。一方、年収が1000万円を超えた人は9万5000人増加して224万人となり、格差の広がりを示す結果となった

asahi.com 2007年09月28日08時42分
8月の完全失業率3.8% 前月比0.2ポイント悪化
 総務省が28日発表した労働力調査によると、8月の完全失業率(季節調整値)は3.8%で、3.6%だった7月より0.2ポイント悪化した。男性3.8%。女性3.7%。完全失業者数は前年同月より23万人少ない249万人、世帯主の失業者数は54万人だった。また、厚生労働省が同日発表した8月の有効求人倍率(同)は、前月を0.01ポイント下回る1.06倍だった。

福田内閣の使命は、小泉・安倍内閣の負の遺産である社会的不公正の縮小とセーフティネットの修復
小泉・阿部政権が残したものは、経済面では利益政治を超えて新自由主義政策が大きく進展した。財政赤字の削減を民活利用で克服して経済成長を可能にした。しかし2006年度より野党は一斉に格差問題を追及した。規制緩和によりライブドアーや村上ファンド事件のような成金の犯罪も発生し、耐震強度偽装事件は建築法緩和の負の成果であろうか。そして何よりセーフティガードの破壊が進行した。老人福祉、生活保護、健康保険、年金の負担増と切り捨て、偽装請負や派遣による非正社員若年労働者の貧困化など社会の貧困化を格差が著しく進行し、公共事業に頼っていた地方は疲弊して地方格差も拡大した。このような規制緩和と財政経費削減に対する小泉首相政策決定と政治手法は明らかに排除の論理(切り捨ての論理)に立っていた。「抵抗勢力」を敵とする劇場型政治手法である小泉首相のポピュリスト的手法もやはり排除の論理である。社会がこのままいけば分断され崩壊すること請け合いである。少数の富裕層と圧倒的多数の貧困層に分断された社会が繁栄を持続できたためしは無い。池田隼人首相は「寛容と忍耐」で日本の高度経済成長を導いた。小泉首相の後の政治家はこの社会的ひずみを取り除くことが課題であろう。

京都の近代建築物文化財 「NTT西陣別館」京都市上京区油小路中立売下ル

2007年09月28日 | 京都案内
国登録有形文化財 建築年 大正10(1931)年  設 計 岩本禄(逓信省営繕課)
この建物の設計者・岩本は日本近代建築の黎明期、大正時代において、建築の芸術性をひたすら追い求め、わずか3点の作品を残したのみで天逝した天才的な建築家である。この建物は彼の現存する唯一の建物でもあり、文化的・学術的に非常に高く評価されているそうです。

読書ノート 吉本隆明・梅原猛・中沢真一鼎談 「日本人は思想したか」  新潮文庫

2007年09月28日 | 書評
体系的な思想はないが、歌や宗教などに日本人の思想の流れがある。第二回

まずは日本人の「思想」の土台に思いを馳せてみよう。中沢氏は冒頭で「たしかに日本人は体系的で普遍的な思想というものは創らなかったけれども、具体性と結びつく形で思想は表現してきた」と結論する。体系的思想はないが日本独特の思想は具体性を以って表現したというのだ。ではその日本独特の思想とはなんだろうか。梅原氏は「西洋の哲学のようなものを求めても日本にはない。僅かにあるとしたら仏教か儒教である。しかし歌論には非常に緻密な感情論がある」という。吉本氏も「思想を思想自他として抽象的に述べたものはない」といい三者ともに「日本には体系的抽象的思想は生まれなかった」という点で一致した。日本国家成立期を律令制に求めると、それ以前に存在していたアイヌなどの縄文人文化と共存する時期もあったし征服する時期もあった。稲作弥生文化の大和朝廷が被制服原住民・部族・国の全てを完全に滅ぼしたのでなく、神道の禊、祓いは征服過程での儀式であったがかなりの縄文的文化や言語も内包してきた。例えば万葉集の枕詞にはアイヌの言語が二重構造で入り込んでいる(枕詞を古代朝鮮語で解釈する人もいるが)し、「一切の生きとし生きるものはあの世へ行ったら又生まれ変わってくる」というのはアイヌの考えである。これが狩猟採取時代人の共通の意識だったと梅原氏は言う。和歌には枕詞以外にも訳のわからない部分が存在するが、それは言語体系やリズム感の違う部族間の調整であったのであえて異質な物を残したのではないか。本居宣長も「和歌を通じて日本人の思想が出来上がるのだ。体系なんかもっていないからこそ日本思想なんだ」といっている。梅原氏の歌論は一貫して「魂鎮め」で、新しい政治変動に破れたものの気持ちであるという論を展開されてきた。



文藝散歩 吉本隆明著 「源実朝」 ちくま文庫

2007年09月28日 | 書評
鎌倉幕府三代将軍源実朝の惣領としての悲劇と歌人の魂 第七回

Ⅳ 祭祀の長者
文学的な「増鏡」という史書では実朝を「父にも優れた器量を持つ」と随分褒めちぎっているが、少なくとも将軍職としてのある面では実朝は威力があったのかもしれない。実朝の将軍職としての役割とは、実朝は自分を非政治的な象徴と自己限定した形跡がある。実朝は鎌倉幕府の祭祀権の所有者としてのみ、頭領の役割を果たし政治は北条家に全て任せるというところに自己限定したといってよい。鶴ヶ岡八幡宮、勝長寿院、永福寺、阿弥陀堂、薬師寺、法花堂(頼朝の霊廟)の寺社奉行をさだめ、箱根・伊豆権現二所詣でなど頻繁に寺社めぐりを繰り返している。坂東武士は土地と命をやり取りする非情の世界で其処には中世的な迷信や仏道にすがる契機があった。実朝には非情な世界を収攬する人格があったようだ。関東武士団は一族の軍事権と祭祀権を担う存在であった。これは古代の海人部の伝承である。関東の東海・房総に住み着いた民族は古くは東南アジア、中国南部からきた海洋民族であった。関東内陸部を開いたのは高句麗からの帰化民族である。そこから鎌倉幕府の宗教的中心は、「権現」、「明神」、「八幡」信仰で海人部や土着の国神系の祭神であった。