きょうのこと。
京王線の某駅にて、二十代とおぼしき若者を「キレさせて」しまった。
いろいろ考えること、反省することがあったので、書きます。
まず、最初に書いておくと、ぼくはわりと「禁煙の場所での喫煙者」に、「注意を喚起」「やめてくださいとお願い」する人だ。
むかし、それを言ったら傘を突き立てられそうになった事件があったけれど、以来、話しかけのスキルも上達して、トラブルに発展することはまずない。
スタンスはあくまで「ここ禁煙ってご存じですよね」(注意の喚起)、「控えて頂けませんでしょうか」(お願い)の二点。
(追記、ここで「注意の喚起」にあまりに引っかかる人が多いみたいなので、コメント。このまま同じ言葉で言っているわけではないです。禁煙という情報を共有できていると思われる場合、「禁煙ってご存じですよね」って聞かずに済ますことは多いです。でも、実際に「知らない」人はいるのです。例えば首都圏のJRで完全禁煙のところってむしろ少ないし、路線や駅によってローカルルールは違います。禁煙である事実を認識しているのか、なんらかのカタチで確認した方がいい時って、あります。それくらいの意味。いずれにせよ、「禁煙」という情報は共有しとかないと、話は始まらないので、ここに書いてます)
なぜなら、たとえば駅構内でも、禁煙というのは、目下のところ「お願い」マターだと思うから。
だって、駅側も「お願いします」とか「ご協力願います」とか、あくまでお願いの態度でしょう?
もちろん、今は健康増進法ってやつがあるけれど、オープンエアの喫煙で、他の人にどれだけの健康被害があるか分からないし、かりに法を根拠にするにしても、その時、法的な力を行使するのは、ぼくではない。
だから、あくまで、おねがい、なのだ。
で、見かけるたびに、カジュアルに言うことにしているので、たぶんここ数年で百や二百では済まないくらい言い続けた中で、はじめてのトラブル。
若者は金髪、小柄で、眼鏡君。貧相とはいえ、わりと身なりには気をつかっている方……というかんじ。
たばこ吸うのを控えて頂けますか、という発言に対して、タバコをホームの外(路上ですね。当然通行人がいます)に放り投げた上で、いきなり体当たりしてきた。
その後の五、六回、平手で小突かれ、ああだこうだと非難される。
覚えている範囲で……。
☆うるせいな、税金はらってんだよ。もんくあっか。
☆おまえ、リーマンだろ。年収いくらだよ。おれより、税金払ってんなら話きいてやるよ。
☆仕事で疲れてるんだよ。明日金沢に出張なんだよ。ふざけんじゃねえよ。
☆おまえおかしいんじゃないの。おれがもっとヤバい奴だったらどうするわけ。
☆正義漢ぶってんじゃないよ。
駅員が止めに入った後は、たまたまホームに入った電車を蹴飛ばしたり、器物に当たり始める。
さらにその後、ふたたびぼくに張り手。
なんだか、駅員さん、腰砕けだったのだ。
ぼくと眼鏡君の「間」に体を入れようともしない。
それどころか、ぼくが一方的に「やられている」のをみて、「お互いに謝罪して、ことを収めて」などという仲裁をしてくれるくらい。
結局、警察沙汰になることになって、警官が呼ばれたのだけれど(だれが呼んでくれたのだろう)、ぼくはちょいと待てない用事があったので、十分ほど中座してそれをこなして戻ると、「逃げられた」。
駅員いわく、「相手のお客さんは、ついかっとなってしまい申し訳なかった、とくれぐれも伝えてくれるようにとあやまっていた」とのこと。
当然、住所氏名年齢など、わからずじまい。
なんか、張り手され損だったなあ。
あ、結局、警察は一応来ましたよ。
どうしたいか、などと聴かれて、別に実害はないし、捜査してもらうような話ではないから、ただ、そういう事件があったという事実だけをファイルしてもらいたいと伝えた。
というような経緯。
さてさて、これをあえて書いたのって、いくつかの理由があって、なにはともあれ……すごくショックだから。
ことを荒立てずに、お願いするスキルを磨いてきたつもりが、今度ばかりは通用しなかった。なぜだろう。
と後で考えたら、すごく単純な理由に思い当たった。
眼鏡君、携帯で話し中だったのだ。
場合が場合なので、声を掛けたけれど、話し中なら、こっちの言っている「お願いニュアンス」も伝わりにくい。それにくわえて、通話を妨害されて傍若無人に感じられたのだろう。
もちろん、そこから先、暴力に訴えるというのは個人の資質やら、彼がその時に感じていたストレスやら、もろもろのファクターが悪い方向に作用したというふうにしか言えないのだけれど、とにかく、ぼくが「声を掛ける」という基本線は譲らずに、できることといったら、携帯電話が終わるまで待つ、ことくらいだったのかなあ、と思った次第。
なんか、自分のサガが、悲しいような、申し訳ないような(ぼくのことを心配してくれる人に対して)。
対話なきところに未来なし。
もしも、人に殺されることになるなら、最後の言葉は「話せば分かる」でありたいと願っているぼくは、たしかに眼鏡君が言うとおり、「おかしい」のかもしれない。
そうそう、もう一点。
眼鏡君はカジュアルな格好で、ぼくのことをリーマンと言うあたり(ぼくもTシャツにジャケット+ジーンズ)、通常の企業社会での経験に乏しいと思われる。にもかかわらず、十歳以上年上の「リーマン」よりも、高収入を得ているという自負を持っているらしい。
さらに、風体などを勘案して、なんとなく、ある種のIT系だとか、ネットに明るい仕事をしている可能性があるんじゃないかと想像した。別にそうではなくても、ネットを公私にわたって活用するのが当たり前のクラスターである、と。
というわけで、このエントリ、まわりまわって、その眼鏡君の目に触れる可能性がある。
で、もしも、そうなったら、コメントいただけませんか。
ぼくも、あの時、何が起こったのか知りたいです。
別にあなたのこと、「もっとヤバい」奴だなんて、最初から最後まで感じませんでした。
きっと、大雑把にいって「普通」の人なんだろうし、仕事もそこそこやって、私生活も充実しているんでしょう。これは、なんとなくそう思ったレベルだけれど、最初からそう思ってました。さすがに、本当にヤバいと感じるような相手なら、話しかけることすらしなかったと思うし(それくらいの、リスク管理はするのです)。
にもかかわらず、そんなあなたが、キレて、人を小突く、電車を蹴飛ばす、罵詈雑言誹謗中傷を浴びせかけるという行為に出た。
たぶん、ぼくがそういうところに追い込んでしまった。
それって、何だったのか知りたいです。
もしも、駅員が言っていた「かっとなって申し訳なかった」というのが本当なら、ぜひ、対話に応じて下さいな。
以上。
追記
このエントリ、読まれている……。
というわけで、素早く過去のエントリにもリンク。ぼくの喫煙問題についての基本的な立場。
たばこ問題を考え直す(上)
たばこ問題を考え直す(中)
たばこ問題を考え直す(下)
さらに追記。
この事件から三日ほどすぎて、冷静になってみると、このエントリ単体でみると「だから最近の若者は」という、若者叩き言説にそのまま活用されてしまう可能性があると、今更気づいた。
そこで、明記。
書いた本人は、そのような意図はなく、また、この事件の前も後も、とりたてて「若者」が危ないとか、おかしい、とか一般化して考えておりません。
たまたま、この時、出会ったのが「若者」だっただけです。
エントリのタイトルに「切れる若者」という文言を用いたなら、文中でそれに対するフォローも必要だったろうに、そこまで気が回っておりませんでした。