川端裕人のブログ

旧・リヴァイアさん日々のわざ

本格疫学小説『エピデミック』と『科学の最前線を切りひらく!』

2020-03-12 00:30:21 | 日記

「新刊」2点のお知らせです。

世界初でたぶん唯一の本格疫学小説『エピデミック』電子書籍版と、WEBナショジオでの連載からのセレクション『科学の最前線を切ひらく』(ちくまプリマー新書)が相次いでリリースされましたので紹介します。

1)本格疫学小説『エピデミック』
 2007年に角川書店から刊行し、のちに文庫になって、さらにちょっとは増刷したものの、絶版になって久しかった長編です。タイトルの通り感染症について扱っています。この度、なんとか初の電子書籍化することができました。すでに各電書サイトで取り扱いが始まっています。かろうじて「新刊」と思っている次第です。

 以下、把握している範囲のリンクです(他にもあるかもしれません)。

【Amazon Kindle】 
【楽天ブックス kobo】 【honto】 
【ブックウォーカー】
【Reader store】  【booklive】

 感染症小説は、ウイルス学者や医師などが主役を張るのが定石ですが、ここでは、ふだんは黒子であるフィールド疫学者にスポットライトをあてています。感染制御の専門家で、彼ら彼女らが適切に活躍すると感染は拡大する前に収束してしまい、まったく感謝されないので(起きなかったことに感謝するのは難しい)黒子の役割です。
 今、COVID19が世界的な広がりを見せており、ふだんは見えないはずのフィールド疫学者が見えてしまうような局面です。政府の専門家会議から出た見解で、「閉鎖空間」での感染リスクが高いことが示されたり、クラスター対策が功を奏する可能性を示したりしてるのは、本来は目立たない疫学者たち(フィールド疫学者や、感染症モデルの疫学者)が活躍しているからです。
 ふだん使われない語彙や概念で、物事が進んでいくために違和感を抱く人も多いかと思いますが、『エピデミック』を書いた時のぼくも同じでした。充分な情報がない現場で、待ったなしの判断が求められる時に、それでも手持ちを情報からできるうかぎり最良の科学的な根拠を導くツールセットは独特のもので、ぼくはフィールド疫学のあり方に魅了されました。そして、なんとか彼ら彼女らの世界を表現しようとしました。
 この時期ですので、単純にエンタテインメントとして読むことが難しくなってしまったかもしれませんが、それはこの手の題材にとってはしばしばあることです。


2)『科学の最先端を切りひらく!』(ちくまプリマー新書)
 https://amzn.to/2VuNIUH

 WEBナショジオで連載中の「研究室に行ってみた。』からのスピンオフです。連載から6人の研究者をピックアップして、書籍用に再編集しました。各研究者より、「若者」へのメッセージのエッセイもついてます。
 登場するのは、この六方です。

 宮下哲人(脊椎動物の起源研究)
 荒木健太郎(雲研究)
 佐藤圭一(サメ研究)
 四本裕子(認知神経科学、知覚心理学研究)
 高田秀重(マイクロプラスチック研究)
 冨田幸光(古生物学、日本の絶滅哺乳類)

 ちょっと世代を限定する言い方かもしれませんが、これは「ロッキング・オン誌の2万字インタビューの研究者版」です。きっと楽しいですよ。少なくとも、ぼくはいつもとても楽しいです。

 それでは、また!