この写真はいつだったか、娘が勝手に撮っていたもの@ニュージーランド。
それはそれとして、ずいぶん前に世田谷区の小学校P連に送った文書を公開します。
当時、世小Pのウェブサイトには、「ご意見・ご要望の募集」というコーナーがあって、そこから会員が(いや、会員ではなくても)、質問できたり、意見できたりする窓口がありました。
この文書は、それを通じて送ったものです。
現在、ぼくは非会員ですが、当時は会員でした。
提出後、「常任理事会で協議して必ず回答する」というメールをいただき待っていても一向に返事がないため、再質問したところ、「今後の参考にさせていただく。ウェブサイトからの質問要望は廃止するので、今後は単Pを通じて質問を「あげて」ほしいという主旨の回答をいただきました。
P連役員や常任理事の殺人的な忙しさを考えれば、こういう反応になるのは無理もないと理解しています。
しかし、今も、ぼくはほとんど同じ疑問やら、考えやらを持ち続けているので、ここに再掲しておきます。
今、PTA会員ではないので、世小Pの会員ではありませんが、世田谷区に住む小学生の保護者として、世小Pと無縁でいることは不可能です。世小Pは実質的に世田谷の保護者代表と扱われているがゆえに。
そこで、ぼくにできる手立ては、こうやって、文書を公にし、どなたかほかの世田谷の保護者の方に見つけてもらうことかもしれないと考えました。
また、ほかの地域の方にも読んでもらい、ぜひ、ご意見をいただければとも思いました。
長文ですが、一気にアップいたします。
以下、文書本文。
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世小P役員のみなさま、常任理事のみなさま
カワバタヒロトと申します。
世田谷区立小学校の現役PTA会員です(注・当時)。
昨年度(注・文書提出時、平成20年度3月時点)、単Pの本部役員をつとめました。
また、その間、各地のPTAの事例を調べ、歴史を掘り起こし、また、関係者・経験者へのインタビューなどを重ねて、「PTA再活用論」(中公新書ラクレ)という本にまとめました。
そろそろ1年度がおわりが近づき、次回(第二回)理事会、新年度の総会に向けて、さまざまな準備をされていることと思います。そこで、私が実体験・取材を通して考えてきたことに即して、いくつか意見・提案・問い合わせをさせていだたきたくメールさしあげます。
世小P役員や常任理事を務めたことがない者ではありますが、世田谷内外の多くのPTAや行政の取材を通じて見えて来たことも多々あります。中には見当違いのものもありましょうが、同じ地域に住まいつつ、やや違うルートでPTAについて認識を深めた者の意見として、参考にしていただけましたらさいわいです。質問にもお答えいただけますとさいわいです。
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まず、「問い」の設定、です。
「役員のなり手がなかなか見つからない」「役員を引き受けたら仕事・家事・子どものケアに穴があくほど多忙」というのは、日本全国共通の悩みのようですが、世田谷区は、かなり「きつい」部類に入ると感じています。
私自身は副会長を務めた1年間に166日の「出勤」、400時間を超える拘束時間がありました。これは仕事のみならず、子どもにかける手間、世話のたぐいにも影響を与える負担でした。
世小P役員や常任理事のみなさんはいかがでしょうか。
おそらくこれよりももっと多くの時間を費やしてらっしゃるのではないでしょうか。
役員を務めた期間、わたし自身、多くのPTAの「よいところ」を目の当たりにしつつも、やはり、自分自身の子どもに対して後ろめたさを感じざるをえませんでした。
と同時に、世小Pの活動を優先するあまり、単Pの活動が「雑になる」傾向が、わたし自身にあり、それも本末転倒と感じていました。
○役員や委員の子どもにしわ寄せがいかず、本来一番大事な単Pの活動をするめたにはどうすればよいでしょうか。ここには世小Pと単Pの関係も絡んでくると思われます。
○また、単Pの役員よりもさらに大変といわれる世小P役員や常任理事が、みずからの生活を破壊せずに、「やりがい」の範囲で仕事をするにはなにが必要でしょうか。
この2点を「問い」の中心に据えつつ、議論を展開します。
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まず、わたしの現状認識です。
「問題点」を列挙しますので、ネガティブに響くと思われますが、その点はご了承を。「よりよくするため」にはこの作業が必要です。
また事実誤認がありましたら、ご連絡いただけますとさいわいです。
○世田谷区立小学校のPTAの多くは自動加入になっており、入会申し込みを形式上書く場合も「入らない」選択肢がない場合が多いようです。「自ら学ぶ」意識が希薄なまま、義務の団体として認識されることになってしまっています。
○それゆえ、26000人ともいわれる世小P会員には、自分が会員であることを知らない人もたくさんいます。むしろそちらの方が多いかもしれません。
○役員は毎年、64校で600人前後。どの年をとっても、これくらいの人たちが非常な負担を強いられているわけです。自ら進んで活動に参加している人でも、子どもには負担がかかっている可能性があります。
○PTA活動に熱心な方の場合、ある意味でPTA依存のような精神状態になることがあります。これは自分の経験に即してそう感じています。役員になると、「一目置かれ」ますし「必要とされている」「たよりにされている」実感があります。また、同じ境遇の「仲間」たちとの結束も強くなります。悪いことではないはずですが、それゆえに、ついがんばりすぎてしまうことがありました。そしてその後で、親としての軸足がぶれていたと反省するに至りました。
○単Pでの役員決めの際の「人権侵害」が日常化しています。本当はこんな強い言葉は使いたくないのですが、あえて、それほどの問題であると指摘いたします。役員決めの際、時には委員決めの際にも、「仕事は理由にならない」と言われることは常態となっていますし、それでもできないなら「出来ない理由」を開示しないと誰も納得してくれない、という悩みをよく相談されます。メンタルな病気ですとか、目に見えにくい「理由」はなかなか受け入れてもらえないことがあり、実際に毎年、追いつめられてしまう保護者が少なくありません。その一方で、役員を選ぶ選考委員会、推薦委員会などのメンバーも非常なストレスにさらされています。
○ましてや、地域との連携がますます求められる今、P連、PTAの「再設計」を行わなければ、さらにたいへんなことになるのは目に見えています。
○ちなみに、わたしが属するブロックのPTAではだいたい運営委員会が年六回です。一方、世小Pの活動がブロック会8回、理事会2回。単Pで効率化した運営を目指しても、世小Pも足並みをそろえて「合理化」していかないと限界があるのです。世田谷のように多くの学校がある場所では、「P連の組織維持のための活動」が非常に煩雑になる傾向があります。
○世小P役員や常任理事は、さらに輪をかけて「大変である」とわたしの目には映っています。世小P役員、常任理事の負担も大いに減らせないものかと切に願う所以です。
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現状認識を受けて、大きな方向性として、
○役員の時間拘束、精神負担が少なく、また、単Pの仕事に専念できる環境づくりが必要。
○そのためには、世小P活動の整理も必要。世小P役員、常任理事、広報担当など、すべての立場の人たちの時間拘束、精神負担を画期的に改善する必要がある。
との2点を挙げたいと思います。
これらのことは、分ちがたくつながっています。
これらを解決するには、まずは世小P自体の立ち位置を再確認する必要があると思います。
○PTA活動の主体は単Pであること。
○世小P活動への参加が任意であることを再確認すべき。年単位で、参加するか休会するか、選択できることを確認すべき。
これらの2点についてどうお考えでしょうか。
単位PTAが任意参加の社会教育関係団体であるとのと同様に、世小Pも同じく社会教育関係団体として位置づけられていると理解しています。すべての社会教育関係団体は任意に構成されたものですので、規約に明記されていなくても、「参加が絶対」ではないと知らしめるべきだと思うのです。
といいますのも、世小Pはしばしば、単Pの「上部団体」として意識され、それゆえ、様々な事業が義務と化し、硬直化する原因となっている感じているからです。
なお、上記の方法を実施すると常任理事校の輪番制は成立しにくくなりますが、しかし輪番制が世小Pを「義務」にしてしまっている可能性が高いと考えます。世小P自体の業務を減らすことで、引き受けやすい世小P役員になれば、義務ではなく機会として人を呼び込むことはできるでしょう。
これらの論点についてぜひ、常任理事会にて話し合っていただきたいと考えます。
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さらに、個別の活動について述べます。
くりかえしますが、わたし自身世小P役員や常任理事の経験はありません。
単Pでの実体験や取材を通じて知り得たことと照らし合わせ述べますので、参考にしてくださいますとさいわいです。
総務広報部
○広報誌は本当に必要でしょうか。ほとんど読まれていない現実があるのではないかと懸念します。実際、身近なところで「P広」の存在を知っている人は、役員経験者くらいしかないのです。役員経験者ですら「それなに?」という人が半数以上という惨状。これは私のまわりだけのことでしょうか。広報誌は各校PTAから8名もの担当者を出すだけの効果をあげているのか。必要性の再検討をお願いします。
○また、世小Pの広報担当は、毎年メンバーが変わり諸事情を理解する間もなく実務に投入されるため、経験豊富なP連幹部からの「注文」に多大なストレスを感じることがあると聞き及びます。年度により違いもありましょうが、そのようなことが起こりやすい構造があるかどうか検証をお願いいたします。私の誤解であることを祈るばかりです。
さらに、現在の広報紙作成についての対案を述べます。
○広く立候補者をつのり、「やりたい人」に任せるべきでは。あるいは廃止すべきでは。
○廃止する場合は、現在の100万円ほどの予算を、各校PTA室にインターネット環境を整えるための補助に使うのはいかがでしょうか。64校PTAが、順番に月に一回ずつ、自分たちの取り組みを発信するメルマガのようなものを発行し、世小Pホームページでも公開すれば、広報誌の目的「世小P会員をつなぐ」が別の形で実現するはずです。紙で配られたものは捨てられてしまえばそれで終わりですが、ウェブにアップされたものは後からでも参照できるメリットもあります。
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生涯学習部
○バレーボール大会についても早急に実行委員会方式への移行をお願いいたします。
いくつかのブロックでは、バレーボール大会の運営が大きな負担になっているようです。
あるブロックでは、競技の水準も高く「真剣勝負」を選手がのぞむがゆえに、大会運営も役員の仕事となっています。年初に30人を超える「バレーボール大会係」をつのり、なおかつ本部役員が大会運営の事務局として稼働した例もありました。その背景には、「世小Pの大会だから、責任をもってやらねばならない」という義務感があります。バレー部員も「役員に申し訳ない」という気持ちを持ちつつ、「バレーボール大会は誰かがでなければならない。そのためにがんばっている」という思いが交錯していると聞いたことがあります。
また、世小P側でも、バレーボール大会を「特別」としている雰囲気がありませんでしょうか。昨年度、わたしが生涯学習部のバレーボール大会担当の方に問い合わせたところ、「参加は自由だが、もしもバレー部がなくてもその日だけのチームを役員などでつくってでも参加してほしい」とおっしゃっていました。
この現状を、コーラスやソフトボールと同格に出来ないものでしょうか。是非ご検討を。
○研修の見直しを
・合同研修についても、去年廃止された代表者研修同様、見直しをお願いいたします。これは単Pは「動員」される程度ですが、世小P役員としてはとても大変なのではないでしょうか。同じ立場の保護者が保護者を教育するというような、微妙な問題をはらむ開催形式であり、単P研修の方がより本質的であると感じています。
・対案としては、これも実行委員会方式として希望者に任せるか、廃止も視野にいれるべきなのではないでしょうか。
○ブロック研修会について
・ブロック研修会の開催は義務ではなく、ブロックに委ねるわけにはいきませんでしょうか。開かない場合は、それでもよしとすること。またそれを周知すること。これも年度の担当校にとってかなりの負担になっており、単Pの通常業務に支障をきたす場合もあるようです。
・また、各ブロックに顔を出さねばならない世小P会長の負担は大変なものだと想像します。8回行われるものすべてに顔を出すと、そのまま8日の「出勤」です。ブロック研修はあくまで自主的なものとし、会長の出席は求めないようにはできませんでしょうか。世小P会長は、毎年、一人だけの役ではありますが、その負担たるや想像を絶するものがあります。
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地域環境部関係
○警察署との情報交換会・地域環境連絡協議会などは、統一し回数を減らすことはできませんでしょうか。特に「地域環境連絡協議会」は、開催校に大きな負担になっているようです。
○安全・安心のための活動は、「行き過ぎ」を心配する声も上がり始めています。やみくもに不安を増幅し、活動を広げるべきではないと考えます。
後の意見について、警察庁の付属機関科学警察研究所では、いきすぎた防犯活動の高まりが、「ムリ・ムダ」になりかねないことに警鐘を鳴らしています。
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都P・日Pとの関係
PTAは元来、単Pの活動が主となるものです。
しかし、連合組織の中に埋め込まれ、前例踏襲や組織維持のための活動が肥大してしまっているのが現状ではないでしょうか。
単Pが実効ある活動をしていくための支援、また、情報交換などの機能は、郡市区レベルのP連があれば十分であり、それよりも「上」の団体は、実効を欠いていると思われます。
特に日Pはあまりにもの巨体ゆえ、多様な価値観を持つ「日本の保護者代表」となるには不適格です。しかし、そのように扱われています(実際には教員も会員であるにもかかわらず、PTAはほとんどの場合、保護者の団体として行政にも、メディアにも扱われます)。価値観が多様化している現在、ほとんどの保護者を無自覚のまま束ねる仕組みはむしろ有害です。
よって、都小Pよりも「上」の諸団体からの脱退を考える時期が来ているのではないかと感じております。ご検討を。
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最後に……
私は世小Pの会員ですが、これは単Pの会員であることによって自動的にそうなっています(注・執筆当時)。
もしも、今後世小Pの活動に賛同できないと感じるようになった場合、個人単位で退会できるのかご確認ください。また、単Pの活動には賛同できず、世小Pの活動に賛同できる場合、世田谷区の区立小学校に子を通わせる保護者は個人単位で入会できるのか、確認をお願いいたします。
目下、単P、世小Pを退会する希望は持っておりませんが(注・昨年度3月の文書作成時点)、先の都P・日Pとの関係の項目で述べたことと同様、多様な価値観を持つ保護者をひとつの団体に組織することに無理がある以上、そのような希望を持つ人がいて不思議ではありませんし(ちなみに、わたしは日Pについては退会したいと考えているのですが、単Pを抜けずに退会する方法をいまだ見つけていません)、世小Pとしても、そのような場合の対応を考えていただきたいのです。
保護者と行政のかかわり方はPTAだけではありません。
西東京市では、PTAがない学校も多く、P連もありません。PTAはなくても、保護者組織はたいていあり、子どもが不幸になっているという話は聞きません。
八王子市には、PTAはあっても特に会長副会長を設けない学校もあります。
PTAをなくした方がよいと主張しているわけではありません。
ただ、これからのPTA、P連を考える際、それくらいの「幅」を念頭に置いた上で「落としどころ」を考えていただきたいのです。
世田谷区は、行政とPTAが非常に密接にかかわっている地域です。
行政はPTAを「保護者代表」として遇し、それがこれまで「うまくいっている」と評価されてきたようです。
これがよいことである反面、世田谷区のPTAの「きつさ」に直結しているとも感じます。
ぜひとも教育委員会事務局と相談しつつ、冒頭で設定した「問い」に対する話し合いをしていただきたくお願いいたします。
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以上、長文失礼いたしました。
昨年度、様々な研修や理事会、懇親会に顔を出しましたので、今年度の世小P執行部のみなさんの何人かははっきりと思い浮かびます。
ただでさえ殺人的な忙しさの中、余計かもしれない議論を常任理事会にてしていただくことになるかもしれず、心苦しく感じつつも、今のままのPTAは限界に来ている、との強い思いから提言させていただきます。
ここまで書いてきたことについて。わたしたちが、最低限、守らねばならないのは「子ども目線」だというのがベースにあります。
○単P役員や世小P役員を引き受けたために、子どもにしわ寄せがいくようなPTA活動はなんとかしたい。
○自分の娘や息子が成人して子を持つ時、PTAが同じままなら我々の責任(PTAが変わらない可能性は十分にあります。PTAがはじまってそれほど時間が経っていない1960年代からずっと似たような負担や形骸化の問題が語られ続けているのです)。
○ねがわくば、教育の現場に実効ある活動をみずからしたいと願います。
そのような思いで、この文章をしたためました。
よろしくご査収くださいませ。
今年度、世小P役員、常任理事の皆様へ、感謝と尊敬の念を抱きつつ……。
2009年3月23日 カワバタヒロト