ズデニェック・スヴェラーク/千野栄一訳『コーリャ・愛のプラハ』集英社、1997年
旧チェコスロバキアの小説です。この映画を観たことがあり、図書館で原作があることを知り、読み始めました。
社会主義体制崩壊直前のプラハ、街にはロシアの兵士が駐留し、秘密警察の監視が厳しくなっていました。ドイツへの亡命を予定したロシア人女性ナジェージュダは、亡命の手段としてプラハの市民権を獲得するために条件つきでチェコ人・ロウカと偽装結婚します。
女好きの初老のロウカはかつては名のあるオーケストラに所属していたチェロ弾きでしたが、今は埋葬場で追悼の演奏をする弦楽四重奏団でアルバイト生活をしていました。偽装結婚を了解したものの、ナジェージュダは連れ子である5歳の男の子コーリャを置いて、すぐに姿をくらまし、亡命してしまいます。
ロウカはコーリャの面倒を見なければならないハメに陥ります。
ロシア語とチェコ語は似ているように聞こえますが、違います。お互いに、コミュニケーションがとれないのです。
勝利の2月記念日の窓飾り、タマーラおばさんの死、警察での尋問、コーリャの発病、コーリャの誕生日でのヴァイオリンのプレゼント、二人の間にいろいろな心のコミュニケーションがありますが、最後にナジェージュダがコーリャを迎えにきて、ロウカとコーリャの別れの時がきます。
「シナリオと小説の間にあると思われる作品」で、原作は「テンポの速い、歯切れのいいチェコ語で書かれている」とのこと(「微笑をもたらすもの-解説」 p.172)です。