【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

要するに奇人・変人列伝です

2008-03-08 00:07:37 | 評論/評伝/自伝

中野翠『会いたかった人』徳間書店、1996年
                  会いたかった人
 大学入学時にはロシア文学のほうに進もうと思っていました。その時、ゲルツェン、チェルヌイシェフスキーなどを研究したいと漠然と考えていました(その後、文学畑にいく能力がないと悟り、諦め、方向転換しました)。そのチェルヌイシェフスキーのことが書かれている本と言うことを知って、市の図書館でこの本を借りました。

 チェルヌイシェフスキーも面白かったのですが、この本は端的に言えば「奇人・変人・怪人」列伝です。事柄の性質上、登場人物に男性が多いのはいたしかたないところ。

 ジョージ・オーウェル、左卜全、田中清玄、古今亭志ん生、ロバート・フィッシュ、プレストン・スタージェス、ピーター・ローレ、淡島寒月、熊谷守一、今和次郎、佐分利信、P・G・ウッドハウス、福地桜痴、三田平凡寺、福田恆存、松廼家露八、内田魯庵、依田学海、徳川夢聲、ジェイムス・サーバー、中里介山。女性ではココ・シャネル、エルザ・スキャッパレリ、ダイアン・アーバスなど(そうそう樋口一葉も入っていますが、彼女は奇人・変人ではないと思います)。

 表題が「会いたかった人」なので、著者はこれらの面々との肌合いを確かめています。例えば、チェルヌイシェフスキーとは「ロシア紅茶でも飲みながら、夜を徹しておしゃべりしたくてたまらなくなる」(p.22)、左卜全とは「もし、私がいきなり左卜全に会ったら、どう見られるだろうか・・・。こわいけれど、会ってみたかった」(p.48)、と言った具合です。

 手に負えないと思ったのだけれど、「仕返し、再挑戦をしたい」のは中里介山だそうです(p.270)。

 ところが読み進むうちに感じたのは著者も結構「奇人・変人」で、結局自分を語っているようなところがあります。彼女がどんな人かは、この本を読めばだいたい分かります。明け透けなので・・・。

 冒頭のジョージ・オーウェルの箇所で、筆者は
自身の職業が文筆業ですが、確固とした思想はなく、ファシズム的なもの(集団的熱狂、陶酔)が大嫌いで、個人主義の自前の旗をたてていく、頭より体のほうを頼りにして、と言っています(pp.9-10)。