【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

池内紀『モーツァルトの息子-史実に埋もれた愛すべき人びと-』光文社、2008年

2008-03-25 00:25:51 | エッセイ/手記/日記/手紙/対談

池内紀『モーツァルトの息子-史実に埋もれた愛すべき人びと-』光文社、2008年
                   モーツァルトの息子   史実に埋もれた愛すべき人たち (知恵の森文庫)
 1998年に『姿の消し方』(集英社)として刊行されたものを改題して文庫化したものです。

 著者は「読書の裏通りで出くわした人々で・・・ものものしい伝記を捧げられるタイプではなく,その種の伝記にチラリと姿を見せ,すぐまた消える。ただ,なぜか,その消え方が印象深い,そんな人たち」30人を集めたと書いています(p.281)。

 モーツァルトやゲーテ,ナポレオンが活躍した時代から,第一次,第二次大戦が勃発した頃にかけてのヨーロッパを舞台に,一見,奇妙ではあるけれど,十分に個性的な人間像が描かれています。

 
・ヨーゼフ・キュゼラーク(ヨーロッパの奇人・変人グラフィティに欠かせない落書き署名の大家)
 ・フランツ・クサヴァー・ヴォルフガング(モーツァルトの息子)
 ・フリーデルケ・ケンプナー(あまり上手くないがその詩集が版を重ねた女性詩人)
  ・カエターノ・ブレンシー(国王の暗殺者)
  ・ヨーゼフ=ジュース・オッペンハイマー(18世紀の天才的財政官)
  ・エーリヒ・フォン・シュトロハイム(貴族の血をひく映画人)
  ・ペーター・キュルテン(ヂュッセル・ドルフの殺人鬼)
  ・ヨハーン・クリストフ・ザクセ(ゲーテの愛でし子)
  ・フランツ・クサヴァー・メッサーシュミット(奇妙な顔シリーズの彫刻家)
  ・マダム・レカミエ(富と美をかねそなえたもとベネディクト派の夫人)
  ・カール・シュピッツヴェーク(ミュンヘンに住んでいた並外れて小さな絵を描く変わり者)
  ・スザンヌ・ラングラン(1920年代一世を風靡した女子テニス選手)
  ・アレキサンダー・ブリオン・ジョンソン(アメリカの言語哲学者)
  ・クサビィエ・ド・メストル(室内旅行家)
  ・フィリッシュ・ロップス(永遠で生身の女性を描いた奇妙な画家)等々。

 実在しながら記憶されることなく,歴史の闇に消えていったある種の大物たちです。