【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

北林谷栄『九十三齢春秋』岩波書店、2005年

2008-03-12 00:40:41 | 評論/評伝/自伝
北林谷榮『九十三齢春秋』岩波書店、2004年
                      九十三齢春秋
 たくさんの映画でこの女優さんの姿、演技は見ました。「キクとイサム」とか「阿弥陀堂便り」とか。舞台では、機会がなく、観ることができなかったのは残念です。

 自らの93年の人生を振り返って編んだ本がこの『九十三齢春秋』です。

 銀座・大野屋の娘で,本を読み漁った少女時代,宇野重吉によって開花したおばあさん役,自ら子供から大人になる契機だったと語る関東大震災。そこで見た虐殺された朝鮮人の姿。

 祖母との触れ合い,演劇人との出会い,それらが強い批判精神で,しかし茶目化も交えて綴られています。おばあさん役では彼女の右に出るものはいないといわれますが,本当のおばあさんの中に入ると「自分をニセ金だと思う」と述懐するあたり,素直な心に胸が熱くなります。

 いろいろな所に書かれたものがまとめられた本ですが,編集者も長けた人だと思いました。

 この本のつくりは「エッセイ」ですが、北林さんのそれですから「演劇」のカテゴリーに入れました。