あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

2021-11-22 16:02:34 | 

 読んでいる最中に飛び込んできたのが、映画「糸」のメインキャストの菅田将暉さんと小松菜奈さんの結婚のニュース。このストーリーのエンディングにぴったりでした。

 中学1年生の高橋漣は家庭内暴力を受けている、同じ学年の園田葵を守るために二人で駆け落ちをします。漣が何度も来ているロッジに不法に侵入し、冬の夜を二人で過ごします。そこにあった防災用のラジオから流れてきた曲が中島みゆきの「糸」。翌朝、警察官と葵の母親に二人は発見され、二人の糸は切り離されました。

 21歳の時に同級生の結婚式に招待された漣は葵と再会します。二人とも別々の人生を歩んでおり、未練があっても糸は戻りません。31歳になって、葵はシンガポールでの会社経営にへの参加を要請され、行く決心が揺らいでいる中、スマホの動画サイトには葵が子どもの時に世話になった向かいの家のおばさんが映っており、故郷の北海道・美瑛へ。

 「人は、出会うべき時に、出会うべき人に出会う」物語は美しい。歌詞のエンディングの通り、「縦の糸はあなた 横の糸は私 逢うべき糸に 出逢えることを 人は 仕合わせと呼びます」が本当です。

『糸』(林 民夫著、幻冬舎文庫、本体価格580円、税込価格638円)

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森のような経営

2021-11-22 14:58:52 | 

 私も15年に渡る里山の整備での経験、また、『樹木たちの知られざる生活 森林管理官が聴いた森の声』(ペーター・ヴォールレーベン/著、ハヤカワ文庫)や『4千万本の木を植えた男が残す言葉』(宮脇昭/著、河出書房新社)などを読んで得た知識から、森は将来を考えて、今を生きるのではなく、いまここで成員全員で最善を共に尽くすスタイル、つまり、それ全体で最適な状況を共生して作り出しています。組織の一部だけが繫栄することはありません。

 これに対して、人間、特に経済や経営における行動はいかにシェアを勝ち取り、優位に振舞えるか、さらに言えば、ビジョンや数値目標ありきに立脚しているために、それらに適合しようと無理な力が働いていたりします。勝ち負けや損得ではなく、森のような経営では公正な取り組みで社会に貢献できる「良い会社」を作るなかで、「社員全員の幸せ」を追求するしくみこそが地球や社会、また社員やお客様へ様々なストレスを与えることなく、持続可能性も勝ち取れるはずです。

 自然の一員である人間も森を見習うこと、これが今後は大切になってくるでしょう。

『森のような経営 社員が驚くほど自由で生き生きする。「心理的安全性」に溢れた組織づくり』(山藤賢・山田博著、ワニ・プラス、本体価格1,500円、税込価格1,650円)                  

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婚活食堂 1

2021-11-05 16:25:52 | 

 秋も深まり、鍋料理やおでんが恋しい時期となりました。四谷しんみち通りの「めぐみ食堂」はおでんが看板のお店です。恵はふらっと入った「めぐみ食堂」が本日閉店すると聞いて、即決で買い取り、おでん屋家業になりました。彼女はテレビ出演、書籍執筆や雑誌のコーナーを持つカリスマ占い師でした。出版の担当編集者の中江と結婚し、マネージャー役になってくれましたが、結婚7年目に彼女のアシスタントと不倫し、ホテル火災で二人は亡くなりました。傷心の恵の第2の人生が始まりました。

 お店に集う常連の女性たちの話題は婚活。カリスマ占い師当時の神通力も手伝って、カウンター越しに見た彼女たちの結婚が成就するように恵は縁の下の力持ちとして活躍します。彼女の発する言葉には男女の機微や幸せへの手がかりが滲み出て、めぐみ食堂は文字通りの婚活食堂になっていきます。

 おでんの中でも看板のネタ、葱鮪(ねぎま)と牛スジは熱燗で食べたいですね。巻末にはレシピ集も付いており、一度試してみたいなぁ~。

『婚活食堂 1』(山口恵以子著、PHP文芸文庫、本体価格680円、税込価格748円)

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[自然農法]わら一本の革命

2021-11-01 15:04:38 | 

 不耕起、無肥料、無農薬、無除草による米麦、ミカン栽培をされてきた福岡正信氏による自然農法のバイブル本。「人知、人為は一切が無用である」という思想から、自然に帰り、徹底して無駄なことを排除した「楽農」「惰農」を実践してきました。「人間は自然を知っているのではない」ながら、人の知恵で行ったことの結果による課題を、さらに人の知恵で解決しようとするために、雪だるま式に無駄な工程が蓄積されているのが近代農法としています。「いつも人間は、真の根本が判らないから、本末を顚倒し、人間そっちのけで末梢の繁栄に力をそそぐ」わけです。

 福岡氏が提示する視点は、「分別」「無分別」「部分」「全体」のどちらを選択するか

であり、これは環境問題、SDG’sの解決に密接につながり、人間が自然に融合し、無為を優先することが急がれます。

『[自然農法]わら一本の革命 』(福岡正信著、春秋社、本体価格1,200円、税込価格1,320円)

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