ニヒルでダンディを絵に描いたような男。年齢を経てもそのカッコよさを失わない。芦屋生まれで、神戸一中を経て、イギリスに留学します。この留学が彼の人生を決定づけたと思います。英語は堪能、英国での人脈も築き、実業や政治の世界でも彼は一目を置かれる存在になります。
それは「noblesse oblige」、地位や権力、財力のある人は責任も負うべきということを体現したからこそでしょう。「身をもって実行し、己を律し、さらには高い立場にいる人を容赦なく叱りつける」姿はブレない。また、弱い立場の人には限りなく優しい。本当の人格者である彼が終戦後の占領下での混迷の政治の場面でニッチな立場に身を置きながら、日本の行く先を導いていくのは「私心がない」から可能にしたのでしょう。
他の評価など我関せず、生きる背骨がしっかりと伸びていた、そんな人物が今の日本には必要でしょう。
『風の男 白洲次郎』(青柳恵介著、新潮文庫、本体価格490円、税込539円)