あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

還暦からの底力

2021-01-28 14:01:03 | 

 わたくし、本日、還暦を迎えました。宇宙に、地球に、日本に、先祖に、父母に、嫁に、すべての方々に感謝いたします。人生100年時代に入って、60歳はまだまだ40年もあると思えばこそ、まだまだやりたいこともあるし、出会いたい人や場所やあります。好きなようにやりたいことだけはやりたい!物欲だけはないですが…。

 高齢者の生きている使命が子孫繁栄であれば、彼らが暮らしやすいように考え行動する、そんな人になる必要があります。状況を判断して、立ち止まって、どうなればよいかを考える習慣を持ち、行動に移していく。年齢と共に行動力はダウンしていくとは言え、共に行動していく人を求めるためには、集まってくれ、手伝ってくれるほどに、自分が魅力的になるべきです。

 そのためには、出口流の「歴史・人・旅から学ぶ生き方」になるでしょう。歴史上の人には実際会えませんので、書物を読むことで対話をしていかなければなりません。人に関して言えば、多様性の重視こそが大事であることを力説されています。SDGSでも明確です。旅に関しては、せっかくこの世に生まれて、大自然の雄大さに触れるだけ触れて死にたいと思います。

 底力を発揮できるように1年1年大切に生きます!

『還暦からの底力―歴史・人・旅に学ぶ生き方』(出口治明著、講談社新書、本体価格860円)

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火定

2021-01-24 12:39:16 | 

 天平の世、平城京で起こった天然痘パンデミック。当時の都には8万の民が暮らしておりました。遣新羅使からの帰国者から蔓延、感染拡大に接し、市民に対して懸命に携わる施薬院の医療チームの物語。

 読み進めていると、3密や80%おじさん、会食の時間制限などは登場しませんが、医療現場の模様や政府の対応は現代の新型コロナウイルス感染の様子とかなり似通っており、これは全国民必読書かもしれません。

 医療の最前線では、志の高さこそが状況を左右するのは当然とは言え、とても誇り高い。また、人の生き様を問うている作品でもあります。

 「人はみな、自らの存在に限りあることを知っている。それゆえに世の者は誰しも己の求めるものを追い、その生を充実させんともがくのだ。ならば人はいま生きるがゆえに、いつか死ぬのではない。いつか死ぬがゆえにそれまでの短い命を輝かせるのであり、いわば人を真に生かしているものは、いずれ訪れる死なのではないか。」

 生きるということの大切さを身に沁みました。

『火定』(澤田瞳子著、PHP文芸文庫、本体価格880円)

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良寛詩歌集

2021-01-20 16:03:05 | 

 良寛さんの生き方に憧れますが、これをやろうと思うと、なかなか踏み切れない敷居があります。

 それは「清貧な乞食僧としての生き方」です。自分の寺も持たず、稼ぎもなく、越後の人々に愛されて、その「縁に身を任せて」生きたわけですが、生まれは越後国出雲崎の名主の長男。名主を継ぐ立場であるが、自分は向いていないと判断し、出家しますが、その捨て方が半端ない。「すべてを捨てることで、何かが見えてくるのではないか」という決断です。そして、上から目線ではなく、「どん底」から世俗を眺めると何が見えたか?世のしきたりや身分など全くこだわることなく、「ものごとの根底にある『本質』の部分にのみ、良寛さんは眼を向けていた」のです。そんな生き様を見せることで、人々に「人間として生きるための座標軸に気づかせること」に専念しました。

 良寛さんが自然を愛で、また、子どもたちと遊ぶのは、本質をキラキラと輝かせる存在と共にいることで感性を鈍らせなかったのでしょう。しがらみなく、いまここを生きることが人間のあるべき姿なのでしょう。

『「どん底目線」で生きる 良寛詩歌集』(中野東禅著、NHK出版、本体価格1,000円)

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コロナと潜水服

2021-01-12 09:50:53 | 

 今の社会情勢に見合った書名も含めての5つの短編集。読めば、現在の雰囲気を緩ませてくれるほっこりとさせてくれます。

 「コロナと潜水服」では5歳になる息子が新型コロナウイルス感染症に対して予知能力を有するストーリー。父である康彦が感染した可能性があり、防護服やレインコートも品切れのため、妻は古道具屋で潜水服を購入する。それを着て、息子と公園で遊ぶので、世の中がほおっておかない。

 「パンダに乗って」のパンダはフィアットの1985年製造の赤いスモールカー。これをネットで購入した直樹は新潟市まで取りに行く。東京へ戻ろうとするが、車のナビゲーションは新潟市内や近郊に案内する。この車の元の持ち主のゆかりのある地へ直樹は連れていかれるという、ファンタジックな感覚です。

 どの話も苦境に陥った主人公が、幽霊やオアルトによって思いやりのある流れに乗せられ、読者は愛あるムードに包まれます。

『コロナと潜水服』(奥田英朗著、本体価格1,500円)

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ビジネスの未来

2021-01-08 13:15:44 | 

 一般的には「経済成長」あるいは前年対比100%を超えることが本当に難しくなってきています。これは『資本主義の終焉と歴史の危機』の著者の水野和夫氏がこれまで十二分に訴えられている、強欲なグローバル資本主義の成長の余地がなくなっていること、また、人間社会の地球環境への負荷が一杯になっているだけでなく、本書の著者・山口周氏は人類が

「物質的不足の解消」

を実現しているため、これからは成長から「高原への軟着陸」を目指すべきであるとしています。資本主義は人類のために、人間の課題解決を行ってきたが、資本を投下して効率良く儲ける課題がなくなった状態に至っており、資本が手に負えない課題へのアプローチは人間の「衝動」が必要になる、つまり、「エコノミーにヒューマニティーを回復せよ」と断じています。もっと理解しやすく言えば、

「便利で快適な世界」を「生きるに値する世界」へ変えていく

と表現しています。そのためには、人間の行動においては

「真にやりたいコトを見つけ、取り組む」、そして、「真に応援したいモノ・コト」にお金を使う」

べきであり、今までの、「大きく、遠く、効率的」から、「小さく、近く、美しく」というベクトルに従えば、定常」で「相互扶助・相互支援的な人間のつながりをつくる」社会を作れるのでしょう。市場原理をかなぐり捨てれば、「私たちが残したいモノやコトをしっかりと次世代に譲渡していくことが可能」です。ローカリズムであり、循環経済の方向へもっと鮮明に舵を切るべきです。過密な都市空間からの脱却を人間が志向していくと、新型コロナウイルスも喜ばない状況を生み出せます。

『ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す』(山口周著、プレジデント社、本体価格1,700円)

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あした死んでもいい片づけ 基本!

2021-01-04 16:43:45 | 

 家のリフォームを一昨年行い、昨年末はおふくろの家の宿替えを敢行しましたが、まぁ~廃棄するものが夥しく出ました。これだけ無駄に消費していたことになり、賢い消費者にならなければと思った次第です。そこで断捨離、片付けの本をひもっときました。

 片づけ=抜くだけ=廃棄(使うか使わないか)に集中することに専心し、その場をその場のある意味を考えて利用する

このことを念頭に、毎日30分だけ片づけを行うことに導いてくれます。例えば、玄関を30分間の片づけを3日、つまり3クール行います。玄関は人が出入りする場と考えれば、そのことと関係ないものは置かない。これだけできれいにシンプルになります。このように場所ごとに3回片づけしていきます。

 おふくろの家の片づけをしていたら、一生以上使用するタオルが出てきたり、服もこんなにいらんやろ~と思うほどの量がありました。もったいない精神から箪笥の肥やしになっているのでしょうが、これからはSDGSの考えを優先して、モノを買うことを決定しなければならないですね。子どもの頃から学ばないといけないなぁという結論です。写真もデジタルにしていく予定です。 

『あした死んでもいい片づけ 基本! 抜くだけ30分! すっきり幸せ簡単片づけ術』(ごんおばちゃま 著、興陽館、本体価格1,000円)

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あしたのことば

2021-01-02 15:55:21 | 

 『リズム』や『カラフル』など、当店でも大変お世話になっている森絵都さんの「ことば」をテーマにつむぐ8篇の短編小説集。中には、光村図書小学校教科書「国語6」掲載の「帰り道」も収録されていますので、小学生高学年からお読みいただけます。

 言葉はとても大切です。そこには優しさも、刃物のような鋭さも忍んでいます。発する人と受け取る人の感じ方の違いや、「言葉ってこわいけど、でも言葉がないとほんとのことがわかんないまま終わっちゃ」ったり、使う言葉が変わると発する人も変わったり、伝えられなかった言葉の存在によって、伝えたかった相手は心の中でずっと生き続けたり、言葉は人の意識や行動を変えたりと、本当に多くの意味合いを持っています。それらを、短篇の中の主人公である小学生や動物は胸にしまい込んでいます。

 また、各短篇には9人の人気イラストレーターの挿絵が絶妙にコラボされています。言葉の深さを和らげるように。

『あしたのことば』(森絵都著、小峰書店、本体価格1,600円)

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