あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

井戸書店が日大アメフト部にお薦めする書籍2点

2018-05-30 17:42:46 | 

  まったくもって余計なお世話ですが、これはほっておけない、日本の縮図かもしれないと思い、2冊をご紹介します。

  まず、1冊目は『アスリート論語塾』(安岡定子著、メディアパル、本体価格780円)です。多くの章句がある論語からアスリート向けに31の智慧を紹介しています。

  例えば、「君子は義に喩(さと)り、小人は利に喩る」では、正義が第一であり、利益、今回の問題であれば、甲子園ボウル連覇に走るチームに待ったをかけるべきでしょう。

  また、「君子は人の美を成し、人の悪を成さず。小人は是に反す。」はまさに監督やコーチ陣に体得してもらいたい章句です。

  「速(すみ)やかならんと欲すること毋(な)かれ、小利を見ること毋かれ。速(すみ)やかならんと欲すれば、則(すなわ)ち達せず。小利を見れ則(すなわ)ち大事成らず。」目先の利益を追求するとロクな事ない。他人を尊重して、協力して大勝利を目指すことこそ、本来のスポーツマンシップでしょう。

  アスリート論語塾

  もう1冊は、『チームスポーツに学ぶボトムアップ理論 高校サッカー界の革新者が明かす最強の組織づくり 』(畑喜美夫著、カイゼン、本体価格1,400円)です。

  今回の問題はトップダウン体制であり、監督からすれば、コーチや選手は自分が動かせるコマかロボットとしか考えていない。しかし、実際にゲームをするのは選手たち。彼らがどう思い、考え、試合を組み立てていくかを自ら考えていくボトムアップを打ち立てていくことが日大アメフト部だけでなく、日本の組織には必要でしょう。今後、AIやロボットが大手を振るようになればなるほど、考える人こそが重要な価値となっていくはずです。その意味でも、考える習慣を持て得る組織にしていかなければなりません。

  井戸書店でもこのボトムアップを実践していますが、今まで染みついたトップダウン方式に慣れ親しんでいるのか、なかなか機能しません。時間が必要なので、将来はきっと自立型の人材が育つことでしょう。 

  チームスポーツに学ぶボトムアップ理論 高校サッカー界の革新者が明かす最強の組織づくり

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雪には雪のなりたい白さがある

2018-05-25 17:38:48 | 

 ジャケ買いしたくなる装丁デザインは、私のようなオッチャンには不向きかもしれませんが、読めばゴーンと響いてきました。5つの短篇集ですが、どれもこれも生きるパワーをもらえます。そして、5つとも公園が舞台。それぞれの公園で各々のストーリーが楽しめます。

 「周りにどう見られるかを気にしているうちは、ずっと今のままだな」

 「大人がなんて言おうと気にするなよ。自分が必要じゃないと思うものに時間を使う必要はない」

 「目立つことはなくても際立つことはなくても、赤や青やピンクの雪にはなれなくても、それでも雪には雪のなりたい白さがある」

 今の時代、そして、これからも、何か違う良さを持つことが人間には必要になる。そうでなければ価値ある人生が歩めない。そう背中を押してくれるストーリー展開に、読者はホッとするのではないでしょうか。

 第四話「雪には雪のなりたい白さがある」と、第五話「あの日みた大空を忘れない」は、恋人だった二人がそれぞれ主人公として登場し、二人がお互いを認め合いながら、別の人生を見つめている。それは、別れの時の約束の言葉が息づいているから。第六話を期待したくなるエンディングですから。

『雪には雪のなりたい白さがある』(瀬那和章著、創元推理文庫、本体価格580円)

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海が見える家

2018-05-20 16:44:29 | 

 『虹の岬の喫茶店』に引き続き、千葉は南房総が舞台の小説です。主人公・文哉は新卒で入社した会社をGW明けに、メール一本で退社。研修もままならずに、商品クレーム対応に着任したが、残業手当も加算されず、ブラック企業に入った自分を責めるしかなかった。そんなときに、知らない人からの電話が携帯にかかる。「あんたの親父、亡くなったぞ」

 急遽、南房総の館山の病院に直行。札幌の姉を呼び寄せ、父を火葬し、父は灰となって、住んでいた家に戻り、今後の対応について話し合うも、わからないことばかり。文哉が小学校2年の時に、両親は離婚。父が都内の中堅不動産会社を定年まで勤め上げ、姉弟を男手ひとつで育て、大学まで卒業させる。しかし、二人とも、無口で愛想のない父とは会話も少なく、特に、文哉は就職期間中に、父と口論になるほどで、それからは疎遠になる。子どもたちが家を出て、定年退職を迎えた父は南房総に一人移住する。

 無職となった文哉は、父の死後の対処を任されて、南房総で、父と交際していた住民に話を聴き、父がどういう暮しをし、どういう余生を送っているのかを知り、父の、過去を含めた、本当の生き様を知る。

 「自分の人生がおもしろくないなら、なぜおもしろくしようとしないのか。他人にどんなに評価されようが、自分で納得しない人生なんてまったく意味がない」

という言葉を父は実行に移していた。その言葉を父に言ったのは、誰でもない、文哉だった。その彼が職を失い、これからの生活に模索している時に、文哉は目が覚める。父の後ろ姿に彼の生き方のヒントがある。

 人にどのように思われようが、批評されようが、世の同調圧力に負けず、自分に正直に生きる。この小説のメッセージは現代日本人には大きく響くはずだ。

『海が見える家』(はらだみずき著、小学館文庫、本体価格650円)

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湯を沸かすほどの熱い愛

2018-05-17 16:42:09 | 

 多くの受賞をした映画の原作。銭湯の女将・双葉が余命2か月の宣告を受けて、バラバラだった家族が一気に収斂していく様子がコメディタッチに綴られています。

  双葉には、死ぬまでに解決しなければならないこと、つまり、彼女亡き後も、この家族がしっかりと生きていく環境を残す必要がありました。学校でいじめの集中砲火を受けている長女の安澄(あずみ)には双葉のように明るく強く生きる姿勢を持たせること、夫の一浩(かずひろ)が銭湯の親父としてがんばれるよう、家族の面倒を見れる人を迎い入れることがメインテーマですね。

  死期が近づき、双葉を元気にすべく家族は力を合わせ、バカ騒ぎをし、また、双葉の葬式は彼女ならこうしたら喜ぶであろうお別れの会の形を企画運営するのは非常識で面白かった~

  最後は家族が砦になることを再確認できました。

『湯を沸かすほどの熱い愛』(中野量太著、文春文庫、本体価格550円)

 

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きらきら眼鏡

2018-05-14 15:19:42 | 

 今秋にも映画公開される森沢明夫さんの作品。一緒に暮らしていたネコのペロがあの世へ旅立ち、落ち込んでいた立花明海。職場では1年先輩で仕事のできる弥生が彼に恋心を寄せる。彼はアパートのある西船橋の古書店で、『死を輝かせる生き方』という自己啓発本を買い、気になる一節を見つける。

 「自分の人生を愛せないと嘆くなら、愛せるように自分が生きるしかない。他に何ができる?」

 その箇所には赤線が引かれ、なんと、本からは「大滝あかね」と書かれた名刺が出てきた。明海はあかねにメールをして会うと、5歳年上の明るい女性。明海はすぐに彼女に惹かれる。しかし、あかねには、余命宣告を受けている恋人・裕二が入院していた。明海にとっては恋のライバルになるが、裕二が明海と会いたいと告げ、病室で対面する。

 終盤は明海、あかね、裕二、弥生がそれぞれに自分のこころのメッセージを吐露し合う。

 幸せとは何か?生と死、そして、生き方を考えさせられる恋愛小説です。井戸書店で棚展開している人間学に通じるストーリーに、読み進めるごとに考え深くなりました。

 ストーリーの途中で、明海の上司である、厚紙加工メーカーの課長が、『大事なことほど小声でささやく』のケラさんであり、ケラさんのセリフには、「スナックひばり」のゴンママが登場し、明海とあかねが南房総へドライブし、珈琲を飲んだお店は、『虹の岬の喫茶店』の「岬カフェ」だったのは、森沢明夫さんの小説を好んで読む者にとっては懐かしさを感じました。

『きらきら眼鏡』(森沢明夫著、双葉社、本体価格1,700円)

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黄金のアウトプット術

2018-05-13 11:05:56 | 

  インターネット環境が整い、ホームページやブログ、SNSなどでアウトプットもやり易くなりました。その結果、情報量が強烈に過多になりました。個人が全世界に発信するわけですから、仕方ありませんね。人間の身体で例えると、過食状態で、エネルギー消費ができず、肥満になるばかりみたいです。スマホ断食っていう言葉が出るぐらいですから、逆に言えば、インプットを精選し、アウトプットを増やすことが必要になります。

  つまり、インプット以上に大切なことは上質なアウトプットをしていくことですね。自らの脳内で様々なインプット情報を料理する、「なんらかの編集をして、アウトプットする」ことこそが個人の確立につながってきます。帯の言葉、「大衆を脱出したけりゃ情報を吐き出せ。」につながります。太字にしましたが、編集こそが自分の力になります。編集しなければ、情報の流通に加担しているだけです。編集し、新しい世界を切り拓いていくべきです。

  アウトプットの仕方は、「書く」「話す」がメインになりますが、趣味の世界であれば、作品や演奏などにも及んでいくでしょう。私なら、仕事の上でも棚の編集をしていますし、趣味の世界では落語や里山整備もアウトプットになります。自分の人生の生きる道を表現しましょう!

『黄金のアウトプット術 インプットした情報を「お金」に変える』(成毛眞著、ポプラ新書、本体価格800円)

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運命のひと

2018-05-10 16:35:27 | 

   誰しも、自分の人生を決定づける人、コト、モノ、場所などがあります。特に人からの影響は強烈に強く、その人の存在なくては自身の生き様を語れない場合もあります。

  本書の主人公・岩瀬修は文具通販会社のトドクルの専務取締役で63歳。彼には3人の運命の人がいます。その1人が高倉健。中学2年生の時に近所の風呂屋の同級生と映画を観に行ってから、完全にハマってしまう。実家の酒店の立飲みコーナーを手伝うことで、映画館のタダ券を手に入れ、暇さえあれば任侠映画の銀幕にくぎ付けとなる。高倉健のセリフを真似て、その男気を自分のものにしようと努力する。

  もう1人は、その飲み屋に日本酒を飲みに来る中間(なかま)のおっちゃん。小指の無いおっちゃんは焼きそばのテキ屋をしながら、様々な街の雑用に駆り出されている。修自身も、同級生の不良二人組との喧嘩の仲裁に、中間(なかま)のおっちゃんが一役買い、その後の、修の学校生活は変わっていきます。

  そして、最後の1人は従姉妹の弥生。心臓を病んでいた彼女は熊本から引っ越し、近くの県立病院に入院。読書好きで、絵を描くのも上手で、しかも勉強ができる彼女に、修は学校のプリントや図書館で借りてきた本を届け、談話室で勉強を教えてもらう。弥生は修に恋心を抱くも、心臓発作で息を引き取る。

  エンディングでは、中学校の同窓会でタイムカプセルを開ける企画があり、修は運命の3人を振り返る絶好の機会を得ます。特に、中間のおっちゃんや弥生から言われた言葉が自分の生き方や道筋を決めてきたことをしみじみと感慨深く思うシーンは非常に印象的でしたね。だからこそ、いつの瞬間も大切にしろよ!というメッセージが私には届けられました。

『運命のひと』(山本甲士著、小学館文庫、本体価格670円)

 

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虹の岬の喫茶店

2018-05-06 08:48:02 | 

 前回の『大事なことほど小声でささやく』(森沢明夫著、幻冬舎文庫、本体価格650円)に引き続いて読了した、森沢作品『虹の岬の喫茶店』は、『ふしぎな岬の物語』というタイトルに変わり、吉永小百合主演で映画化もされました。この喫茶店は千葉県鋸南町の明鐘岬に実在するお店で、グーグルマップで検索しても登場します。

 初老の女性・悦子は1人で喫茶店を切り盛りします。美味しい珈琲と、そのお客さんにマッチした音楽をかけることで、お客さんとの会話を楽しむ人です。トンネルを抜けたところに店の看板があるだけなので、通り過ぎるドライバーが多いですが、珈琲のみならず、彼女との会話、そして素晴らしい景色に魅了された常連さんが多く集まります。

 「この店はね、常連さんたちが面白がって、寄ってたかって改築していくの。(中略)みんなのおかげで、生きているのかも・・・」

 店の物理的な形が変化していくだけでなく、訪れる人への悦子の言葉がお店をより高次の居心地の良さに変えていっているのでしょう。生活に困った、新米の泥棒が店に侵入してきた時も、有名なゴスペル曲『ザ・プレイヤー』を流し、

 「人はね、いつかこうなりたいっていうイメージを持って、それを心のなかで祈っているときは生きていけるの。どんなことがあってもね。でも、夢とか希望とかをなくして、祈るものがなくなっちゃうと、つい道を誤ったりするものなのよ。」

 「間違いを犯す自由が含まれていないのであれば、自由は持つに値しない _ 」

と話し、泥棒に生き方を再考させ、背中を押してあげる。

 さまざまな人がそれぞれに生きていく。珈琲と音楽、そして、人生経験から生み出される言葉が、さらに良きものに形作っていく。私も書店人として、店に来られるお客様に有難いと言われるような、何か付加することができるように精進したいと思いました。

『虹の岬の喫茶店』(森沢明夫著、幻冬舎文庫、本体価格648円)

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大事なことほど小声でささやく

2018-05-02 17:56:03 | 

  『津軽百年食堂』や『海を抱いたビー玉』だけしか読んでなかった森沢明夫さんの作品をもう少し触れてみたいと思い、今回は『大事なことほど小声でささやく』にトライしました。

  身長2メートル超の、プロレスラー張りのマッチョのゴンママは正真正銘のオカマ。昼間はスポーツクラブのフリーウエイトゾーンで筋肉を鍛え、夜はすぐ近くの駅裏通りで「スナックひばり」を経営しています。本名の権田とスナックのママから「ゴンママ」。 ゴンママと同じく、ジムで筋肉をいじめる同好の人たちがジョーク満載の人間関係を形作り、汗を流した後に「スナックひばり」でのどを潤す生活を送っています。

  ここに集う彼らも、現実の世界では、会社や家族、そして、恋愛などで課題を抱え、悩める存在。そして、打ち明ける相手はゴンママ。「スナックひばり」で語り、ゴンママの究極のメッセージとそれにお似合いのカクテルを飲んでは、各人が考え、問題解決、ハッピーエンドへと、6つのオムニバスのストーリーは展開します。どんな状況でも人生は生きてなんぼです。ツライ時には言葉と酒ですねぇ。

  まさに、笑いあり、涙ありの人情小説に心地良く泳がせてもらいましょう!ようこそ、「スナックひばり」へ。

『大事なことほど小声でささやく』(森沢明夫著、幻冬舎文庫、本体価格650円)

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10年後の仕事図鑑

2018-05-01 16:27:57 | 

 AIに怖れることはない、あなたの人生を楽しみましょう!但し、考え方を改めましょう!というメッセージ本。「AI時代に君はどう生きるか」関連本では一番わかりやすく、明解な本です。

 まずは、「これまでの普通は、これからの普通でなくなる」ことを大前提に、我々は「普通の再定義」の必要に迫られています。ではどうすればよいか?それは、

 ①「他人と違うことをやっていくことを基本にする」 → 代替不可能な人になる=自分に価値を付加する

 ②「遊びのプロになる」 → 1点集中すればニッチトップとなり、そのニッチも2~3種類持って、それらをクロスオーヴァ―すると、My ジャンルが創設できる
  「好きなことに没頭し、仕事になるまで遊び尽くす」
 「好きなことを掛け合わせ、『100万分の1』を目指す」
 つまり、「仕事を作り出す」存在になることを提唱しています。これは数学、統計、確率で動いているAIには無理なことです。

 嫌いな勉強をみんなですることもなく、自分の興味のあることに集中する。その際には世の同調圧力は無視する気概を持たなければなりません。

 実際には、自分の価値資本を高めるためには、「仕事になる趣味を3つ持て」であり、「情報を仕入れたら、自分の頭で思考する癖をつけ(中略)、毎日発信する」ことを忘れずに、心では

 「未来を恐れず、過去に執着せず、今を生きろ」

を念頭にしなければなりません。AI時代は空気を読めない人の方が有利ですね。

 最後に、本書には、Chapter2「なくなる仕事・変わる仕事」で書店について書かれています。「リアルな場が武器になる」ということは間違いないことだと私も確信します。

『10年後の仕事図鑑』(堀江 貴文・落合 陽一著、SBクリエイティブ、本体価格1,400円)

 

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