あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

めざせFIRE!

2021-09-28 16:13:02 | 

 「FIRE」っていう言葉を耳にするようになったので、どんな人か、どのような生活をされているのかを本書で知りました。

 「FIRE」とは、Financial Independence,Retire Earlyの略で、経済的自由を得て、早期にリタイヤ―引退する人です。著者のぽんちょさんは会社員ですが、給与の生活では家計簿も利用して、「節約」に心がけ、できるだけ「投資」へ資金を回し、「ポイ活」「せどり」「ブログ」「YouTube」などの副業もされています。1日の就業時間以外、メインはYouTube作成に4時間半をかけておられているのは質の高い番組作りのためでしょうか。スゴイのひと言です。

 引退できるに至るまで、つまり資金を貯める期間をできるだけ短くすれば、自由になる時間が増えて、人生バラ色になるでしょう。しかし、無常の世の中、いまできることをその時にやらないと思ってしまうのは僕だけでしょうか。生き方としていろいろあるんだなぁという読了の感想です。

『めざせFIRE! 知識ゼロから経済的自由を勝ちとる 』(ぽんちょ著、主婦の友社、本体価格1,400円、税込価格1,540円)

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4千万本の木を植えた男が残す言葉

2021-09-25 13:12:01 | 

 日本だけではなく、海外にまで植樹活動を推し進め、通算4千万本の木を植えてきた(本書刊行から20年は経ているのでさらに本数は増えているだろう)植物生態学者の宮脇昭先生のこれまでの歩みと、そこから生み出された言葉を綴っています。

 地球温暖化、CO2削減、生物多様性、地震や土砂災害への対応として、すべての人間活動を停止した場合の、その土地本来の緑の状態である「潜在自然植生」-これは鎮守の森に相当します-に戻すべく植樹を、国、地方自治体、企業、市民とともに運動を繰り広げていく中で、

 『競争しながら、少しずつ我慢し合って共生する』生物社会こそが最も健全な状態

と判断されています。人間も生物種の一つであることから、同じ原則で生きていけば、幸せに生を全うできるはずです。そのためには「適材適所」を見つけ、その場で一所懸命に努力することが大切であると説かれています。

 地球をその土地本来の本物の「いのちの森」の惑星にしていくことは、人類の歴史の原点に戻ることであり、地球上の生物種すべての大欲でしょう。「大地に木を植えることは、心の中に木を植えること」、この思いで、私もこれからも板宿の森に植樹をしていきます。

『4千万本の木を植えた男が残す言葉』(宮脇昭著、河出書房新社、本体価格1,500円、税込価格1,650円)

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聖地の条件 神社のはじまりと日本列島10万年史  

2021-09-21 17:33:48 | 

 神社の始まりは何かと問われても、神社に祭られている古事記の神話との関係程度しかわかりませんでした。本書を読んで納得しました。末社を束ねる神道の大本である、出雲、熊野、諏訪、伊勢などの周辺の遺跡には、黒曜石、翡翠、碧玉、辰砂(しんしゃ)などの大産地です。いわゆるパワーストーンの恵みがあった場所です。特に、出雲は三種の神器の勾玉作りの産地であり、朝廷と直結しています。

 これらの石は火山活動の産物であり、また、出雲、熊野、諏訪には温泉が湧いており、これも火山の賜物です。石の流通には断層から生まれた道を経て、全国に運ばれていることも火山列島のなせる業となります。石の文化は旧石器時代であり、良い石の有無がその地の価値を左右しており、優れた石の存在を記憶する地が神社の立地との関連づけ、国造りの神話と結びつけて、様々な神が祭られていく。これは日本の国土の特徴に基づく推理ですね。

『聖地の条件 神社のはじまりと日本列島10万年史』(蒲池明弘著、双葉社、本体価格1,500円、税込価格1,650円)

 

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月まで三キロ

2021-09-10 15:45:53 | 

 事業に失敗し、離婚を言い出され、母親が亡くなり、父親が認知症になった主人公が自殺の下見に、浜松から富士の樹海へ行くために夜にタクシーに乗車します。運転手に樹海までは行けないけど、近くにいい場所があると提案を受け、天竜川の佐久間ダムへ向かいます。「この先にね、月に一番近い場所があるんですよ。」と言われ、「月まで3キロ」の標識のある場所で、タクシー運転手の身の上話を聞かされます。タクシー運転手の前は学校の教諭をしており、天文クラブの顧問をしていたので、月の蘊蓄を披露してくれます。「月は地球から離れていっている」「地球から分離した月は、初めは表裏とも地球から見ることが出来ていたが、今では表だけ、裏は見えない」などと語り、「子育てって、月に似てると思うんですよ。親が地球で、子どもが月。」最後には「下見を続けるか」と。

 他の5篇も、科学、特に天体学、地学などに関わる人との出会いと、その知識で、生き方を考えさせられる、とても素敵な短編集です。科学が身近に感じられる小説です。

『月まで三キロ』(伊与原新著、新潮文庫、本体価格670円、税込737円)

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かなしきデブ猫ちゃん

2021-09-06 15:08:39 | 

 愛媛の捨て猫との出会いのカフェにいたオス猫はアンナという少女の家庭にもらわれます。アンナに可愛がられ、「マル」という名を付けてもらいます。美味しい餌をバクバク食べて太り気味で、人間にすり寄る猫が大嫌いなマルの態度に、アンナの両親はマルが猫1匹だから寂しいのではないかと、血統書付きの雌のチビ猫を買ってきたところから、マルの家での立場が徐々に無くなりつつあったある日、チビ猫を組み伏せたのを発見されて、「デブ猫」とアンナに叫ばれました。

 窓の外の野良ネコの、「家ネコ。臆病者!外は広いぞ。外は自由だ!」という誘惑や、夢の中で見た額に三日月の傷のある黒いメスネコに、「気高き者よ。立ち上がりなさい。その目で広い世界を見るのです」という言葉に、マルは立ち上がり、家を出ました。

 黒のメスネコを探し求めての冒険で、愛媛県中を歩き回ります。愛媛の観光案内にもなる町旅は楽しく、また人情、猫情を感じるものになります。勇気をもって飛び出せなくて、悶々としている人にはこの絵本文庫をどうぞお読みいただきたい!

『かなしきデブ猫ちゃん』(早見 和真・文/かのう かりん・絵、集英社文庫、本体価格700円、税込770円)

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