あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

とりつくしま

2017-04-24 14:27:15 | 

  既に口コミで人気になっている短篇小説。あの世に行って、「とりつくしま係」に面談し、未練のあるモノに取り付き、現世に戻れるフィクション。落語好きの私にとっては、六代目桂文枝(桂三枝)さんの『生まれ変わり』を彷彿とするような設定で非常に楽しい。

  『生まれ変わり』では現世に戻るまでのやり取りが面白いのですが、『とりつくしま』では戻ってからのストーリーが感動を呼びます。特に、「ロージン」や「日記」、「白檀」など、自分の死後、自分に関わる人たちがどうなっているのか、あるいは最愛の人の自分に対する情愛がどうなのかを知ろうと躍起になります。どの作品も落語のネタになると言ってしまえば、著者の東さんには申し訳ないですが、肩の力を抜いて気楽に楽しく読めます。

  読了後の感想は、自分は何に取り付きたいかを考えてしまいますね。そうすると、創造力が広がりますし、今世でしっかりと自分の思いを伝えようと決心させます。

  『とりつくしま』(東直子著、ちくま文庫、本体価格600円)

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世界一やさしい読書習慣定着メソッド

2017-04-19 15:33:16 | 

 継続的な読書を習慣化したいと思うものの、なかなかページを繰れない方はこの本で再チャレンジしてみたらどうでしょう!以前、このブログでも印南敦史さんの本は取り上げさせていただきました。

『遅読家のための読書術  情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(印南 敦史著、ダイヤモンド社、本体価格1,400円)

http://blog.goo.ne.jp/idomori28/e/7985e28671ef65a157a2e274cd95597c

 遅読家が書評家として毎日本を読んでは書いているのですから、本との関係をやり直すにはもってこいです。

 まずは2つの無駄なmustを放棄しようと訴えています。それは

① 熟読し、書かれていることのすべてを頭に叩き込まなくてはならない
②  時間を効率的に使うため、速読しなければならない

であり、読まなければ、理解しなければという義務感は不要です。私も仕事柄、せっせと読書をしていますが、義務を感じることはなく、好奇心のために読書していると思います。「えぇ~、そんなことがあったのか?」「そんな考え方、その視点は持ってないなぁ~」と思えるだけで、その本との出会いを感謝します。現実に人に対して「一期一会」であれば、本を通して「著者との一期一会」を楽しむ気分ですね。

 1冊の本を読んで、ピカッと光る一文を見い出す、それの積み重ねが「(その読書体験をした)自分だけの価値観」を生み出していくという主張には同感です。一文を編集し、つなぎ合わせれば、独自の創造力の形成になります。そう考えることができれば、読書の意義が明らかに変わり、習慣化するプラットホームに立てると思います。そのメソッドに関しては本書に譲りますが、より良き読書ライフを人生の中に組み込むことができれば、きっと幸福が訪れると確信します。


『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(印南敦史著、大和書房、本体価格1,400円)

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脳を強化する読書術

2017-04-15 15:22:35 | 

  難読症だった加藤俊徳先生。音読することが苦手だけでなく、文章を読むと脳の中で音が流れる「内言語」も脳内で響かず、読むと言葉に詰まる状態だったとは信じられません。医者になるには多くの学術書を読まないといけないのに、どのように解決したのか?脳科学者として、脳科学の見地から読書術を編み出しました。それは脳がフルに起動する読み方であり、これを知れば、気軽に読めますね。

  加藤先生は、脳は場所により、異なる8つの機能を持っていると言われています。それは、

①聴覚系 ②記憶系 ③視覚系 ④感情系 ⑤理解系 ⑥思考系 ⑦伝達系 ⑧運動系

です。読書を通じて、強化したい、またあまり使用していない機能を考慮に入れる脳トレは非常に効率的です。多くの人に興味がある②記憶系を見てみると、通勤途上で乗り換えが生じるたびに読むのがストップする「乗り換え読み」は長期記憶が鍛えられ、認知症予防には小説、とりわけ恋愛小説がお薦めであり、脳を刺激して記憶に残りやすいのは電子よりも紙の本を選ぶことを推奨しています。

   読書はした方が良いと思っていても、なかなか読み進まないという方は脳から見た読書法も一つの解決策。難読症を治した実績がモノを言います。

『1万人の脳を分析した医学博士が教える 脳を強化する読書術』(加藤俊徳著、朝日新聞出版、本体価格1,300円 )

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知的社会人1年目の本の読み方

2017-04-12 15:00:17 | 

   読書に関する本は続々と出版されています。本離れ、読書離れの裏返しでしょうか。メディアが爆発的に増え、情報を得る入口が多くなり、読書はその一つになり、その目的さえ教わる時代になりました。本書は社会人向けに書かれていますが、本書の内容そのものは社会人だけに限定されていません。言葉を操り考える人間共通のテキストです。

  評価される社会人は次のように規定されています。

「知性」と「教養」と「創造力」を兼ね備える社会人であり、「本の情報を知識に変え、深堀し、自由自在に使いこなせるようになること」ができる人です。つまり、「得た知識と知識を組み合わせて、他とは違う何かを生み出す」創造力を発揮できる人であり、その糧には読書があります。

  現代社会では、「便利・安い・速い」ものさしの提示により、それを安易に選択し、考えない、流されるばかりの人が多く見受けられます。その方が楽ですから、批判精神もなかなか浮かばない。しかしながら、多くの考えを知り、たくさんの視点を学ぶことで、よりよく生きることがわかります。そのためにも情報を必要としますが、映像やアニメのような視覚からではなく、できるだけ活字を読み、脳内で限界のない想像力を作り出すと、想像の膨らみ具合も変わってきます。人と会って話し合えば様々な視点も与えられますが、自分の都合だけを考えれば、読書をすることで、話を聴きたい人といつでも会え、話しを十分にできる媒体です。だからこそ、「書物は『人を変えるカギ』『人生を変える』カギ」になりうるのです。 

   森信三先生の言葉、「人生二度なし」からすれば、良き人生には読書は欠かせない至福の時間になるはずです。

  『知的社会人1年目の本の読み方』(山口 謠司著、フォレスト出版、本体価格1,400円)

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人を育て組織を鍛え成功を呼び込む勝利への哲学157

2017-04-03 13:16:48 | 

  箱根駅伝三連覇を成し遂げた、青山学院大学陸上競技部の原晋監督の語録集です。
監督就任から三連覇へ至る道程の中で、頭を打ちながら模索を重ねた上での組織論であり教育論でもあります。

  監督就任当初から選手に言い続けている3つの言葉、

「感動を人からもらうのではなく、感動を与えられる人間になろう」
「今日のことは今日やろう。明日はまた明日やるべきことがある」
「人間の能力に大きな差はない・あるとすればそれは熱意の差だ」

は選手の前に人間としての生きる指針です。

  そして、組織に関しては、

「レベル1」監督命令型
「レベル2」監督が選手の代表者に指示を出す段階
「レベル3」監督は大筋の方針だけを示し、チームリーダーと部員が一緒に自ら考えていく段階
「レベル4」選手を観察してヒントだけを与えるサポート型

と進化し、青山学院大学陸上競技部はレベル4に達しており、まさにサーバントリーバ―シップを遂行し、選手たちの自主的な判断で組織運営がなされています。陸上部の実力はホンマものです。

  結果的に、「社会に通用する人材育成」を陸上を通して行うことに徹しており、選手に対しては、チームのビジョンを達成するための「半歩先の目標」を設定させ、その進捗を自己管理するノートを書かせています。ビジョンへの自己の対応こそがチームの総合力になります。このような組織や人材育成に関しては、高校、大学、実業団での陸上競技人生と、陸上引退後の中国電力でのサラリーマン生活での経験に立脚しています。

  先日紹介した『まんがでみる ボトムアップ理論』(畑喜美雄著、ザ・メディアジョン、本体価格1,200円)
http://blog.goo.ne.jp/idomori28/e/ddbffc3f9964ea07feb08ff608fb1ac2

とほぼ同じであり、組織の形成、運営、進化、そして、人材育成の基本図書に最適です。

『人を育て組織を鍛え成功を呼び込む勝利への哲学157』(原晋著、ぴあ、本体価格1,111円) 

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アマゾンと物流大戦争 

2017-04-02 15:13:50 | 

  インターネット通販の伸びが宅配業界に影響を与えているのはご存知でしょうが、店の存在価値さえも変わっているとは知りませんでした。ヨドバシカメラ、セブン&アイ、カメラのキタムラ、音楽好きが集まるアメリカの楽器専門店・ギターセンター、アメリカのメガネショップ・ワービーパーカーなどネットと店舗が融合する小売であり、店舗ではサンプルを陳列し、販売せず、ネットで発注してもらう形にまで発展しています。

  我々のようなリアルの書店もITを活用し、いかに店に来ていただけるか、そして、取次会社の運営しているe-honを有効に使えるようにしなければなりません。しかし、結局は「人」が大切であり、ヨドバシカメラのように、店頭における販売員の高い商品知識と接客力がネット通販会社を決める手であるように、「その人から買いたい」と思っていただける人材の育成が大切です。

  但し、ネット通販はそのネットを利用する人の地域のことは全く考慮に入れていない(考慮に入れることが企業理念にそぐわないのか)ことは無視してはいけません。近江商人の三方よしでなければ継続しないと思います。

『アマゾンと物流大戦争』(角井亮一著、NHK出版新書、本体価格740円)

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