あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

世界の終わり 賢者たちの遺言

2022-06-26 12:19:19 | 

 地球規模の天変地異の発生が予見される中、世界からチベット仏教の聖地トゥランカへ集められた、各分野の著名な賢者八人が喧々諤々論議し合い、「この世での生をもっとも深い意味で善きものにするためにはどうすればいいか」を、一日ひとつの教え、七日間七つの智恵を少年、少女の二人に伝えます。それは、

人生の意味、肉体と心と魂、真の自由、愛、魂のための善き習慣、いまここを生きる、そして、あるがままを受け入れる

ということです。人災かもしれないコロナウィルスの世界的な蔓延、また、ロシアによるウクライナ侵攻からの核兵器の危機、地球温暖化による環境悪化など、世紀末の様相を呈している現在、本当にかみしめて読むべき一冊です。

 私にとっては、「あるがままを受け入れる」がずしりと圧し掛かりました。本が読まれない、売れないという現状はなかなか変えがたいことですが、本来の使命として、読書の意味、そして、本の価値を人間委は「魂の栄養」の根源として受け取ってもらえるようにしていくことが大きな道筋だと信じています。(フレデリック・ルノワール著、飛鳥新社、本体価格1,400円、税込価格1,540円)

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都会を出て田舎で0円生活はじめました

2022-06-16 15:30:54 | 

 TV番組の『ノブナカなんなん?』で観て、凄い人がいるなぁと思っていたら、本を出すらしい。そこで、ゲラを読ましてもらいました。

 青森にお住いの田村さん一家(奥さまと息子さん)は地球想いの生活をされています。ゴミを最小限にするべく、トイレットペーパーは庭のキウイの葉っぱを使用し、コンポストに入れたり、廃材を貰い受け、建築基準法に則った平屋を自力で建築し、家で使う火力にも利用。電気は太陽光発電をし、パソコンやスマホに使用するだけで、テレビ、冷蔵庫などは家にはありません。水も自地から引き、生活用水に使用しているが、地域の田畑から紛れ込んでいる農薬がしみ込んでいるため、山へ飲料水用の水を汲みに行っています。

 現代人は楽をし、便利に慣らされて、コストを払っていますが、田村家は地球の一部、自然のパーツのため、自然の恩恵を十二分に活用した0円生活です。十分に時間があるので、手間をかけ、全てのモノに愛着を施し、大切に使用する姿は、人間界に対する自然界の通訳かもしれません。読んだら、自然に学ぶ謙虚さを持つ必要を感じます。

『都会を出て田舎で0円生活はじめました』(田村余一・田村ゆに著、サンクチュアリ出版、定価1,430円、8月初めに出版されます)

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今日のハチミツ、あしたの私

2022-06-14 13:51:58 | 

 みんなからいじめられ、摂食障害で、「もし明日人生が終わるとしたら、きっとわたしは、喜ぶ。」と考えていた中学生の碧(みどり)は、養蜂業の女性からハチミツをひと舐めさせてもらい、手にはハチミツの瓶がありました。

 このハチミツが忘れられずに、飲食業に就職し、体裁の上がらない安西と同棲していたが、安西が急に実家へ戻ることになり、碧も仕事を辞め、朝埜市へ移住をします。ハチミツの瓶に書かれていたのも「あさのはちみつ」。あの女性に会えるのか?へんくつな安西の父に息子の結婚相手として試されることになった碧は、滞納されていたクロエ蜂蜜園の地代回収に行き、黒江の弟子となって養蜂を学ぶことになります。ハチミツが取り持つ縁で、碧も土地のパーツの一人になっていきます。自分のつらい思いを甘いはちみつで溶かし、周囲の人々へも碧が創作したハチミツを使用した料理の味で幸せな心持にしていきます。「もし明日人生が終わるとしたら」の答えは、「生きなきゃならない。そして、生きている限り、環境は変化していく」のだから順応することが大切です。

 後半になると、碧が考案のハチミツ利用の料理が目白押しで、食欲をそそられながら読了しました。

『今日のハチミツ、あしたの私』(寺地はるな著、ハルキ文庫、本体価格620円、税込価格682円)

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いも殿さま

2022-06-09 15:17:22 | 

 領民から「いも殿さま」「いも代官」と呼ばれていたお侍さまが石見にいました。

 江戸幕府勘定奉行で60歳まで勤め、全く出世にも興味もなく、そろばんを弾いているのが我が喜びとしていたのが井戸平左衛門。大岡忠相に引退を告げに行くつもりが、幕府天領の石見銀山の代官に命じられます。世に言う左遷。赴任先は銀も産出量が減り、その上に享保の大飢饉が迫りくる。ウンカ、イナゴによる食害で米も取れず、一揆の勃発や餓死者が出現が予想されました。井戸平左衛門はサツマイモに目を付け、家来を薩摩へ派遣、国外への持ち出しには厳重な薩摩から種芋を植えつけることに成功します。

 「民を安んじるのが政」の通り、領民に対する善政は徹底しており、代官所の米蔵の米を領民に放出し、また、平左衛門自身の倹約は自分の刀さえ竹に変わるほどでした。1年半の任期中に上記のことを成し遂げ、「いも」の付くニックネームをいただくほど、領民から愛されていました。「逃げることも、やけになることもない」粘り強さ、そして、民に対しての分け隔てない視点は徳のある人であることを証明しています。

 島根県大田市には井戸神社、中国地方には平左衛門の功績をたたえる頌徳碑が5百基以上あり、現在でも「いも代官」を教育の場で子どもたちは学んでいます。井戸書店としても、名前が同じだけに嬉しい限りです。

『いも殿さま』(土橋章宏著、角川文庫、本体価格640円、税込価格704円)

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萌 蛇杖院かけだし診療録2

2022-06-07 14:53:24 | 

 流行り病のために、一般からは奇異な目で見られている診療施設である蛇杖院に担ぎ込まれた、旗本の次男坊の瑞之助が献身的な治療、看護を経験し、蛇杖院で医者になろうと目指すことでスタートした『伏竜 蛇杖院かけだし診療録』。今回は2作目になり、瑞之助は小児科医を志望し学んでいます。

 蛇杖院に賀川流産科医として転がり込んできた船津初菜は、江戸時代の男性社会の医者の世界からは疎んぜられ、誰も医療行為をさせてくれない。来る者は拒まずの蛇杖院でやっと産科医として活躍するも、妊婦家庭からも女医への蔑視、また、妊婦には苦痛でしかない出産に対しての因習を初菜が除外しようとすることへの反発やはすさまじい。しかし、母子ともに健やかにしたいという彼女の志の高さと共に、蛇杖院の仲間が彼女をサポートします。

 命への賛歌はいつの世も同じ。それを支える医師も人の子。誰もが幸せを享受できますように。

『萌 蛇杖院かけだし診療録2』(馳月基矢著、祥伝社文庫、本体価格800円、税込価格880円)

 

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同潤会代官山アパートメント

2022-06-07 14:01:45 | 

 まさにファミリーヒストリー小説です。

 婚約者がいた妹の愛子が関東大震災で死亡。姉である八重はその彼、竹井と結婚します。地震が起きても大丈夫な建物に住む~当時では珍しかった鉄筋コンクリートのアパート、同潤会代官山アパートメントで新婚生活をスタートします。そこから約10年ごとを定点観測するように物語は展開します。彼らの子孫、ひ孫まで含めて、八重タイプか愛子タイプに分類されますが、家族の歴史は同潤会代官山アパートメントのそれとシンクロするように進みます。

 1997年、孫の浩太夫婦は神戸市で阪神淡路大震災に遭遇します。地震では家族には不幸は訪れなかったけれども、病いに臥せっていた八重は帰らぬ人になります。地震に始まり、地震で終える。時代が変わる象徴が、同潤会代官山アパートメントの建て替えです。

 家族に優しさを持って接することで、一歩一歩の歴史が刻まれていく~本当にジーンと長く尾を引くような感動を覚える1冊でした。

『同潤会代官山アパートメント』(三上延著、新潮文庫、本体価格590円、税込価格649円)

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妻はサバイバー

2022-06-06 16:46:20 | 

 摂食障害、アルコール依存症など、障害内容や症状などは知っているとはいえ、本当に薄っぺらな知識でしかないことを本書を読んで知りました。それらの症状の深刻さ、他の諸症状を引き起こす引鉄になっていること、そして、保護者である家族の思いは並大抵のことではありません。

 子ども時代の父親からの暴力、母からは「あなたがいるから離婚できない」という言葉、そして、長じてのセクハラ、これらが導いていったものが著者の妻の姿でした。食べて吐く行為や飲酒癖が「生きるつらさをやりすごす」ためであり、必死で生きるための術でしかなかったとは驚き以外のなにものでもありませんでした。

 精神病への偏見はすぐに是正すべきであるが、やはり、命の尊さを真っ先に考えるべきでしょう。この世に生を受ける確率たるやとてつもなく微小であることを忘れてはいけません。

『妻はサバイバー』(永田豊隆著、朝日新聞出版、本体価格1,400円、税込1,540円)

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