中国は経済発展し国力を伸ばし、さらには覇権を海外へ推し進め、チベットや新疆ウイグル自治区では漢族優先の政策を施しています。なぜそうするのか?国家的戦略は何か?わからないままでは気味が悪いので、まずは中国史を紐解きました。本書『皇帝たちの中国史』は、著者の宮脇淳子先生の師匠であり、夫である岡田英弘著『皇帝たちの中国』で書き足りなかったであろうことも含めての1冊です。
中国史の個別の事象はさておき、歴史から見て今も引き続いて中国人で行われている事実は何かを読みました。それは、
①中国の王朝はほとんどが異民族主導である
②漢字が読み書きできる人が指導者である
③人民は国を全く信じていない
ということ。
①漢族の王朝は秦、明、そして、いまの中華人民共和国だけです。野蛮な異民族と蔑視するものの、異民族の方が漢族よりも強かったという事実です。②華僑というぐらい、中国では商売人がメインであったが、共通の言語として漢字が重要視され、商人が都会に住み、そのまま指導者になったようです。③中国人は家族や血族、同郷人、宗教秘密結社を重んじ、国は信じていません。国の指導者=様々な異民族だからでしょう。国を信じないから、賄賂が横行する社会だったのでしょう。
そして、本書を読み、清の皇帝たちの政治がとても民主的で開放的なことを知りました。版図が増えても、チベットやモンゴル、新疆でも、清の共通語の満州語の使用を押し付けず、その民族の言語を大事にし、地方分権もしっかりと守っていました。別の民族の事情を理解してまで政治をするのではなく、その民族に任せるスタイルを取っていたのには驚きました。それの証拠に、清の当初の人口6,000万人に対して、アヘン戦争直前には4億人になっていたことは平和で豊かだったからでしょう。現在の政権のやりようとは真逆なのは漢族だからでしょうか。
『皇帝たちの中国史』(宮脇淳子著、徳間書店、本体価格1,400円、税込価格1,540円)