仕事上、ムダを省くのは当たり前です。コストを考えると自明の理ですが、この考え方が自らにもインストールされていることを本書を読んで改めて考えさせられました。
帰宅するのに時間的ロスを考えれば、真っすぐ戻ります。しかし、時間的に余裕があれば、寄り道、みちくさをして、新しい発見をして、その気づきが生活を彩ってくれます。この遊びの感覚を捨て去り、少しでも商いに結びつくこと、消費者になるように世の中は仕向けてきます。スマホの誕生から、手のひらにあるパソコンは人間をゆっくりさせません。他人とのコミュニケーションや買い物、投資にまで引きずり込みます。サイトで物品を購入したら、推奨商品をくまなく提案してきます。リアルの店頭での店員とのコミュニケーションややり取りなど、情をはさむことさえムダになってきています。
読了後、ミヒャエル・エンデの『モモ』を思い出しました。時間貯蓄銀行の灰色の男たちの考え方に世の中はもう既に染まっており、新自由主義人からムダを楽しめ、愛せる人に変身していかねばなりません。
『ナマケモノ教授のムダのてつがく 「役に立つ」を超える生き方とは』(辻 信一著、さくら舎、本体価格1,600円、税込価格1,760円)