あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

福島屋 毎日通いたくなるスーパーの秘密

2014-05-26 16:55:12 | 

 さんちゃんの家族経営の小売業が急激に減少しています。板宿でも物販店がシャッターを下すのを目にします。それに対して、コンビニ、ナショナルスーパー、ネット通販は増え続けている現下、小売業は如何にして対処していけばよいかを学ぶ良書がありました。

 『福島屋 毎日通いたくなるスーパーの秘密』(福島徹著、日本実業出版社、本体価格1,500円)です。

 福島徹社長はNHKのプロフェッショナルの流儀で拝見しました。福島県のお米の放射線量の測定を店舗で独自に行って、安全を確認し、お客さまへ周知して販売するという番組でした。TVでも訴えられていましたが、

 「なぜ、何のために自分はスーパーをこの地域で営んでいるのか」

 「自分は何をどうして売りたいのか」

を常に問いかけられています。理念がぶれてはいけません。福島屋では

 「お客様にとっての美味しさ、安心を追求し、吟味したものを提供したい」

 「美味しさづくりは幸せづくり」

というように、「安心、安全な正しいものを吟味した上で販売する」正義が前面に出ています。そして、ナショナルブランドや売れ筋商品にとらわれると、価格競争に巻き込まれるため、理念に立脚したオリジナリティの高い商品を吟味することを通して、お客様に明確に伝えることが福島屋の戦略です。

 今回学んだのは、この「吟味する」ということです。「吟味すること」自体が自立型企業へつながることに対し、ナショナルブランドを選択することは安心感を得ることできますが、店にとっては依存型になり、お客様には「押し付け型の売り方」になると考えられています。食品では「吟味」は自ら食すことになりますが、書店の場合は「自ら読む」、つまり読書量が自立への道につながりますね。

 このような考えに基づいた経営者の態度、売り場づくりや棚の思想には共感するものがありました。情報を編集しての棚や売り場はワクワクしたものなのでしょうね。今度、上京した折にはお邪魔したいですね。

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翔ぶ少女

2014-05-22 17:33:03 | 

  1995年1月17日の時間は不確かですが、ラジオ関西を聴いていて、信じられない情報に耳を疑いました。

 「私の家が倒壊して、私は脱出できたけど、母が動けない状態です。助け出したいのですが、火が迫っていて、どうすることもできないんです。母には『もうええから、私の分まで生きなさい』と言われました。」

 当時は想像するだけで涙が出てきたことを覚えています。

 この小説の主人公も、1995年1月17日に同じ境遇に身を置かれます。長田区の「パンの阿藤」の1階では、父母がパン製造で働いていました。2階では長男、長女、次女の3人が寝ていました。地震発生で、2階が1階へ崩れ落ち、両親は死亡。長女の「ニケ」の右足はがれきにはさまり動けません。彼女を助けてくれたのは、近隣の心療内科「さもとら医院」のおっちゃん、「ゼロ先生」。3兄弟は小学校へ避難し、ゼロ先生は避難所を転々として、負傷者の治療に飛び回ります。

 親を亡くし、震災孤児となった子どもたちをゼロ先生は自分の養子として、仮設住宅での生活が始まります。震災から10年間、子どもたちは心に影を持ったまま成長していきます。ゼロ先生は仕事の他にも、仮設住宅、そして復興住宅に住む被災者のメンタル面でのボランティアに忙しく動き、持病の心臓に負担をかけ、倒れます。

 ゼロ先生の心臓手術を安心して任せる医者は、親子の縁を切っていたゼロ先生の息子しかいない。さて、このあとは本書に譲りますが、生きることにしか希望はありません。どんな状況に陥ろうとも、前を向いて生きるだけだというメッセージを伝えてくれます。

 「もう大丈夫。心配はいらない。きっと、何もかもうまくいく」

 来年1月17日は震災から20年を迎えます。今日まで生きてこられたことに感謝します。

 『翔ぶ少女』(原田マハ著、ポプラ社、本体価格1,500円) 

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巡るサービス なぜ地方の小さなビジネスホテルが高稼働繁盛ホテルになったのか

2014-05-19 14:28:00 | 

 この本を読むまではビジネスホテルは全国規模のチェーン店の市場だと思っていました。しかし、独立系のビジネスホテルが増収増益を納めていることを知り、独立系書店の主としては気になりました。

 この本の主人公は「ホテルグリーンコア」。埼玉県と茨城県に4店舗を構えています。ビジネスホテルは低価格化と大手指向(大手だと安心)のため、小規模ホテルは「差別化」(セグメントの絞り込み)か、「顧客とのつながりを重視する」戦略の2方向にベクトルを向けなければなりません。しかし、前者は東京などの大市場では可能性がありますが、他の立地であれば後者に着手するしかありません。

 「ホテルグリーンコア」は「ストーリーとしての競争戦略」と「えこひいいき接客(スタッフが常連さんのファンになり、いま・このとき・この場所でできることを精一杯やってさしあげる)」に注力しています。つまり、スタッフが「常連さんのファン」になり、お客さまに「人間的にかかわる」ことで、お客さまはスタッフ力に魅せられて予約を入れる。やはり非効率・非合理かもしれませんが、最後は「人」です。

 我々、独立書店も見習うべき点が多く、スタッフ力の強化には励まないといけません。スタッフ力の向上には経営者の「仁」、思いやりの心が試されます。

『巡るサービス なぜ地方の小さなビジネスホテルが高稼働繁盛ホテルになったのか』(近藤寛和著、オータパブリケイションズ、本体価格1500円) 

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デジタルデトックスのすすめ 「つながり疲れ」を感じたら読む本

2014-05-12 16:29:45 | 

  ブログに始まり、ツイッター、Facebook、LINEとSNS花盛りで、スマホのお蔭もあって、何かと液晶画面を見つめる時間が増えました。電車に乗っても、本を読む人は激減しました。前の座席一列の人がみんなスマホを見つめる奇妙な光景に驚かされる昨今、デジタルのデメリットも露見し始めました。

 デジタルに追いかけられるストレスを感じ、SNSでつながることは良いものながら、瞬時の返事の強制に疲れ、挙句の果てにネット依存に陥る人も少なからずおられると思います。特に、SNSでは、「つながり依存」「きずな依存」が横行し、「他者からの承認を頻繁に求める」というのが大きな特徴なため、本来なら、情報収集や情報発信の道具が、同調圧力が生じて、時間を浪費してしまう羽目になっています。また、インターネットの利点であるはずの「いつでもどこでもアクセスできる」ため、情報の洪水に巻き込まれ、ネット自体が「情報害」になっています。

 そこで、 「デジタルデトックス」の登場です。『ネットに「使われる」生活から抜け出し、自分らしい生き方を取り戻す!』のが急務になっています。グーグルやアップルでも、就業時間中にデトックスできる時間を設けており、社員は瞑想や雑談などを行っています。

 デトックスには、スマホやパソコンを置いて、リアルな行動である、禅、滝行、瞑想、登山、読書などを行います。各々の病気には1冊の健康書が必要なように、デジタルにも、スマホだけでなく、デトックス書の「携帯」が不可欠になりそうです。

『デジタルデトックスのすすめ 「つながり疲れ」を感じたら読む本』(米田智彦著、PHPエディターズ・グループ 、本体価格1300円)

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目に見えないけれど、人生でいちばん大切なこと

2014-05-07 13:34:15 | Weblog

  イエローハット創業者で日本を美しくする相談役の鍵山秀三郎氏と、「奇跡のリンゴ」の木村秋則氏の対談集です。

  無農薬の自然農法のリンゴを栽培する木村さんにとって一番大切なものは「土」。表面は見えても、中は全く見えず、そのしくみは見えません。「リンゴお手伝い業」を自称する木村さんは、リンゴが喜ぶように手助けすることで、リンゴを取り巻く環境にとっても喜ばれるようになりました。「作物を育てるためには、私たち人間が、自然の摂理に合ったお手伝いをして上げることが大事」という所以です。

  経営していく中で、鍵山さんにとって一番大切なのは「社員の心」であり、「社風」です。これも誰からも見えないものですが、掃除を実践することを通して、社員の心が浄化され、結果的に業績も良くなる。「小さなことでも徹底してやれば、大きな力になる。」、これこそ凡事徹底です。

 木村さんも鍵山さんも、事業を運営していく中で、「謙虚」になり、そして、「感謝」を抱き、心が磨かれていきました。木村さんのおっしゃる、「感謝の心は、必ず品質や収穫高にあらわれる。」が真理ですね。敢えて、「目に見えない事をよくする」ことを主眼に置いて注力することで幸せが訪れるはずです。

 『目に見えないけれど、人生でいちばん大切なこと』(鍵山秀三郎・木村秋則共著、PHP研究所、本体価格1300円)

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超一流中高 校長先生の教え

2014-05-01 17:05:05 | 

 週刊朝日やサンデー毎日の大学入試合格高校記事でしか進学校の名を知ることはありませんでしたが、本書を拝見して、東京大学合格有名校の校風や教育方針を教えてもらいました。掲載中高は、開成、麻布、巣鴨、武蔵、女子学院、豊島岡女子、灘、東大寺、栄光、渋幕・渋渋の10校です。

 共通するのが自由闊達な校風、そして自主性と自律を重んじていること。知識偏重の詰め込みの教育とてっきり思い込んでいましたが、中学入試で十分詰め込まれている子どもが合格しているため、基礎はしっかりしている前提で、

 「自調自考」  自ら調べ、自ら考える

スタイルで臨んでいます。つまり、指示待ちではないということです。これは一般企業で、「指示待ちではなく、自立型社員」を求めるのと同じですね。それが10代の人格形成期で行われています。特に、麻布の水上校長の

 「自由と自律はコインの表裏の関係」

というのは箴言です。

 そして、個性を重視しています。灘中高出身の灘中高・和田校長の同級生には、中島らもがいて、「神童よりも、どこか1点抜きんでいる人」を尊重する空気が流れているらしい。これは自由な校風がベースにあって、みんな優秀なので、スキマで才能を発揮するのかと思います。「独創」したい人が多いのも事実なのでしょう。

 私が一番注目したのは巣鴨です。

 「努力を知っている者は強い」

 「学生時代の感動体験が生徒を育てる」

 「学ばせるべきは感動」

と私自身の信念に近いですね。

 いずれにしても、どの学校も東大合格者数を増やすためでなく、大学卒業後に社会に役立つ人材を養成しています。学校理念がしっかりとして、教員にも浸透しているのがわかります。また、中小企業の経営者としてもとても興味ある本でした。

(東洋経済オンライン編集部編、東洋経済新報社、本体価格1200円)

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